第玖話「問1.この時の黄木凛の気持ちを答えよ。(配点10点)」
乾いた咳が部屋に響く。彼女の長い髪をかき分けて背中をさする。咳が落ち着くと、水の入ったコップを手渡す。水を飲むと、また咳きこむ。背中を軽く叩いて、気管に入った水を押しだす。背中を撫でて落ち着かせながら身体を横にさせる。虎子の口からは変わらず、息をする低い摩擦音がする。
虎子の目を盗み、携帯電話の履歴を見る。しかし、とくに異常は見当たらない。たしかにまだ迷惑メールは来てはいるが、内容は出会い系やフィッシング詐欺などで、不幸の手紙のようなものではない。あれ以来、虎子へのメール攻撃はぴたりと止まり、電話は比較的に静かになっていた。
ブミヤを撃退した。
原因は排除できた。
不幸の手紙がまた来ている様子もない。
しかし。
症状が一向に良くならないのは一体どういうことなのだろうか。
「なんでだ?」
不幸の手紙がそれほど効力が強いか、原因が他にあるか。
コムライスに体を調べてもらったが、『呪詛の残留』としか言い様がないそうだ。しかし、調べた本人もここまで長引いていることに首を傾げる。すぐ治る、もう少しで良くなる、良くなるはず……そう言って一週間が経った。
ことを重く見たコムライスは黄木凛(俺)の携帯電話から離れ、いんたぁねっつ内で聞き込みや調べ物をしている。今は彼女の病態を見守りながら、その報告を待っている状態だ。
「凛」
「なんだ、虎子」
「……授業ちゃんと出てるか?」
「出てるよ。今日なんか国語の西村がさぁ―――」
虎子はお見舞いの時、今日あった学校のことを聞いてくるようになった。それに対して他愛のない内容を面白可笑しく、時に大げさに脚色して話す。一日中寝ているので、学校の気分を味わせるのが自分の仕事だと考えた。
「―――そのチョーク投げを俺が避けて後ろの席の奴の額に当たったんだよ」
「はは。…………なあ、凛」
「ん?」
虎子はバツが悪そうに、布団に顔の下半分を隠す。
「わがまま……言っていいか?」
「今ちょうど、なんでも聞いちゃうくらいには
と言ったが、彼女は布団の中でもじもじして、一瞬だけ言いずらそうに黙った。
「……アニメ見たい」
予想外の要望が出てきた。虎子がアニメ愛好家である記憶はない。逆に、黄木凛(俺)はアニメに限らず、様々なジャンルを見る。ドラマ、邦画洋画、児童書、専門書、一般小説、ライトノベル、音楽などなど、何でも食べる雑食系だ。配信の時の話題にもなるし、逆にそのリスナーからオススメ作品を募ることもある。そうした方が時代の流れに追いつきやすい。
「……だめ、か?」
「いいぞ」
虎子は怒られると思っていたのか、少し困惑の色を見せた後、顔を輝かせる。
彼女だって自分が無理を言っていると理解しているはずだ。
「ただし、アニメを見るにあたって、条件がある」
「……嫌な予感がする」
虎子は一瞬にして不安に顔を曇らせる。
……。
「……り、凛。これは少し恥ずかしい……ぞ」
「じゃあ、見るのやめる?」
「み、耳元で喋るな! こ、こそばゆい」
顔は見えないが、髪の間から生える耳の先は真っ赤だ。
「やっぱり、これはまずいと思うのだが……その、私の身体、汗で臭うだろ」
「重々承知だが?」
「そ、それに、凛に風邪が移るかも知れないだろ……」
「俺は構わない」
「私が困るのだ……ぅー顔が熱い」
「ドクターストップかけるか?」
「……いや、見る」
虎子に出した条件は三つだ。
その1.見るものは三十分アニメ一本相当のもの。
その2.少しでも具合が悪くなったらドクター(俺)ストップ。
その3.黄木凛(俺)の膝の上で、布団ぐるぐる巻きにして厳重警戒体制。
つまり今、一つの布団の中に二人の身体が入っている状態だ。虎子は居心地が悪そうにもぞもぞとしている。
