第23話 警察②

 大体午後17時頃に、自分は柏駅西口の交番に立ち寄りました。

 毟られてから約半年間。やっと警察が介入する事になります。いくら何でも遅すぎですよね。なにせ当時の自分は何時でも奴らを打ち取れると驕っていたので、こんな浅はかな真似が出来たのです。


 交番に入って早々に警察の方に事情を話しました。

・9月頃に美人局により、小学校からの親友に騙された事。

・被害額が300万以上

・ヤクザの名前を使い、恐喝に近い事をされた事。

・職場に現れて脅迫をして来た事。

 これらを洗いざらい話しました。どれか一つでも犯罪として捜査してもらう為に、可能な限りオーバーに言いました。

 すると警察の方は「事件性が強いので2階で詳しく話して欲しいと」と言われ、2階に案内されました。

 この瞬間自分の脳裏には板熊、芝崎の両名が社会的に終わったと思い、ざまぁwwとずっと思ってました。

 その為、この時は終始にやけてました。あいつらに復讐も出来るし、金も返ってくる。そう信じて止まなかったのですから。

 にやけ面のまま、自分は2階に上がります。警察の方は真剣其の物なのに当の被害者がこれとは……我ながら情けない。


 2階は全体がベニヤ板で覆われており、そこには窓が1つ、ポスター数枚、大きめのテーブル1つとパイプ椅子が大体6個位ありました。ベニヤ板に眼を瞑ればドラマでよく見る取り締まり室の様な孤立感がありましたね。そのせいか、自分が犯罪者になった気分に陥りました。俺被害者なんだけど……

 ちなみにエアコンが無く、警察の方が下から石油ストーブを1個持ってきて、それで暖を取ってました。2月後半にこれは心底えぐいと思います。

 そんなえげつない環境でも自分は変わらず、包み隠さず、ややオーバーに事情を警察の方に話しました。

 警察の方は逐一メモを取り、真剣に聞いていましたが、話が終わった途端、険しい表情になりました。

 そして話を聞いていた警察の方は「少々お待ちください」といって徐に立ち上がり、その場を去っていきました。取り締まり室の様な閉鎖的な場所でおまけに酷く寒い時に自分は1人取り残されました。さみしい……


 数分後警察の方が戻ってきました。変わらず表情は険しかったです。そして第一声に思いもよらない事を言われました。

 それは「検挙は恐らく出来ない」という想像したくもない事です。

 当然自分は納得行きません。何故ですか? と反論します。

 警察の方は順々に話してくれました。理由は主に三つです


1 事件発生から日が立ちすぎており、第三者からの目撃証言が取れる見込みがない。その為決定的証拠が乏しい。

2 ホテルにせよ、駅前にせよ、同じく事件発生から日が立ちすぎており、防犯カメラが録画した映像が無い可能性が高い。仮にあっても画質は大きく劣化していて証拠になり得るか不明。

3 上の理由があり、捜査令状が出せる見込みが薄い。その為強硬手段も出ずらい。


 以上が理由でした。つまり事件には『鮮度』があるのです。以前にも話しましたが、防犯カメラは毎日作動しており、全てが全てを保存しているとは限らないのです。更に言えば録画された物も画質が非常に荒く(ほぼ砂嵐も当然)証拠として機能するのは難しいそうです。

 加えて今まで人目の入らない所でお金を支払って来たので、確定的な証拠が無いのです。ここに来て奴らにしてやられた訳です。そして捜査令状や家宅捜査というのはおいそれと行えず、確信があってこそ上から受理される物らしいです。これはプライバシー保護法と家宅捜査を悪用されない為の警察側の処置らしいですが、こっちからしてみればたまったもんじゃない。

 当時の自分は話をすべて聞き終わった時、頭の中が真っ白になりましたね。元より金が返ってくるとも思ってましたし、最悪金は帰らなくても逮捕は確実だと確信していたので、この全否定にはまいりました。

 しばらく放心していると他の警察の方が現れて「やっぱり防犯カメラ残ってないです」と追い打ちをかけて来ました。ひでぇ……

 しかし今だから分かります。自分にも落ち度があったのです。

 詐欺だと分かったら、直に警察に頼るべきでした。だって詐欺を受けている間、奴らからこっちに接触して来たのですから。奴らから証拠を吐き出していたに違いない。なのに自分はわざわざ電話対応して奴らを逃したのですから……悔しいし、認めたくないけど自業自得と言わざるを得ないのです……

 結局警察の方には捜査を依頼しましたが、確実な証拠がつかめず、検挙には至りませんでした。

 そう、奴らはまだこの社会で何の罰も受けず、のうのうと暮らしているのです。もうそれが本当に許せない。

 これで今の自分より社会的な地位があり、幸せな暮らしをして様ものなら、自分は道を踏み外しかねない程の怒りに包まれると思います。


 そしてそれは当時の自分も同じです。奴らに何としても復讐したい。そう思い、行動に移します。

 が、当時の自分は若いし無知すぎました。何の効果もない、ネタクラスの行動しか出来ませんでした……

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