東京ラジオマンガ
nonbirikumori
第1話 居心地の良い世界
問題
「やばいよね?うちの近所で電信柱に上って、酒を飲んでるおっさんがいるんだけど、超やばいよね」と独り言を呟いている背の高い女性従業員 と「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ」と言っている背の低い女性従業員。
この2人がレジに居た場合、どちらがおかしいな店員?と問われたらどちらを選ぶだろう?
常識から考えたら電信柱で~と独り言を言っている店員がおかしいとなる訳だが、ここで、一つ新たな条件を加えてみよう。
「すみません、取り置きをお願いしていた本を取りに来たのですが?」と僕が15分くらい前から言っているのにも関わらず、2人の店員が無視をしていたらどうだろうか?
そうなると従業員2人ともおかしいとなるだろう。しかしもう一つ条件を加えてみよう。
僕がリアル女性(身内を除く)と会って話をするのが、数年ぶり過ぎて緊張のあまり「すすすす、せん・・・。ととと、えーと、そのー、うーんと、あの~、・・・った」と正直何を言っているのか?わからなかったらどうだろう?
そもそも従業員がロボットじゃない段階で嫌な予感がしていたし、ユキオの頼みを断れば良かった。リアルショップに来るのも久しぶりなのに、まさか人(可愛い女性)がレジの店員をしてたなんて思いもいていなかった。
でも大丈夫。今は問題が起こっているかもしれない。けどこの気持ちの良い、居心地の良い世界に置いて、これはたまたまこうなっているだけであって、もう少し待てば必ず僕を助けてくれる。
安心させてくれる。様に出来ているはずだ。それがこの世界なのだ。
朝起きるとユキオに、こう言って起こされた。
「指に包帯を巻いている人にお遣いを頼んでも大丈夫でしょうか?」
朝っぱらから何を言ってんの?この人は?とチラッと見ると、二コリと笑うユキオ。
ユキオは僕のオヤジで、こう言った事をたまに言ってくるので、本当にうざい。
完全無視しようと思った僕だが、 一応「や」と一言。するとユキオ「ダ」と言って来たので、もう一回「や」と言うともう一度「ダ」と言うから諦めて、
「お遣い?ドローン配達してもらえばOKでしょ」「やってないんだよね」「めんどくさい」「イングレス的にも良い場所なんだけどなあ」
ずーと家の中でゴロゴロアニメや映画を見て過ごしていた僕に最近アリタさんがイングレスを紹介してくれた。最初は、無関心だったけど、アリタさんと一緒にイングレスをしたらこれが、ど嵌り。
僕の生活の一部になってしまった。ユキオはそれを知っていてそんな事を言ったのだ。
右手の小指に包帯を巻いてる僕は、寝たまま左手で携帯を探し、ユキオにそこの地域の場所を聞いて、インテルマップでチェック。
うーん確かに行ったことない場所だけど、あの辺って魔物とか出る噂あるね?大丈夫大丈夫と胸を張っていうユキオに対して、うーんと僕。
「父親らしい事したい計画その32。息子のイングレスを手伝う」とかなんとか言いだして、その父親らしい事、計画って言う意味がわからないんだよね。
「一家の主として~」と言う父親に「一家の主は僕たちのために働いてくれているロボットのアリタさんでしょ」といつものやり取り。
どのみち起きてイングレスやろうと思ったし、ユキオが喜ぶならOKかな?ときちんとした場所を聞くと「お遣いって紙の本屋の事だったの?」
「だから丁寧語で、お願いしたじゃん。」「電子書籍無いの?」「俺がほしい本は電子じゃ売ってないの。知ってるでしょ」
「うーん」要するに、右手の小指に包帯している僕に魔物が出るかもしてない場所に、重くて大変な本を買って来い=父親らしい計画 でOK
「父親らしい計画その33。論破されるのが嫌い」
ちょうど50歳にもなるユキオは、もう本当に子どもと変わらない。そしてこの父親らしい計画は心底止めてほしい。
本当は一人暮らしをしたいのだが、僕の祖父が必ず孫と一緒に暮らす様に。これがわしの遺言じゃ。お前の使命だ。と言われたらしい。
なぜそんな事を言ったのか?わからないユキオは、考え抜いた結果父親らしい事をすると決意。もう止めてほしいし、一人で暮らしたいけど、ユキオとアリタさんの3人の暮らしも悪くはないと言うのが現状だ。
紙の本屋の名前は、朝書店との事なのでグーグル検索で、魔物出やすい地域 朝書店 と検索して見るとスライムとかの目撃多数くらいで、大丈夫との事。
最近ツイッターのタイムラインを見たときに、あの辺りにデカい魔物見たって言うツイートを見たからびびって居たけど、まあ大丈夫かあ。
もし何かあった場合にも何とかしてくれるだろうこの世界が・・・。ちなみに、大昔、人間と魔物が仲が悪かった時があったらしいのだが、(その時、うちの祖先がちょっとだけ活躍したらしい=オヤジの話=あやしい)の頃とは違い今は平和そのもの。
さあ出かけようと思った時に「その前にゴミ捨てて置いて」「??自動で回収に来るでしょ」「今日はメンテナンスの日だから来ないって 」「ゴミ袋の中に、オヤジの薬草とか色々入っているけど、捨てても大丈夫?」と言うと「ア、アリタの奴〜」とロボットの名前を叫ぶと「イタズラは止めてっていったのに、酷すぎる」(泣)になってしまったので、よく見ると色んなものが混ざっている。
燃えるゴミの日なのに、缶やらガラスやらオヤジの薬草やら金属やら・・・何でこんな滅茶苦茶な事に。
しょうがない僕がさっくと仕分けしようか?
