6-3 マーム

 泣き止んだオルガは、右手に短剣を握ったまま、ルイの遺体の傍らでうずくまっている。月明かりに照らされているものの、顔は影に隠れて見えない。

「なんだ、お前か……」オルガが、かすれた声で呟いた。「今夜は、月が綺麗だな」

「ええ、本当に」そう言って、ジルダは空を見上げる。雲のない満月だった。

「……なあ、メイド」

「なんでしょう」

「お前は一体、何者なんだ?」消えそうなほどに薄い声だった。

 静かに時が流れる。

「ねえ、オルガ」やがてジルダは、月を見上げたまま問いかけた。オルガは答えない。「あなたからは、血の香りがします。それはきっと身体に染み付いた匂い……あなたこそ、何者ですか?」

 ジルダが視線を下げ、オルガを視界に捉えようとするも、その姿は霞んで見えた。突然の、戦闘だった。先手はオルガが制した。

 オルガは、ジルダの脇腹まで飛び込み、左手でジルダの顔面を掴むと同時に足を払った。そしてそのままジルダの後頭部を地面に叩きつける──はずだった。手ごたえが無い。かけたはずの左足も、顔面を掴んでいたはずの左手も、いつの間にか空を切っていた。ジルダは足を払われる直前に自ら地面を蹴り上げ、逆上がりのようにして身体を浮かせると、そのまま後方に旋回しながらオルガから離れていたのだ。


 まずい。


 直感したオルガは、跳ぶように下がる。だがそれでも遅かった。ジルダはすでにオルガの胸元まで距離を詰めて、そしていつの間にか、胸倉を掴んでいた。オルガが後ろ足をつくと同時に、ジルダは前に足をついた。そのまま上体ごと反らして、相手の身体を引っ張る。ジルダはオルガの身体を胸元まで引き込むと、今度は自分の身体を反転させてオルガの背後を取った。


 衝撃。


「……っぐ」オルガは息を詰まらせる。身体を廻る血脈の鼓動が、耳の奥でどくどくと響く。しかしそれに呼吸が追いつかない。苦しい。心臓を殴られた。そんな衝撃を背後から受けたのだった。

 ジルダは掌底を、オルガの背面へと喰い込ませていた。左の肩甲骨と背骨との間に沈んだ手。オルガは前方へ転げるも、即座に身を起こして体勢を整える。胸を抑えながら片膝をついて息を切らした。

「やっぱりな」オルガは呼吸を荒げて叫んだ。「この人殺しめ!」

「オルガ・セサビナ」ジルダは静かに呟いて、眼前の女を赤く睨んだ。「私はあんたを許さない」

 オルガは引かない。むしろ攻めていく。たとえ相手が本職だったとしても、自分が戦闘で負けるはずはないという自信があった。歯を喰いしばりながら放つ咆哮とともに、オルガは動いた。相手の三歩手前から、低空でのステップイン。ノーモーションで左ストレートを放つも、ジルダに避けられた。オルガはそのまま勢いを殺さず身体を旋回させ、続けて右手に握った短剣を伸ばす。が、その拳に刺すような痛みが走った。ジルダは片肘を、オルガの裏拳へと的確に当てていた。握っていた短剣がこぼれ落ちる。オルガは右手に痺れを感じながらも、即座に身体を沈ませ、タックルへと移行した。

 ──っ、捕まえた!

 そのままオルガがかぶさる形で二人は倒れる。瞬時にオルガは相手の身体に跨ぎ乗った。そのとき、オルガは自らの優位性を感じ、はっきりと油断した。

 やった!

