第14話 ドリップ珈琲と黄色い林檎




 新しいミルで、

 イパネマという名前の豆をく。


 ストーブの前に座って ミルの取っ手を回す貴方。

 それを隣で見つめるビビは、

 時折 バリバリバリと、

 真似るように 爪を研ぎ、

 そして、 また大好きな人の手元を見つめる。


 コリコリコリコリ。

 貴方が奏でるその音は、

 ビビがキャットフードを

 カリカリカリカリ 食べている音に似通っていて心地良い。


 挽き立ての珈琲を

 覗き込んで 軽くクンクン匂いを嗅いで、

 興味無さげにきびすを返したビビ

 ふわふわした尻尾が ゆっくり揺れる。


 ホーローの ポットの蓋がカタカタカタカタ、

「湯が沸いたよ」 と、合図する。


 珈琲を落とす貴方の隣で、

 私は黄色い林檎をむく。

 シナノゴールドと名付けられた品種コレ

 私たちのお気に入り。


 ジャズの流れる暗い午後。

 酸味と苦味

 贅沢に抱え込んだ珈琲と、

 酸味と甘味

 ふんだんにたくわえた林檎で、

「今日もお疲れさま」 と、向かい合ってお茶をした

 初雪の降った日。




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