ノートパソコンを開き、アニメを見る準備に取り掛かる。公式サイトで最新話を一週間だけ見ることができるらしい。前回の放送からあと一日で一週間が経ち見れなくなるので、虎子は見たいと言い出したのだ。
「虎子ってアニメってそんなに好きだっけ?」
「深夜アニメの方はほとんど見ないな。あ、これだこれ。このアニメを見たかったんだ」
虎子はそのタイトルに指をさす。詳しくはないが、名前だけは聞いたことあった。配信で一度聞いた単語だ。たしか、女児向けのアニメだ。時折、テレビ
「……その、引いたか?」
「黄木凛がそんなことで引くはずがないだろ?」
どうやら、彼女の言葉を聞く限り、虎子は世間一般的に『アニメオタク』と評価されるものとは実は少し違うらしい。というのも、視聴している作品が非常に限られている。子供向けアニメやギャグ、それに類する、誰も不幸にならない優しい世界のアニメしか見ないのだ。エログロや大人向けを否定しているわけではないが、アニメという存在は子供向けの延長線上であってほしいらしい。
再生ボタンを押し、アニメが始まる。軽快な音楽とともにオープニング映像が流れる。たくさんのキャラクターが現れる中、一人が光に包まれて変身する。そして、意外な人物が画面に映った。
頑張って魔法少女用に仕立てたようなフリル付きの着物、見覚えのあるステッキ、シンギングボウルのようなメロディ――まちがいない。コムライスだった。
目を擦って二度見したが、液晶の中にはやはりコムライスがいる。
いや、よく見るとコムライスではない。コムライスのコスプレをした別キャラクターだ。箇所箇所が少しずつ違う。このキャラクターもあのステッキを持っているが、幣紙が付いていない。それに、あの女神は普段『働きたら負け』と書かれたTシャツを着ているはずだ。このキャラクターの変身前は普通の小学生だった。
「……これってなんていうアニメだっけ?」
「ん? 興味があるのか?」
「まあ」
「『魔法少女☆亜美たん』っていうタイトルだ」
「内容は?」
「力を失った神が信仰を集めるために、ある日、亜美という少女を魔法使いに変身させ、身の回りの人たちを幸せにさせていくストーリーだな」
「……なるほど」
「こういうとありきたりな設定だが、侮ることなかれ。笑いあり、泣きありのハートフルストーリーだ。亜美が健気で泣けるのだ」
「……あー、なんか知ってる気がする。このマジカルステッキ大幣から剣とか出てくるんだろう?」
「なんだその物騒な設定?!」
二次創作にオリジナル設定をぶちこんでいたか。おかげでニワカ認定されてしまったぞ、コムライス。
そのままアニメを見続ける。
なかなかしっかりとした話運びだ。前後の設定は分からないのに、見ていて飽きない。
「……凛、あの時のこと覚えてるか?」
アニメに集中していたら、唐突に話題を振られた。
「小学生の……低学年くらいの頃、同級生の男子が私たちをからかってきてさ」
「あー、あれか。境内で遊んでた時のやつ。覚えてる覚えてる」
「あの時、凛がいきなりキスをして驚いたぞ」
「ああ、確かにしたな」
男女で仲良かった黄木凛(俺)たちを、悪餓鬼たちが囃したてたことがあった。小学生のマセガキによく見受けられる「お前ら付き合ってんのー? ひゅーひゅー、お熱いねぇー?」という煽りだ。それで虎子が泣き出しそうになった時、黄木凛(俺)はその悪餓鬼集団のリーダーにキスをしてやって、笑顔でこう言った。
『好きで何が悪い』
戦々恐々になった悪餓鬼集団は涙目のリーダーを引き連れて、どこかへ行ってしまった。口を拭ってから、驚いた顔の虎子にVサインを見せつけた。
数ある武勇伝の中の一つだ。
「それがどうかしたか?」
「あの時、凛が私になんて言ったか覚えているか?」
