第3話 情報収集

僕が女の子になってから一週間、もうこの身体にも慣れた。身長が低くなったり、トイレが変わったり、男の頃の感じとは全く変わって変な感じだ。

十代にしてセカンドライフを送っている気分だ。まあ、死んでるしな。

この身体の子、桜という子は事故でしばらく昏睡していたらしく、筋肉が衰退してあまり自由に身体を動かせない。なのでしばらくはリハビリで身体を慣らさなければならない。

さらに一週間後、リハビリを重ね学校に行けるほどまで回復した。

そして明日、退院することになった。

退院をする前に僕はこの子のことをよく知らない。情報を集めなければ。

まずは簡単に苗字から調べる。

「名前くらい病室の外に書いてあるか。」

早速調べに行く。苗字は波崎はざきと読むのだろうか、なかなかかっこいい名前してやがる。フルネームは波崎桜はざきさくらというらしい。

「退院するなら帰る家が必要だよな」

住所はどう調べようか。五分ほど考えた。

「保険証に書いているだろう」

病室の引き出しなどを漁る。無い。保険証が無い。

「どこにあンだよ...」

見つからないので一旦捜索を断念する。

「携帯に住所載ってないかな?」

携帯はさっき保険証を探しているときに見つけた。

他人の携帯、その上女の子の携帯を勝手に見るのは気が引けるが仕方ない。

「生きるためだ許してくれ」

変な言い訳を述べ、恐る恐る携帯の画面をスライドしロックを解除する。

しかしパスワードが必要でロックを解除できない。

詰んだ。他の手を探そうとしたが他に自分を調べる手段が思いつかない。

そうだ、誕生日がパスワードかもしれない。そう思いベッドに書いてあった誕生日を見て、入力する。なんだか脱出ゲームでもしているような感じがしてきた。

解けた。少し気分がスカッとする。

携帯のメモを見ると律儀に住所が書いてあった。情報が漏れたらどうする気なのだろう。すでに一人に漏らしてるけど。

大体基本情報は集まった気がする。これで今のところはいいだろう。

退院したら学校に行かなければならない。今日はもう休み明日に備えよう。

簡単な情報でも収集するのは大変だと今日痛感した。

「死んでもまた学校、黒い世の中だよなぁ...」

少し愚痴をこぼして今日は終わった。

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