第5話 昼飯

朝のHRが終わり、一時間目の授業が始まる。

一時間目は数学、僕の苦手な分野だ。

僕が入院していた間も当然ながら授業は進んでいる。最後に学校に来たのは入学式、授業が進み過ぎて僕には内容が理解できなかった。

そんなこんなで一時間目が終わる。

二時間目以降も一時間目と同じように授業内容がさっぱりわからなかった。

必死に授業に追いつこうと頭を抱えていると、もう四時間目も終わり、昼になっていた。

昼休みになり、一部の生徒たちは昼飯を求め購買へ向かう。そういえば僕も昼飯を持ってきていない。仕方ないので、僕も他の生徒と同じように昼ご飯を買いに購買へ向かった。

昼間の購買は戦場だ。女だろうがお構いなしに横から拳が飛んでくる。ものすごい勢いで昼飯を取り合っている。

でも何とかパンを手に入れることはできた。パンを取り合っているときは女ということを忘れていた。もう行きたくないと思えるほどの戦争だった。

しかし、ここからが問題だ。教室に無事戻れたのはいい、でも昼ご飯を一緒に食べる相手がいない。困った。この波崎桜はざきさくらという子のことはよく知らない。誰と仲がいいのかも当然わからない。

くそう!お見舞いに来てくれた子がいてくれたらどれだけ幸せなことか。

「もしかしてこの子クラスで孤立してたのかな?」

また無意識に言っていた。周りの人は今の発言を聞いていないようだ。よかった。

「仕方ない、最後の手段を使うか。」

僕は席を立ち、トイレへ向かう。まさかこの技を使う時が来るとは...

教室から出ようとした時だった。

「よかったら一緒に食べない?」

クラスの子に話しかけられる。周りを見渡してから返事をする。

「もしかして私に言ってる?」

挙動不審にしていることがバレたのか。警戒心マックスで返事をした。

「そうに決まってるじゃん。ほら、一緒に食べよ?」

優しい世界だ。もし僕が男のままで孤立をしていたら間違いなく便所飯コースだっただろう。女でよかったと少しだけ思う。

言葉に甘え、声をかけてくれた子と二人で昼ご飯を食べることにした。

「波崎さんって一年生の時と印象違うかも。なんというか見かけによらず少し男の子っぽいよね」

「そ、そうかな」

怪しまれたか。神経をすり減らしながら購買で買った焼きそばパンを食べる。

「女の子が焼きそばパンって変わってるね。食べるものが男の子っぽいかも」

この女鋭い。女の子ってこんな洞察力あるのか。

「ま、まあ焼きそばパンくらい女の子も食べるでしょ」

適当なことを言ってごまかす。中身が本当に男なんて桜さんのためにも死んでも言えん。

五時間目のチャイムが鳴り、女子トーク(?)を何とか終えることができた。

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