その時は確か……そうだ。虎子が『ききりんは私のこと好き、なのか? 恥ずかしくないのか?』と聞いてきたのだ。それの答えは―――。
「『恥ずかしさより格好良さをとる!』……だっけか?」
それが格好いいと思えることなら、どんなに恥ずかしくてもやり遂げてみせる。それが幼き日の黄木凛(俺)の座右の銘だった。特に中学二年生の時にはお世話になった。
「ああ、その言葉だ。……覚えてたか」
「もう懐かしい話だな。それがどうかしたか?」
「あれで私は、こんなに自分は笑えたんだなっていうほど笑ったんだ。……あの頃はヤンチャというか自暴自棄になってたところがあったからな。だから、私が好きなものを好きなままでいられたのは、あの言葉のおかげなんだろうなって思って」
「ああ。そういえば、子供の頃はこんな感じのアニメよく一緒に見てたな」
虎子はこちらを向く。膝の上に乗っている状況なので、必然的に顔が近い。拍子抜けという感じの顔に見えたが、まじまじと見る余裕もなく、すぐに顔を背けられる。
「どうした?」
「……いや、何でもない。一日中横になっていると、昔のことをよく思い出すなって、思っただけだ」
虎子は小さく笑った。
話題を終えたタイミングで、アニメもちょうどエンディングを流し始める。初めて見たが、なかなか楽しめた。続きが気になる。
「どうだった、虎子?」
「いや、今回も面白かった。満足だ」
「それはよかった。じゃあ、さっそくベッドに帰るぞ」
ぐっ、と腕に力を入れ、虎子の身体を布団ごと持ち上げる。図らずともお姫様抱っこになった。前に運んだ時よりも心なしか軽かった。
「わ、私は一人でいけるぞ、凛」
そう言われたが、問答無用で持ち運ぶ。距離にして三メートルくらいだ。このくらいどうってことはない。
虎子をベッドの上に置いて、寝かしつけようとする。その時、虎子の携帯電話に着信をしらせる光が見えた。本人には気付かれないように中身を確認する。
『件名:委員長より。
to.<白形虎子>
From.青景辰巳
内容:体調の程はいかがですか?
心配しています。この一週間のノ
ートのコピーを郵便受けに入れさ
せてもらいます。具合が良くなっ
てからでいいので、受け取ってく
ださい。早く元気になり、学校で
顔を合わせられることを願ってい
ます。
委員長より 』
『不幸の手紙』のようなメールではなかった。それどころか祝福のメールだ。呪いに力があるように、祈りにも力を持ち合わしている。それはきっと虎子の力になってくれる。ちゃんと気付いてあげることができたなら。
虎子の携帯電話を元の位置に戻す。
「虎子、今日はもう帰るよ」
「……うん、分かった」
「また明日」
「うん。また明日」
早足で虎子の部屋を出ると、すぐさま玄関へ向かう。ドアを開けると、予想通り所在無さそうな委員長がそこにいた。
「やあ」
気さくに挨拶をかます。
委員長は目を丸くする一瞬前に、鋭く睨みつけてきた。
「お前、見舞いに来ていたのか」
「まあね。委員長もお見舞いでしょ?」
「いや、私は白形さんの具合が良くなった時困るだろうと思って、ノートを持ってきただけだ」
「それをお見舞いって言うんでしょ?」
「……」
彼女はムスッとした表情で黙ってしまう。他人の家に入るのを躊躇っているようで、気を利かせてこちらから手招きしてみる。
「さあ、入って入って」
「いや、私はだな――」
「虎子は今、学校に行けなくて寂しがってるから、顔だけでも見せてあげてくれない? 合わせる顔が俺のばっかりでもうそろそろ飽きちゃう頃だからさ。俺のためだと思って、さ?」
委員長はさらにキツく睨みつける。最後の一言は余計だったかもしれない。玄関前で突っ立ったまま、話題が途切れてしまう。
こんな時は天気の話題に限る。天気の話題にハズレなし、だ。
「今日はいい天気だね」
