第伍話『くぁwせdrftgyふじこlp…』

🎈特定しますた→パ・ブミヤ... 🎈特定はっやwwww 🎈有能 🎈マジ神 🎈特定班こわ 🎈「ぶみや」おぼえた 🎈スパム・ブロック安定 🎈祭りじゃぁああああ! 🎈らいすちゃぁぁぁぁん!


「いやはや、最近のいんたぁねっつは怖いね~。ちょっと顔が映っただけでこうなっちゃうんだから」

 放送を撤収した後、楽屋裏のようなノリで黄木凛の家に戻った。帰ってくるなりコムライスは『むきーっ(#゚皿゚)!』と憤りを露わにしている。自分の放送が邪魔されたのだから当たり前と言えば当たり前だ。しかも、損壊したレンタルした教室の修理代を自費で払わされ、収支計算がマイナスになったらしい。ただ、役所は情状酌量しゃくりょうの余地ありと判断したらしく、その借金返済期間は延長になったそうな。

 それに対比するように、黄木凛(俺)は都合が良かった。なぜなら、あの放送は紛れもなく「大成功」だったからだ。あの『リアとつ事件』のおかげで、初めてのネ申ネト配信であったのにも関わらず、視聴者に強く印象を付けることができた。さらには、現在の『ネ申かみネト』はそのことで話題が持ちきりで、自分の名が広まる形となった。ちなみに、その第一人者であるアンは食い入るように『つぃ~た』をして、存在が騒音振動規制法に引っかかりそうなほど震えていた。

 そのいんたぁねっつ上の反応を覗いていると、上記のような書き込みを見つけた。あの神は名乗らなかったが、いんたぁねっつの怖さを甘く見ていたようだ。まぁ、視聴者に『誰か調べ上げてほしい』というメッセージを込めて、黄木凛(俺)は名前を質問したのだが。


 書き込みから彼の詳細をまとめる。

 名前:パ・ブミヤ。スパムや荒らしを生業なりわいとする神。比較的近代に生まれたアヤカシの類で、出生は付喪神か呪物に近いと思われる。連鎖的に作り話を流布させて、それを寄り代に独自のネットワークを確立させている。活動場所はネ申ネトではなく、人間のサーバーに寄生しながら転々としている。情報収集能力に長けるが、その能力が周囲に左右されるので、反応しなければ基本無力の雑魚、まる。


『今度会ったらとっ捕まえて、凛さんが壊した分の修理代まで払わせてやりましょう!』

 その意見については全面的に賛成だ。調べは着いている。ネ申ネトにもいるらしいネットパトロールに捕まるのも時間の問題だろう。

『捕まえられなかったら、壊した分まできっちり働いてくださいね!』

 その意見には同意しかねる。


『あ、あと、凛さん。今後は私の放送を乗っ取ろうとするのはやめてください』

「え、なんで?」

『なんでって、えぇ……』


 そもそも、放送内容を事前に話してないのが悪い。ぶっつけ本番であの仕上がりならむしろ、ファインプレーと称賛してしかるべきだ。


『あの配信は神に現代の生き方を教えるとともに、信仰心を集めるためのものでもあるんです!』

「でも、あの配信って人間は来てないんじゃないの? そのつもりでやってたんだけど」

『そうですよ』

 コムライスは平然とそんなことを言う。


『私が信仰を貰っていたのは神からです。魂により近しい神からそれを集めることで、より効率的に還元かんげんできるんです。なので、あわよくば私の放送で再生数を稼いで、私の神通力を高めようと……』


 神から神に信仰を譲渡できるとは知らない情報だ。おそらく神の『信仰』とは、人間社会でいうところの通貨に近いのであろう。自分に対する信仰を誰かに譲渡じょうとするのは、神の倫理観的には大丈夫なのだろうか。それにしても、信仰と教育の一石二鳥の作戦だったとは、嘘を付けない性格のようでよく小賢いことを思いつくものだ。

 しかし、小賢しさについてなら黄木凛(俺)も負けていない。


「そういえば、コムさんに見て欲しいものがあるんだ」

『あっまだ話は途中ですよ!』

「まあまあ、すぐ終わるから」


 今日帰ってきた時から点きっぱなしのパソコンをいじり、動画ファイルを開く。プレイヤーが画面に映し出され、動画が再生される。そこには黄木凛(俺)がベッドで横になり、携帯電話を弄っている姿があった。

『なんですかこれ? ききりんさんの『●Recちゃんねる』ですか? つまんなさそうですね』

「これからすごーく面白くなるから」

『そうですか。……うーん、それにしても音が遠いですね』



動画プレイヤー(▶再生中)【


「……触らぬ……祟りなし、だな。うん」

「つまり、触ったら……られるわけだ……」

「ポチっとな」

 ……。

「……れてしまった。ウ…ルスに!」

『う、ウイ…スではありません!!』

「え」

『ここです、ここ!』

「そう言われましても。ちょっと出てきてくれませんか?」

『そう言われたって、出ようにも引っかっかって、出られなっ……!』

「んー、こういう時は警察……、いや、自分の頭の方で、救急車を……! あ、あーー! う、ウイルスで動かなくなったんだった~、しまっちゃったなぁああ~~」



『           』


                                     】



 コムライスはそこでピタッと石のように固まった。携帯電話から、見覚えのある魔法少女衣装と着物を足して二で割ったような服を着た少女が飛び出し、そして、見覚えのある展開が続く。動画が先に進むごとに、画面前のコムライスは全身に汗を滲ませる。その後も十分間ほど、セクハラ動画が流れ続けていく。


「人生初めての迷惑メールだったから、それを動画化しようと録画スイッチ入れてたんだけど、なんか面白そうなもの録れちゃってさ。これを●Recちゃんねるを流したらどうなるかな? 再生数どれだけ稼げるかなー?」


『あ、あなたは神を脅すと言うのですか?!』

「うん」

『お、鬼! 悪魔! ききりん! あなたに心があるなら今からでも遅くは……』

「HAHAHA」

『笑って誤魔化さないでください!』


 ああ、自分はどうしてこんなにも鬼畜の所業ができるのか。罪悪感の欠片もなく、心は全く痛まない。


『それに待ってください。これは私だけの問題では済みません。神全体の権威が失墜してしまいます! そ、それだけは絶対に……!』

「なるほど!」


 コムライスは心変わりを願ってそう言った。しかし、黄木凛(俺)にとってその言葉は千載一遇のチャンスに聞こえた。



「それってつまり、神様全員、俺のオモチャっていうことでいいんだよね?」



『KIKIRINをネ申ネトに引きずり込んだ。』その事の重要さにようやく気が付いたコムライスは、『くぁwせdrftgyふじこlp…』と言葉にすることができなかった。




【...残り12日】

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