最終章 結果私は歪んだ

第22話 警察①

 前回も話しましたが、私は直に警察には行かないで、平凡な日常を楽しんでいました。ですが、平和が続けば続くほど、あの金が惜しくなっていきました。

 毎月の返済の時なんて正にそう。月が立つことに、なんでこんなの払わなきゃいけないんだって気になっていきました。

 食生活でも同じです。返済に回す為、贅沢は出来ませんでした。たまに行く飲み屋でも値段的に食べたくても食べれないメニューとかがあると「あの金があれば……」なんて思ってしまい、満足に酔えなかったです。

 多分人間の欲の本質なんでしょう。毟られた時は平穏な日々さえ戻ればいいと思っていたのに、戻った途端に今まで躊躇いなく支払った額が惜しくなっていく。そして次第に支払った相手である板熊達に対して怒りがメラメラと湧き上がってくる。月が立つことに増幅していきましたね。

 ですが、大きく出れない。奴らに書かされた誓約書がリミッターになっていました。

 しかしある発見をした時、そいつが外れます。

 きっかけはSNSのMixiミクシィでした。当時はガラケーなのもあり、ツイッターもラインもやっておらず、SNSはミクシィのみでした。

 無論、板熊や芝崎のアカウントも把握していましたが、実はこいつら、所謂サブ垢をこっそり作っていたんです。勿論毟られていた時は知りませんでした。なにせ中学校時代の別の友人のアカウントから見つけたので。

 ちなみに笑える事に自分の知ってるアカウントにはネット初心者丸出しの本名+住所+素顔掲載の馬鹿丸出し垢でしたが、サブ垢は本名を伏せ、住所も乗せず、写真も顔が映らない様に角度を工夫した物かサングラスを掛けた物しかなかったです。

 おまけに自己紹介で『誰からも頼りにされて、誰もを愛せる偉大な男になりたい』とか『小説を読んでいる時、あたかも自分が旅をして、人を幸せにしているみたいになれる。自分もそんな人生を歩みたい』とか聖人ぶって知的人ぶってて爆笑しましたね。似合わない以前に自分から踏み外しといてそれ言う?

 そして問題はここからです。自分はある予感をして、そのアカウントの友達リストを確認すると予想通り、ある物がありました。

 それは自分を騙した美人局女のアカウント。エクステ女のアカウントでした。

 どこにでも居そうな田舎の馬鹿女面ですが、経験が経験だけに、絶対に忘れない顔です。

 そして顔で分かったと言う事は、お気づきの方もいるかも知れませんが、はい。こいつもネット初心者丸出しの本名+住所+素顔の役満揃いでした。

 おまけに生年月日と在籍、卒業校まで乗せるおまけ付き。トリプル役満ですね。

 そして肝心の生年月日と卒業校。乗ってましたきっちり。平成3年に生を受け、平成21年高校卒業の文字が。つまり未成年ではなかったのです。

 更に大学生でしたが、在籍大学は板熊の通っていた大学と同じ。横のつながりも判明しました。

 

 恐れはなくなりました。分かったと同時に、自分は警察に攻め込む事に決意しました。

 正し直には行きませんでした。決意はあっても中々踏み込まず「今日は疲れてるからパス」とか「今日は寒いからパス」など下らない理由で行きませんでした。いざ行った日に至っては、これといった準備もせず、よりにもよってパチスロで負けてお金も無くなり、イライラして、金が欲しくなったから警察に寄る。という自分でもやる気を疑う代物です。おまけに被害を受けたのが八柱なのに、立ち寄った交番も柏駅西口前とか、我ながらお粗末すぎるチョイス。


 ちなみに立ち寄ったのは2012年2月21日。詐欺発覚から三か月以上、詐欺を受けてからはおよそ半年近く立ってからです。

 酷い有様です。そして酷い対応には酷い結果で返ってくるのが、世の常でした……


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