第15話 雨日
今日は雨だ。
いつからか雨が降ると事故の事を思い出す。あの時死神なんかを助けなければ今頃どうなっていたのだろうか、そんなことばかり考える。
僕は後悔しているのだろうか。助けた人が死神で助ける必要がなかったことに悔やんでいるのだろうか。
そもそも死してなお女になって生き続けなければならないのか。色々と頭の中をよぎる
過ぎてしまったことはもう戻れない。今は前を見るしかない。
こんなことを考えていたら西谷が起きた。
「おっす~おはよ~朝飯は?」
「そこのパンでも食べてくれ」
買っておいた食パンを渡す。
西谷は僕の家に居候している。外で寝泊まりしていると聞いてさすがに可哀想だったので家に泊めている。
といってもうるさい同居人ができただけで何もプラスにはならない。
朝ご飯を食べると西谷は用事があると言い、どこかに出かけてしまった。
僕は予定なんてものはない。今日も部屋でゴロゴロするか。
とりあえず部屋の片づけなどをしてから再びベットに寝転がる。
そして眠りに落ちる。
僕は寝るのが大好きだ。疲れが取れるのが一番の理由ではないが夢を見るのがたまらなく好きである。
夢は起きたら忘れてしまうひと時の娯楽として思っている。
現実なんて起こったことなどをすぐには忘れられない。現実にいて忘れたくても忘れなかったりするのが辛いのかもしれない。
寝ていると耳に声が響く。
「___、___。」
なんと言っているのか聞き取れない。
「起きろ」
そう聞こえたが最後、顔面にパンチが飛んでくる。
「痛ってぇ!」
なにしやがんだこいつは。人が睡眠という最高のひと時を楽しんでいるのに邪魔をしやがって。
今のパンチで目が覚めた。おかげで聞き取れるようになった。
「もう昼だ。昼飯」
殴られてまで起こされた理由が飯とは呆れたものだ。
ベットから起き上がり冷蔵庫の中にある冷凍食品を開け電子レンジの中に入れ解凍をする。
「お前は料理とかできないのかよ」
西谷が不満そうに言う。
「そんな手際が良い様に見えるか?」
「見えない」
即答だ。少しは否定してくれよ。とは言っても本当に料理をできるようなスキルは持っていない。否定できないのが歯がゆいところだ。
解凍が終わり西谷に昼飯を出す。
「こんなものばっかり食べて飽きないのかよ」
「僕は食に興味ない。死なない程度に食べていればいいだろ」
「もったいない人生送ってるなぁ」
何を知った口を叩いているんだ。
「人はいつ死ぬか分からない。いつ死んでもいい様に過ごすことだな。まあ私は
自殺とかではない限り人の死は見えるけどね」
「僕はもう死んでる。今更後悔したって仕方ないし、何より再び生きて自分が死んだのだと自覚が持ててる所で前の自分に関する後悔はない。もう終わったことなのだから後悔してももう戻れやしない」
こんな死神の戯言に少し本音を混ぜて答える。
西谷はご飯を食べ終わると食器を台所の流しまで持っていきまたどこかへ出かけて行った。
よくこんな雨の日に外に出たいと思うな。
降り続くこの夏の雨は未だ降り止まない。
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