第2話 友達
事故に遭い、病院で目が覚める。すると僕は女の子になっていた。
「嘘だろ...」
疑う。この人は僕じゃないと。
でもこの意識は僕だ。どうなっているのか自分でもわからない。
「一旦落ち着こう」
自分にそう言い聞かせ混乱状態の僕を落ち着かせた。
とりあえず身体を触ってみる。そして改めて分かった、女になってしまったことを。
顔を見ると中々美人な顔をしている。こんな子が彼女だったらどれだけ幸せだったことだろうか。
引き続き身体を確認していると病室のドアが開いた。誰かお見舞いに来たのだろうか。
部屋に入ってきた人は女子高生のようだ。僕が通っている学校の制服を着ている。
すると驚いたような顔をしてこちらを見てこう言った。
「目が覚めたの?」
何のことかよくわからなかった。
「よかったぁ」
こっちは何もよくないけどな。心の中でそう思いながら彼女に軽く挨拶してみた。
「よ、よう」
しまった。男の口調で話してしまった。
「おはよう、しばらく目が覚めなくて心配したんだよ?」
口調については触れられなかった。
彼女はこの身体の子の友達だろうか?僕はそう思い、今の自分について聞いてみる。
「僕...じゃなくて私って何があったの?」
またボロが出る。
「何って二週間前、事故に遭ったんだよ。覚えてない?」
覚えてない、知るはずもない。
「そうだっけ?覚えてないや」
「だよね。でも事故のことを覚えてないなら...」
彼女は小声でそう言った。意味は分からなかった。
何か暗そうな顔をしていたので話をそらしてみる。
「えっと、私がいない間学校どうだった?」
「何も変わらないよ。でも
おそらく桜というのはこの身体の子のことだろう。
そういえば彼女が着ている制服は僕が通っている高校のだ。僕について何か知ってるかもしれない。
「上坂って人知ってる?」
すると彼女はまた暗い顔をした。そしてこう言った。
「桜が好きな男子でしょ?わかってるよ」
なんと、僕を好んでくれる人がこの世でいたなんて。思いもしなかった。しかもこんな美人に好かれてたなんて知りもしなかった。
「その...言いにくいんだけどさ」
あまり言いたげなさそうな表情でこちらを見る。
「どうかしたの?」
「上坂君ね昨日事故で亡くなったんだって」
「え?」
信じられなかった。自分が死んだなんて。
この一言で人生なんてどうでもいいなんて思えてきた。
でもここで挫けてはだめだ。今の僕は桜という女の子。上坂祐なんて男は他人だ。
死んでしまったとわかった以上もう自分について聞く必要はない。桜のことについて聞いてみよう。
「そういえば両親は来ないのかな」
適当に言った言葉だった。
すると彼女はこう言った。
「悪い知らせばっかりで辛いかもしれないけど落ち着いて聞いてほしい」
悪い予感しかしない。
「桜の両親ね...もういないの」
もしこの子が僕ならもう自殺を決心するレベルに辛い。十代の若さで両親失うなんて...
言葉が出ない。僕と同い年でここまで辛い人生を目の当たりにしなければならないなんて。
しばらく黙り込んでいると彼女は椅子から立ち上がり、こう言って病室を出てい行った。
「新しいクラス、二年三組だから、元気になったらまた学校で会おうね!」
まるでもうお見舞いに来ないような口ぶりで行ってしまった。
「この子の人生酷過ぎるだろマジで...」
そう一言言って僕は哭いた。
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