幽霊カメラマン
どうやら俺、戸部 孝雄(27歳カメラマン)は死んだらしい。
いつの間にか暗い部屋に立っていて
どこかから現れた男に「あなたは死にました」と言われたのだ。
不思議と嘘だとは思わなかった。
最後の瞬間のことはよく覚えていないが
気づいたときには叫んでいたから
なにかしらの事故に巻き込まれたのかもしれない。
そんなことを考えているとまたあの男が出てきた。
「えー、戸部さんですね。あなたは下界で徳を基準値以上積んだので
1日だけ下界に降りることができますが、どうします?」
もちろん降りるつもりだ。なぜなら孝雄には交際相手がいたからだ。
一つ年下の平田 恵子。彼女にもう一度会いたい。
孝雄は頷いた。
「今、降ろしてくれ」
男が指をパチンと鳴らした。
気がつくと恵子の家の前にいた。まだ辺りは暗い。2時ぐらいだろうか。一度深呼吸してベルを押す。
1秒2秒……15秒出てこない。家にいないのか?
他の場所を探そうとしたとき。 扉が開いた。恵子がでてくる。
「うっ嘘。孝雄さん?えっそんなはず…」
「俺だ恵子。とにかく話を聞いてくれ。」
孝雄は家に上がると恵子にこれまでのことを話した。
「よかった。孝雄さんと最後に会えて」
恵子は泣きながら話した。
その日は一日中恵子とゆっくり過ごした。
テレビを見たり、ゲームをしたりなんでもない休日のように。
幸せな時間が過ぎもうすぐ別れの時間だ。
恵子がまた泣き出してしまったので、最後に写真をとることにした。
孝雄は写ることができないが、それでもいいのだ。
写真を撮ったとき恵子の時計が12時を知らせた。
ゆっくりと昇っていく孝雄を恵子が見送る。
孝雄が逝ったあと恵子は写真をもう一度見てみた。
恵子の隣にはうっすらと笑顔の男の顔が写っていた。
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