第5話 リライフ (後編)


「おはようございます!主様♪」



俺は再びその言葉で目が覚めた。

同じようなことがさっきもあったような・・・


「あ、ああ おはよ。」


目覚めたばかりで頭がボーッとしているせいか、

少し気の抜けた感じで挨拶をした。


俺のことを主様と呼ぶこの女の子・・・

そうだ、【ロリゲーの巨塔 ぎゅっ❤としてあにたん!】の

"アイヴィス・チコ"だ!


『お前さんにサポートキャラをつけてやろう』


カミサマがこんなこと言ってたっけか・・・

そもそもサポートキャラってなんなのだろうか

もしかしてアッチのサポートもしてくれるのか!?


色々と妄想をふくらませている俺に痛い視線が突き刺さる。


じーっ・・・


なにやらアイヴィスがチラチラと頬を赤らめながら

俺の方に視線を送ってくる。

まるで今すぐにでも何かを言いたそうな顔だが、

どうやら言いにくそうに、モジモジとしている。


一体なんなのだろうか・・・


しかし、俺は自分の体にかぶさっていた毛布をめくった瞬間、

すぐにその答えは出た。


そう、俺は素っ裸だったのだ。ってなんでだあああああああ!


「きゃあああああああああああああ!」


鼓膜がぶち破れそうなくらいの大声でアイヴィスが叫ぶ。

そして周囲にあるものを手にとっては俺に投げつけながらさらに叫ぶ。


「主様のえっち!ヘンタイ!なんなんですかもう!!」


写真立てにノート、目覚まし時計まで飛んでくる。


「ちょ、ちょっと!ストップ!ストップ!!」


次々と俺に向かって飛んでくる物体を必死に避けながら俺は考えた。

恐らく今のアイヴィスには俺の言葉は届いていないだろう。

どうすればいい、俺は女の子の説得の仕方なんて皆無・・・


だって童貞だもん。恋愛経験ないもん。


アイヴィスの怒涛どとうの攻撃から逃げているうちに、

俺は家の扉をひらき外に出ていた。


「はあ、はあ・・・。」


そろそろ体力も限界だ。

だって俺、ただのオタクだもん。体力ないもん。


そんなとき、俺の目の前に干されている洗濯物があった。


「こ、これは・・・。」


俺の服だ!!!! そうだ、この服を着れば大丈夫だ!!

すぐさま干されている服を手に取ったはいいが、

まだ乾ききってないようで少し湿っている。


ええい、構うものか!俺は速攻で服を着た。

1秒で服を着た。自慢じゃないが俺は服を着るのがとても速い。


そして家の扉が開き、アイヴィスが出てくる。


なんと両手でフライパンを力強く握っているではないか。

おいおい、どんだけ俺を殴りたいんだよ。まるで痴漢でもしたかのような感じじゃないか。


素っ裸じゃなくなった俺を見てアイヴィスはキョトンと我に返った。





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




「・・・で、水浸しで倒れていた俺を介抱して服を洗濯したまではいいが、いきなり男性の裸体が目の前にあったもんで、つい暴走してしまった・・・ってこと?」


アイヴィスの言い分を聞いて、それを整理しつつ問いを投げかけた。


「は、はい・・・本当に申し訳ございません・・・。で、でも!誰だっていきなり目の前に裸の男の人が現れたら暴走しちゃうじゃないですか!仕方ないですよ!」


頬を真っ赤に染め上げ、目をそらすアイヴィスを見て

少しかわいいと思ってしまったが、

俺はすぐに冷静になり、言葉を返す。


「いやいや、仕方ないっていうか・・・好きで素っ裸になってたわけじゃないし、大体キミが脱がせたんだろ!!」


「う~、すいませんんんんんんん。」


そんなやり取りをしながら時間は過ぎ、窓から赤みがかった黄色の光が差してきた。


「もう夕方か・・・。」


普段なら仕事を終えて、家に着くまでの時間を音楽と共に過ごしている頃だ。

日付的にはまだたったの1日しか経っていないはずなのに、夕日を見るとなぜか色々と考えさせられる。


切ない気持ちはいつだって夕焼けが連れてくる。


「なあ、アイヴィス。いや、アイヴィスって長いからビチコって呼んでもいいかな?」


窓の外を見つめながら話しかける俺に、アイヴィスは俺の心境を察したのか、柔らかい口調で答えた。


「もう、あんまりかわいいあだ名じゃないけど・・・いいですよ♪」


チラッとビチコの顔を見てみると、ほんのり笑顔になっていたような気がした。



















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