 そう思った矢先、ジルダの手が胸元に伸び、再び胸倉を掴まれた。ジルダの冷たい、刺すような眼。右方向への強いプレッシャー。そして、ブリッジと回転。その勢いにオルガはバランスを崩した。ジルダはその隙を逃さない。一気に相手の身体を横に倒し、逆に自らが上にかぶさったのだ。今度はジルダが、オルガの身体に跨る形になる。ジルダは左手でオルガの右腕を押さえ、右膝で左肩を押さえつけた。オルガは必死にもがくが、身動きがとれない。バタバタと跳ねる魚を思い出した。料理人に押さえつけられ、刃先を咽元に刺し込まれる魚。

 ジルダはいつの間にか落ちたはずの短剣を右手に握っていて、自由に動かせるそれをオルガの首元に押し当てていた。ただ当てるだけ。力は加えない。それは、いつでもお前を殺せるというアピールなのだと、オルガは感じた。

「最後に訊かせてくれ」オルガが問うた。「お前はルイやオレたちを始末するために、この館にやってきたのか?」オルガのその言葉に、ジルダは瞳を見開いた。

「オルガ」ジルダが口を開く。「あなたがルイを殺したのではないの?」

「オレがルイを殺すかよ」オルガは息を切れ切れにしながら言い放った。彼女の瞳から、雫が流れ落ちる。そしてジルダは、自らの間違いに気づくのだった。


「安心して、もともとあなたを殺すつもりはなかった」

 防衛行為だったと、ジルダは続けて言った。オルガは仰向けのまま夜空を見上げている。ジルダは少し離れたところまで距離を置き、腰を落とした。

「それと、これも返すわ」

 そう言って、ジルダは短剣を花壇に突き刺した。

「オレから血の匂いがするのは……」オルガがぽつりと呟く。「きっと、オレがこの館で人殺しを任されているからだ」

 ジルダは、静かに彼女を見つめた。

「この館で、って言っても中でやるわけじゃない。外での仕事がほとんどだ。しかもその多くが元同僚さ。ミスした奴は殺される。裏切りや口封じに殺される奴もいる。上から嫌われただけでターゲットにされた奴もいたな。昔は殺し屋に頼んだりもしたけど、最近は、自分で直接手を下すほうが多いんだ。だからかな。血の匂いがするのは」

 そう言って、オルガは自分の手首のあたりを嗅ぐ。

「オレは、あんたが王族か誰かの命令で、オレたちを始末しにきたんだと、そう思っていた」オルガは少しかすれた声で続けて語りかけた。目線は空を向いたまま。「けど、違うみたいだな」

