芋男爵と私

@kakuson

第1話 抱っこして

 芋男爵が珍しく二人で今度、舞台を見に行こうと言い出しました。


公務員時代の友達が劇団に入っていて、今度公演があるので誘われたそうです。

私も何度か会ったことのある男の子なので、なるほど、あの子が劇団に入って役者になったのね…と思い一緒に見に行くことにしました。


芝居が始まってみると、舞台は女装した男性の話で、出演者の男性はみな素敵なワンピース姿でした。


芝居はコミカルに進んで、女装の男性が、男装の女性と結婚するという結末でした。


最後にウェディングドレスの花嫁を、両手で抱えて花婿が舞台から下に消えていく場面がありました。


家に帰ってから、芋男爵が「俺あれ一度やってみたかったんだ」と言い出しました。

なんの事かと思って聞き直すと「花嫁を両手で抱えて、それでベッドまで運ぶのやってみたかったんだ」と言います。


「ちょっとやらせろよ」と言うので私は寝室で芋男爵の首に両腕を回しました。

芋男爵が私の背中に右手を回して、もう一方の手を足の下に通して持ち上げようとしました。


どうにか私が芋男爵の首にぶら下がって芋男爵が立ち上がりましたが、「これはだめだ」と言ってすぐに私を降ろしてしまいました。


「お前重すぎる、前はもっと軽かったのに、太ったんじゃないか」

と言って機嫌が悪くなりました。


翌日私は体重計を買ってきて、体重を量ってみました。


大学の時より5キロも増えていて、私はどうしようもなく愕然とするだけでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

芋男爵と私 @kakuson

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る