空を覆う雲は厚く、生温い空気を下界に落としている。灰色に濁った景色で、電線に並ぶカラスたちが一斉に声を上げていた。うん、『The☆いい天気』って感じだ。
「そうだな。私も曇り空は嫌いではない。しかも、今週末には台風が直撃との予報だ。お前にとってはさぞいい天気だろう」
今の流れで普通に返してくるとは、さすが委員長、やりうる。
「ふん、お前の言いたいことはわかった。虎子のためにお見舞いしてやる」
委員長は根負けして家の中へ、入れ替わりに黄木凛は家から出てこうとする。
「ちょっと待て。おい、どこへ行く?」
「いや、お暇しようかと」
「一緒に見舞いに行くのではないのか」
「俺は帰るところだったし」
「……」
「いやぁそんなぁ、『友人宅に行くのが初めてで心細いから一緒にいてほしい』とか言わないと普通分かりませんよぉ〜〜〜」
「お前は本当に煽りの天才だな」
彼女は苦虫を噛み潰したような苦笑いをする。
「お前に頼むより、自分を信じたほうがより正しいことを思い出せたよ。では」
「はは、じゃあ虎子によろしく」
「ああ、任せろ」
さよならを告げて玄関扉を締めた。委員長になら虎子を任せられる。
自宅への帰路に着こうとしたその時、胸ポケットが震えた。意識するよりも早くそこから携帯電話を取り出した。なぜならマナーモードに設定していないから。つまり、コムライスがなにかを報せに帰ってきたのだ。
『凛さん! 分かったかもしれません』
「本当か」
『説明は後です。いんたぁねっつに今すぐ来てもらってもいいですか?』
携帯電話の画面から手のアイコンが浮き上がり、向こう側へ誘うように手招きする。アイコンに触れると、身体が光になっていんたぁねっつの中に入った。
辿りついたそこにはコムライスと……アンがいた。おそらく調べ物の時に知恵を借りたのだろう。
「原因がわかったっていうのは本当なのか?」
『まだ確定ではありません。なので、今から確かめるところです』
この二週間、進展も音沙汰もなかったことに比べれば、未確定情報でも助かる。
「なにか手伝えることがあったら言ってくれ」
情報が確定していない状況で呼ばれたということは、何かしらのヘルプを求めてだろう。
『……まず、今の状況から整理します』
しかし、コムライスは淡々とした口調で返した。
『虎子さんは呪詛……【不幸の手紙】によって、その厄災が降り注ぎました。その犯人を見つけるために私と凛さんで探しました。そこにいたのは体調を崩したパ・ブミヤでした。呪詛返しが起こり、彼にも厄災が降りていたんです。ここまではいいですね?』
今までのお浚いだ。説明されるまでもない。一週間前のことだが、昨日のことのように記憶している。
『ですが、ここで一度、私は違和感を覚えました。なぜなら、あの【呪詛返し】は異様でしたから』
「異様?」
『はい。その確信を得るため、アン伝てでブミヤに聞きました。今、彼は前回の戦闘で衰弱していますが、すでに呪詛は抜け健康状態だそうです。そして彼に聞くと、それは予想通りでした。おかしいと思ったんです。メールによる不幸の手紙の蓄積で、ああも深刻な状態になるかって。ブミヤはいわゆる呪詛を生業としています。彼が呪詛返しの耐性を持っていないはずがないんです。きっかけは確かにパ・ブミヤによるものです。しかし、その呪詛の不幸を増幅させたものがいます。そして、呪詛が色濃く残ったのはブミヤの方ではなく、虎子さんの方です。その犯人は虎子さんの近くにいる人物のはずです』
「誰か予想は立っているんだな? 誰なんだ?」
『……』
コムライスは固く口を閉ざした。アンも喋らない。ただ二人はこちらをしっかりと見据えている。三者の間に緊張の空気が流れる。
「……まさか黄木凛、つまり俺が犯人だって言うのか?」
『それを今から確かめます』
コムライスは淡々と、そして冷静な声で返す。
