第18話 新たな
眩い謎の光に覆われ腕の中にいるビチコの感触のみしか感覚がないままうっすら瞳を開ける。
開けた視線には数多の世界を映している硝子の欠片達をすり抜けて良男たちは進んでいた。
(なんだ……?!これは……!!)
様々な世界。魔術が統治している世界もあれば前のビチコのようなアンドロイド達同士が争う世界。エルフ属達が過ごす世界…。様々な世界の中を覗き見る。そこに1つの欠片がビチコの前にくる。良男が欠片に触れようとしたときに虹色の光が眩く光った。
「ーーーっ?!!!!」
風の音が聞こえる。空気が薫る。良男は瞳を開け体を半分起こした。周りには何もなくただ不思議な木々と澄んだ空と自分を包み込む草原のみ。謎の光の中から出られたことを安堵すると同時に愛しの人を探す。愛しの人は腕の中で眠り姫のような美しい寝顔を良男に見せていた。
「ビチコ、起きて」
気持ちよさそうにしているところを起こすのは心苦しいが今はここがどこかを知らなくてはならないためビチコを揺すって起こす。
「……んっ…なんですかぁ…??」
ビチコは不機嫌そうな声を零し手を口に当て大きな欠伸をする。
「起きたか??」
「?!!!い…良男様!!」
顔を真っ赤にし良男を見つめるビチコ。それもそのはずだ。愛しの人の膝の上での起床だったのだから。
2人は立ち上がり、辺りを見渡した。人1人もいない所が変に不気味でビチコは良男の袖を持つ。
「ここはどこでしょう…。人の気配が全くないです…」
「ああ…。俺から離れるなよ、ビチコ」
少し前の彼には言えなかった言葉を良男は言い、片腕の中にビチコを抱く。
(おかしい…)
ビチコは人の気配がしないと言っていたが良男は違った。良男には人とは違う何かの気配をずっと感じている。
「誰じゃ、そこにおるのは!!」
凛とした声が2人の後ろから聞こえる。2人は後ろを振り返ると、そこには整った顔に亜麻色のウェーブのかかった髪、白く透き通った肌、翡翠の瞳、透明な翅(はね)に白い衣装を身に纏った少女が立っていた。
「き、君は?」
良男は少女に剣先を向け伝える。少女は鋭い瞳を動かさずに良男達を睨み続ける。
「妾はティータニア。この世界を統治する女王じゃ。貴様らはどうやらこの世界のものではない。立ち去れ。」
「え」
「早く立ち去るのじゃ!!!!おぞましき人間共め!!!!」
少女…ティータニアの掌から彼女の瞳と同じ色の翡翠の光の連弾を放つ。光弾は良男を貫こうとするところに
「良男様ーーっ!!!!!!」
ビチコは良男の腕の中から飛び出し、良男の前に両手を広げ光弾を受けようとする。
「ビチコー!!!!」
良男が叫ぶ。光弾がビチコを貫こうとした時にビチコの周りに魔法陣が浮かび上がった。その魔法陣が光り、ビチコ達を包み、光弾を飲み込む。
「行きなさい!!!」
ビチコが片手を前方に向け、飲み込んだ光をティータニアへ向ける。
「?!!!!」
爆音が響き、木々から驚いた鳥達が羽搏きながら逃げる。魔法陣が消え、両手を見るビチコ。
「ビ…ビチコ、今のは……」
状況を飲み込めていない良男。それと同時に飲み込めていないビチコ。
そんな2人の間を割くように風が通る。2人が爆音が起きた先を見ると風がティータニアを包み傷1つもついていない姿がそこにあった。
「あ、あいつ!自分のあの光弾を受けても傷1つも…!」
「良男様っ……」
絶望に打ちひしがれる2人にティータニアは口を開いた。
「妾の宮殿へこい」
「え」
「貴様らがクソジジイの元から来たのはその女の魔法陣から読み取った。妾の役目は貴様ら自身が自分たちの力を見つけることだということということもな」
涼やかな瞳が少しだけ緩んだのを良男たちは見逃さなかった。
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