「ええ」ジルダは首肯する。

「なあ、ジルダ」

「何?」

「お前は殺し屋だろう?わかるんだ、身のこなしで。お前は誰を殺しにきたんだ?」オルガの顔がジルダのほうへ向く。

 ジルダはすぐに首を振って「私は、救いにきた」と告げた。

「救いに?」

「確かに、私はかつて殺し屋だったけど、今は捜し屋をしている」

「捜し屋、だと?」オルガは上体を起こして尋ねた。

「ええ、子ども専門の捜し屋よ。攫われたり生き別れた子どもを捜して親元へ返す。それが今の仕事なの」

 ジルダは、もう正体を明かしても構わないと判断していた。

「救うのは誰だ。バーバラか?」

「ううん、違う。私が救い出すのは、レイン」

「レインだって?あの人はもうとっくに大人だぜ?」

「そう。私が救い出すのは彼女と、彼女の子ども」

「レインの……子ども?」

「そう。彼女は、身籠っているわ」


 ジルダは、バンデウムが去った後のレインの部屋を思い出した。

「あなたには、守りたいものがある?」

 レインは自らの下腹部に手を当てて、ジルダにそう尋ねた。そして、ジルダはそれに正直に、はい、と答えた。

「それは、何?」

「子どもたち」

「あらそう……私と同じね」

 レインは頬を緩ませて、そう小さく呟いたのだった。


「そうか。やっぱりそういうことだったんだな……」

 ジルダの話を聞き終えると、オルガは拳を握りしめて呟いた。

「何か思い当たることでも?」ジルダが尋ねた。

「まあな。けど、きっとお前のほうが知っているさ」

「私が知っているのは、今話したところまでよ。他の事情はほとんど知らないに等しいわ」

「オレだって、似たケースなら知っているってだけだ」

「似たケース?」

「ああ。昨晩……いや、一昨日になるかな、皆で夜まで騒いだときのルイの話を覚えているか?」

 ジルダは、ルイのした怪談調の出生話のことを思い出す。

「あなたが相当怖がっていた話のこと?」

「あの話し方がダメなだけだ」オルガはむきになって「話の内容は、別に怖くもなんともないさ」

「あら、そう」ジルダは少しだけ意地悪な口調で返す。

「お前、いきなりキャラクター変わったよな」

「もう演技する必要はないもの」ジルダはそう言って、オルガを見つめた。「それで、ルイの話がどうしたの?」

「ああ……あの話は、ルイが昔からする話でさ。作り話なんだろうけど、あの話に出てくる赤子をバーバラに置き換えると、あながち作り話でもなくなるんだ」

「バーバラが死体から生まれたっていうの?」

「ああ、そうだ」そう言って、オルガはルイの遺体を眺めた。「バーバラはな、死後出産で生まれた子どもなんだ。母親が脳死の状態のときに産まれた」

 ジルダは息を飲む。

「バーバラはある意味、モルモットなんだ。脳死状態で引き取り手のなかった女の身体を、この国は人工的に妊娠させたんだ」

「何のためにそんなことを?」

「オレにもよくわからない。けど、たぶんレインも似たケースなんじゃないかなって思ったんだ。精子提供者の子どもをどうしても残したかったとか、遺伝子操作の実験だとか、きっとそういった下らない理由なんだろうけどな」

「それが理由で、バーバラはこのフロアに?」

「まあ、そういうことになるな。だけど昔はもっと自由に他のフロアも行き来していたんだぜ。だけど、バーバラの死後出産の事実は、どこから漏れたのか、いつの間にか館中に広まっていた。噂話として、大きくなったり歪んだりしながらね」オルガは溜息を漏らす。「生まれながらにして特別扱いされていたバーバラを、他のガキどもは妬んだんだろうな。それからは、影でこう呼ばれるようになったんだ」彼女は少しだけ躊躇した後で言った。「【蛆のわいた子maggoty girl】だってね」

「ひどいネーミングセンスだわ」ジルダは怒りを覚えていた。

「まったくだよ。それ以来、バーバラはこのフロアに引き籠もるようになった。だけど、それを知ったルイが、バーバラに言ったんだ『私の方がもっと凄いのよ』って。それでルイは、自分はまるでそのことを気にしていないかのように、笑いながらいろんな人に自らのことを話した。それがあのときの話さ。ルイはこの館で力をつけていた頃だったから、そのうち誰もバーバラのことを悪く言えなくなっていったんだ」

「いい人ね……」ジルダはルイの遺体に目を向けた。

「ああ、本当にいい奴さ。ここのメンバーは皆、ルイを慕っていた。綺麗でかっこよかった。オレの憧れでもあったんだ。本当にあいつは皆から愛されていたんだ」オルガは両手で頭を抱えていた。「……お前の言う通り、ルイを死なせたのは、オレかもしれない」

「どうしたの、急に?」

「オレ、今朝この館を出る前にルイに声をかけられて、頼みごとをされていたんだ」

「……頼みごと?」

「ああ。今夜、大事な話があるから帰ってきてほしいって、そう頼まれていた」

 ジルダは睡眠薬入りのパンケーキを思い浮かべた。もしその話が本当なら、ルイはなぜ私を部屋に引き留めたのだろう。

「だけど館に戻ってきて扉を開けると、そこにルイが立っていたんだ」そう言って、ルイの遺体の付近を指差した。その指は小刻みに震えている。「ちょうど、腹を……裂いているところだった」オルガはそのときのことを思い出したのか、嗚咽混じりになる。「そこでわかったんだ。今日、ルイは死ぬことが決まっていたんだって。今朝、オレに声をかけて帰ってくるように言ったのは、きっと、止めてほしかったんだろうって」