『凛さん、アンの口に手を突っ込んでください』
アンは、あー(〃´0`〃)ーん♡と口を開ける。
突っ込めと言われても、普通の思春期盛りの高校生ならまず入れない。思春期特有の恥ずかしさと美人局的な警告する本能がせめぎ合うからだ。
しかし、黄木凛(俺)は違った。
さて、ここで問題です。この時の黄木凛の気持ちを答えよ。(配点10点)
_______________
_______________
_______________ ← 自由に書いてね☆
『……状況が意味不明だとは思いますので、警戒するのは分かりますが、そんな問題を出されても突っ込んでもらいますよ』
さすがのコムライスも困惑の表情になったが、口調は変わらず冷然としていた。
「えー、そんなこと言わずに答えてよー。さすがにここで何も説明されず手を入れさせられるのは不条理でしょー?」
『……じゃあ、お答えしますが
『 』
……が答えですよね?』
「……よく分かったね」
絶対に言い得ないと思っていたが、それは彼女の答えは正解だった。
わざとらしく、大きなため息を吐く。
「当てられちゃったら仕方ないね、まったく。あーあ」
『あー、焦れったいので、もう食べちゃってください。アン』
「えっ今までの流れスルー?」
(((ぉそれじゃあ、失礼しますねぇ。ぃいただきまあぁすぅ)))
止める間もなく、黄木凛(俺)の手はアンの口にすっぽりと収まった。ヌルヌルとした粘膜が手全体を温める。アンの口内は肉厚な壁に包まれて、ファントムバイブレーションによる、振動が直接伝わってきた。
実はアンと出会った後、つまりブミヤのリア凸事件の後、ブミヤのことを調べるついでに検索エンジンにかけてみた。そうすると、アンの能力と酷似したマンホールが表示された。
『真実の口』。
偽りの心を持つ者の手を抜け出せなくさせる、というものだ。西洋の某国にある曰くつきのマンホールで、現代でいう嘘発見器として古くは親しまれていた。今では観光名所の一つとして教会の壁に飾られている。
「で、なんて質問するつもりなんだ?」
嘘発見器としての逸話を持つ彼女の能力はそのまま嘘を見分けることができる。口に手を入れた状態で質問され、手が抜けるかどうか確認することで判断される。
さて、何の質問をして、何の真偽を確かめるのか。
『質問はたった一つです。……「あなたは、人間ですか?」』
「……ん?」
予想していない、見当違いの質問だった。黄木凛(俺)は正真正銘の人間だ。もし人間として生まれてなかったとしても、「はい」と答えて嘘はない。なぜなら自分のことを人間だと思っているからだ。
『さぁ、手を引き抜いてください』
「……その質問でいいのか?」
この質問は尋ね方が悪い気がする。自分が人間でない存在だとしてもそれを見つけることはできない。そうとは思うが、頷くコムライスの表情は真剣そのものだ。
「黄木凛は人間です」
質問に答えて、手を勢いよく引き抜く。自分の手は、驚くほど簡単に抜けた。
「……え?」
しかし、アンの口はまだ手を咥えていた。それは黄木凛(俺)の手であり、黄木凛(俺)の手ではなかった。それは"影"の手だった。まるでアンの口に張り付いたかのように、影はそのままその場に留まっている。
『縺……縺ゅ=……!』
影は形にならない思念を無差別に振りまく。それは平面から立体に形を変えてその姿を現す。そして細かく彫りが出来る。
ドス黒い人型の、ナニカ。
自分の影ではない。髪が長く、輪郭線は女性特有の丸みを感じる。
『やはり、いましたね。観念してください!』
「こいつは……?」
『そいつは凛さんの中に隠れていた、疫病神です!』
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