第19話 試煉

‐ヴェルフレム宮殿内部‐


ティータニアに案内され宮殿の最深部「女王の間」へと連れられた俺とビチコは呆気にとられていた。この宮殿...デカいなんてもんじゃない...まるでこの世界全体がひとつの城なんじゃないかと思わせるくらい、あたり一面に連なる大きな建造物...。

そういえば、さっきこの世界を統治してるって言ってたっけ。


「大したもてなしもできんがまぁくつろげ。」


「いやいや、逆にこんなところで落ち着けるわけないじゃないですか!?!?」


庶民には不慣れな場所だ。落ち着けるわけないじゃないか。

ティータニアは小さく笑みを浮かべ、


「では、本題に入るとするかのぅ。」


一瞬にしてその場の空気が変わった。彼女はいま‘‘ティータニア‘‘から‘‘女王‘‘になったのだ。


「クソジジイから大体の話は聞いておるし、お主らも何も知らずに来たわけではないのであろう?」


「まぁ、大体のことは...。でも、まだ分からないことだらけだよ。」


「まず一つ。そこの女が使った魔法のことじゃが。あれはクソジジイが女を守るため、護石という物質情報に概念をもたせたものじゃ。その首に下げているラピスラズリの宝石が護石じゃな。状況に応じて様々な効果が発動するであろう。」


間髪入れずにティータニアは話し続ける。


「次に、小僧の力についてじゃが。...まだ自分の力に気付いておらぬようじゃの。」


なんだ...俺の力...?


「俺のことも何か知っているのか!?」


「知っているとも。じゃがそれは自分で気付くべき力...。ほかの誰でもないお主自身の力で見出すべき力じゃろう。」


俺自身...。なんのことだ?俺の力で見つけないと意味がないってことか?


「今自分に問い詰めてもわからんじゃろう。それよりも、お主は自らをどう認識しておる?ジジイからお主の過去も聞かせてもらった。お主はなぜここにおるんじゃ?女一人守れなかったお主に様々な世界で起きている混乱をどうにかできおるとは到底思えないのじゃが?」


「っ・・・!」


ティータニアの言うとおりだ...。俺は結局誰一人守れない。強くなりたい。大切な人をこの手で守る力がほしい。俺はそっとビチコのいる方へと視線をやった。


「良男様...。」


ビチコもこちらを見ていた。ほんの一瞬、ビチコが悲しそうな顔を浮かべたのを俺は見逃さなかった。そうだ、俺はこの子の笑顔を守りたい。泣いてほしくない。そう思うより先に、俺の口は言葉を発していた。


「ティータニア女王、俺はもっと強くなりたい。どうすればいい?」


「そうじゃな、妾が直々に鍛えてやらんでもな―――。」


「お願いします!!!!」


その言葉を待っていたかのようにティータニアは答えた。


「ふふ...妾の試煉についてこれるかのぅ。少しは楽しませてくれると期待しておるぞ。」

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