それにしてもユキオは良く泣くなあ。30年後には僕もそうなっているのだろうか?
僕が素早く、ゴミを仕分けすると、仕分けするの上手いなあお前としょんぼり泣きながら、感心するユキオに「右手包帯してなかったら、この数倍早いよ」と自慢。
ゴミの中に見慣れない指輪が入っていた。
「この変な紋章が入った指輪って何?」と見せると「これが大昔我が一族が魔物と戦って勝利した証なのだ」と言うので、わかった、わかったと言ってゴミ袋に入れようとすると「おい!!」とツッコミ。
そんな事がありつつ出発。まず携帯で、野良自動運転車を呼び出してと。携帯での呼び出し方法は、えーとこれで良いか?
1分後に野良自動運転到着。ゴミ置き場に行ってゴミを捨て、それから車の中で、ニコ動を見ながら120分くらい経過した所で、車を降り、ここから歩いて1時間くらいの場所かあ。うん、ここからにしよう。
辺りを見渡すと野良自動運転車率高いじゃんこの地域。何かあっても余裕で逃げ切れる。
さすが、この世界は素晴らしい。そしてイングレス楽しいなあ。とハックした事ないポータル探しながらの散歩は最高にウキウキする。
途中でスライムに遭遇。かわいい猫の上にスライムが乗っていて、携帯で写真を撮ってツイッターで投稿。
こう言う事ねと納得。普通に生活しているとまず魔物に遭遇するのは、珍しい。田舎の方に行けば沢山いるのか?まあググればわかると思うのだけれど、めんどくさいし、興味もない。
ちょっとビビり過ぎてたかなあとか思いつつ、紙の本屋に到着。簡単に終わらせてイングレスの続きをやるぞーーーー!!!
天井が10メートルくらいあるこの本屋は、1階建で1000人くらい入れるだろうか?と言う超広い場所なのだが、現在いるのは、店員2名と僕合わせて計3名しか居ない。そして現在、全く会話が噛み合わないまま15分経過中。
やはりリアル女性は、VRの中に出て来る女性と全然違うよ。どうしようと汗ダラダラ。この頃になると緊張のあまり冷静な判断が出来なくなっていた。
どうしよう。このまま帰ろうか?と思った時ひとつのアイデアが浮かんだ。会話が通じないのは、2人が僕に注目していないからだ。
注目される→話を聞いてくれる→紙の本をゲット→帰るこれだ‼︎
じゃあどうすれば、注目される?会話がダメなら叫ぶくらいなら出来るんじゃないだろうか?じゃあ何を叫ぶ?と思いついたのが、50音のうち一文字くらいなら出来ると言う発想が浮かんだ。
良し一文字叫ぼう。そして、
「ほーーーーーーーーーー」と叫ぶ
なぞ「ほ」なのか?それは、50音のうち君たち本屋さんが1番好きな50音は、ズバリ「ほ」だ。本屋の「ほ」だ。「ほ」しかない!!
「ほー、ほー、ほー、ほー、」気づいてくれ。「ほー、ほー、ほー、ほー、」
「あっでも世界のシステム的に、本当にやばかったら、ロボットに止められるか?ひょっとしたら酒じゃなくて水かも、って鳥のモノマネ?」
???
背の高い女性従業員に、急に話かけられてびっくりした。
鳥のモノマネ?フ、フクロウと間違えられったぽい?あっでも注目されてる?けどモノマネじゃないから、違うと言おうとしたら「チッチッチッチッ」違う言えない。
すると背の低い女性従業員が、「アナログ時計のモノマネ?」と言うから違うと言おうとしたら「チッチッチッチッ」
「やっぱり、そうだ」と納得の表情。
「やっぱりそうだ、じゃあないよ。さっきから、この人ずーっと何か独り言喋っていたから、ちょっと見て見ぬふりしてだけど、本屋に来てモノマネしてたんだよ。モノマネやばいよ。本屋でモノマネ。これは・・・・・・ガチでやばいよ」
と背の高い女性従業員が言うと背の低い女性従業員が「店長呼んでくる」と言って去ろうするので、私も行くよ。本屋でモノマネやばいよ。・・・。
リアル女性が、眩しすぎるから喋れないだけなのに。全然やばくないのに・・・。
でも店長呼んでくる→僕の話を聞いてくれる→誤解が解ける→紙の本をゲット→無事帰れる。
とこんな展開が想像出来るのではないか??・・・・。いける!!多分こうなる。
さすが、この世界は素晴らしい。
何とかなるんだ。
やはりこの世界は、居心地が良い。
だからたまたまこうなっただけ。僕は、安心して気持ち良く帰れる。
するとレジの方から、ドスン、ドスンと大きな足音が聞こえたと思うとその足音の主はこう言うのだった。
「誰だ!!俺の店で、ふざけてモノマネする奴は?」
何が起こった???
分からなかった僕は、大きな足音の向こう側を見上げるとそこには、身長5メートルくらいあるゴーレムが立っていたのだった。
次回に続く
東京ラジオマンガ nonbirikumori @nonbirikumori
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