「だから謝っていたの?」

「ああ。オレには止められなかった。きっとあれが、ルイからの最後の頼みだったのに……」

 ルイの瞳は閉じたまま、腹部にはオルガのトレンチコートがかけられている。血の気がないからか、生前とは顔立ちが僅かに違って見えた。

「あいつが死んでいくとき、それは幸せそうな顔をしていたよ。腹を裂くだけだと、なかなか死ねないのか、息が絶えるまでしばらくかかってさ……その間、オレは何もできなかった。ただ茫然として、いろんなことが頭を巡って。だけど幸せそうな顔をしたあいつを見ると、オレにはそれを邪魔する気にはなれなかったんだ」

 ついに、オルガは声を上げて泣き叫んだ。ジルダは、落胆した彼女にかける言葉が見つからなかった。そうやって慰めの言葉もかけず、ただ無為に時間だけが過ぎようとしたそのとき、ジルダの首筋に何か熱いものが刺さり、背後から声がした。


「あなたは、バーバラの頭の中にあるモノが何か知っていて、こんな勝手なことをしているのですか?」


 ジルダは振り向こうとしたが時すでに遅く、身体から力が抜けて、意識が遠のいていくのを感じた。オルガのほうを見ると、彼女は既に泣き止んでいて、驚いたような顔をしていた。

「なんでお前が、ここに?」

 誰かが近づいてくる。薄ぼんやりとした景色。膝をついて見上げると、そこにはメイ・サイファの姿が目に映った。

「ねぇ、オルガ」メイはオルガに向かって語りかけている。「ルイがバーバラを助けたかった理由をあなたは知っていて、それでも彼女を裏切ったのですか?」

「ち……違う。オレはただ、ルイを助けたくて……」

 メイやオルガの言っている意味がわからない。だめだ。意識が。

「そこの捜し屋さん」

 頭蓋に追撃を受け、ぼやける景色。

 かろうじてメイの言葉のみが聞き取れる。


「「あなたは」」

 音が頭の中で響く、


「「レインの孕んだものが、わかっているのですか?」」


   *  *  *


 目を覚ますと、ジルダの手足は寝台の四隅に縛られていた。無理に動こうとすると縄が食い込む。確か、メイに何かを刺され、殴られて。それから……どうなったのか。頭だけ起こすと男の顔が見えた。レインの部屋で見たあの気色の悪い医者だ。きっとこの男が私を縛ったのだろう。火の付いた蝋燭を手にして、こちらを眺めている。その燈火のせいで周囲の暗さが際立ち、辺りの様子を窺うことができない。

 バンデウムは不敵な笑みをもらして、口を開いた。

「君は今まで、快楽を感じたことはあるかな?」

 ジルダは猿轡を噛まされていて、呻くことしかできないでいる。

「なんでも良いんだ、ただ『気持ちいい』と思っただけでも」

 返答を待つ様子もなく、バンデウムは話を続けた。

「もし、君がその身体で」

「快楽を認めたことがあるならば」

   「それと同時に君は、

      痛みをも認めたことになる」 


 再び意識が朦朧として、声が多方向から聞こえてくる。


 「快楽と痛み。

     相反するように思える二者だが」

 「その本質は密接に関り合っているんだ」

   「驚くことにその二つはね、

           共存できるんだよ」


  「それらを紡ぐもの」

       「それはね『愛』なんだ」


    「痛みと快楽は

  『愛』によって、

絡み合うのさ」

                       「安心してよ」


「たっぷりとあげるから」


 ジルダは思った。

 心の痛みは、少しなら慣れている。大きな痛みを覚え続けているから。けれど肌で感じる痛みはすぐに忘れてしまって。だからなのか、傷つくたびに痛くて、なかなか慣れないものだな、と。


凍える寒さも、焼ける熱さも、

鋭い刺激も、鈍い衝撃も、

吐血も、喀血も、窒息も、痙攣も、失神も、

打撲も、脱臼も、骨折も、腫脹も、裂傷も、

身体を冷やされ、電気を通され、

異物を埋め込まれ、薬を注がれ、

鞭で打たれ、刃で刻まれ、針で刺され、

拳で殴られ、髪を引かれ、爪を剥され、

皮を焼かれ、肉を削がれ、骨を砕かれ、

神経を千切られて、


そんなありきたりな痛みは全て、

繰り返し、果てなく、今までだって、幾度何度も狂うほどに、感じてきたはずなのに。

慣れないもんだな、肌で感じる痛みというのは。


 ああ、痛い。

 痛い、痛い、痛い。

 痛い、痛い、痛い、

 痛い、痛い、痛い、

 痛い、痛い、痛い、

 痛い、痛い、痛い、


絶叫し、嗚咽し、嘔吐し、排泄し、出血し、

涎も、涙も、血も、血も、血???


 ああ、

 あア、

 はヤく、オワッテ

 コレは、イツ終ワルの?

 終、終、終、おわっ、おわっ、おわっ、

 もう、もう、オ願イ……願願ネガッ


イタイ  イタイ        イタイ   イタイ

     イタイ  イタイ イタイ   イタイ

イタイ    イタイ        イタイ

 イタイ       イタイ

                イタイ

 イタイ   イタイ

              イタイよぉ……


イイィイイイイイイィイイイイイイイイイイィイイイイイいいいぃ


 アトからやってきたオンナみたいなオトコがイう。

 たシか、アガズィアとかいうヤツだ。

「いつも僕がいないときに事件が起こるんだよ」「君がレインに雇われると決まった時もそうだ」「君のことは初めから疑っていた」「だから、調べたんだ。メイを使ってね」「君が国際指名手配犯だっていうことは、すぐにわかった」「だけど、少し泳がせたのは失敗だったよ」「まさか、ルイを殺されるとはね」

 ソいつはワタシの首をシメはじめた。ぐるじい。

「レイン以外にも、外部に協力者がいるはずだ」ぐるじイ。「君はフリーランサーで組織には属していない」ぐルじイ。「じゃあ、君を手助けした連中は何者だ?」ぐルじイ。「何の目的があって、君を忍び込ませた?」ぐルジイ、ぐルジイ、ggジイッ

 手がはなレた!息がすえル!息!息!息!

「さっき、メイから面白い報告があったんだ」

 め、ちかい

「君には、娘がいるそうだね」

 アガズィアの言葉に、ジルダの意識は僅かに返った。猿轡はすでに外されていたが、言葉にならない言葉が口から漏れる。

「そして、君はその娘と生き別れている。子ども専門の捜し屋なんかしているのも、仕事をしながら自分の娘を捜すためなんだろう?泣けるねぇ」アガズィアは憐れむような眼差しを向ける。「君自身の目的は、これかい?」そして何かチップのようなものを掲げた。「この国に売られてきた、コードレスの子どもたちのDNAリスト。レインが持っていたものだ」ジルダの表情が変わる。「コードレスの遺伝子情報が載っている。こんな資料はなかなか無いからね。君のものと照らし合わせて血の繋がった娘がいるか調べるのは、とても簡単なことだ」アガズィアは耳元に顔を近づけて。「君を送りこんできた奴のことを話せば、これはくれてやろう。その後のこと?どこへでも逃げるがいいさ。僕は君自身には全く興味がないんだ」

 そして、囁く。

「君がもし本当に母親であるならば、どうすべきかわかるよね?」

「ねぇ、お母さんマーム?」


 仲間か。娘か。


 端的に言ってしまえば、そういう選択を与えたつもりなのだろう。

 くだらない。そんなの、答えは決まっている。

 私は母親なのだから、決まってしまう。

 選択肢にも、なっていない。


 本当に、本当にくだらない。

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