第19話誓約書

 前回の話で言い忘れていましたが、口止め料も含めた支払い額。実は70万も支払いました。

 なんでこんな大金支払ったかと言うと、本当にこれっきりにしたかったからです。そしてなんでこんな大金があるかと言うと、実は親から借りた100万で消費者金融の借金を返済しましたが、契約は解除してなかったのです。

 実は消費者金融は返済が終わっても、契約は継続可能なのです。勿論継続という形なので、利用できる額も、契約した額になります。

 正し、返済時に契約を続行したのは、金利が一番少なかったモビット一社のみです。つまり20万しかありません。

 ですが、三社分の合計約100万を自分は返済しました。その為、以前話した『個人信用情報』において、自分は短期間で100万を返済した人間として記憶されます。

 するとどうなるか? 個人信用情報という名だけあって、自分は消費者金融の人間から『100万なら返せる能力と返済を行う信用性がある人間』として見られるのです。いわばスッゲークリーンなリッチメンだから貸せば儲かると思われたのです。

 その為限度額も90万まで借りれました。当時は試さなかったですが、あくまでも90万は一社から借りれる限度いっぱいで、また多重債務の地獄に落ちたいなら他社から10万は恐らく借りれたと思います。

 ちなみに自分の好きなテレビ番組の『しくじり先生』で自分の大好きな芸人のカンニング竹山さんも同じ様なテツを踏んでいた事が分かりましたが、正直乾いた笑いが出ました……


 脱線しましたが、ともあれ、借りた90万から70万もの大金を渡し、これっきりにしようとしました。

 渡すときに脅しもかけてやりました。今度職場に来たら警察を呼ぶとか、これ以上ヤクザ共がたかりに来ても自分は何もしない、等々を言ってやりました。

 奴らはその場だけは声を明るくして笑顔で「もちろんだよ」とか「もう迷惑はかけない。約束する」とか調子の良い事をほざいてましたがね。現金な奴らです。腹立つ。

  ともあれ、また大金を奴らに渡してしまった自分。そしてやっぱり、奴らは口だけでした……



 一か月後。結局奴らは証拠にもなく、また職場にやってきました。しかも腹立つ事に、自分が怒れない事を言い事に、「ヤクザ共もこの場所ばれてるからヤバイ」とか「ヤクザが和大雄の住所も家族の職場も洗われたからヤバイ」とか言ってきました。もう完全な恐喝です。自分の家族すら脅すとか、もう完全に犯罪者のそれですね。

 頭に来ます。腹が立ちます。しかし、職場だから言い返せない。結局屈してしまいました……実は、恥ずかしい話ですが、この話に自分はマジにブルッてしまったのです。そして変に支払いまでの期間が空いてて、娑婆への未練と言うか……以前覚悟した、警察に落ちてでも戦う姿勢が欠けていたのです……情けない。


 そして奴らは完全に調子に乗ってました。今回の支払い要求額は何と50万。以前までセーフしてたのが、完全にリミッターが外れている額です。恐らく消費者金融同様、支払い能力を信用して、この額をほざいて来たんだと思います。いい迷惑ですよ。

 もちろん払いたくないですが、当時の軟弱な状態では、戦う気も起きず、支払う事を約束してしまいました……


 ですが、支払うにしても、金が無いです。給料日後に来たので、自分で用意出来る額10万とモビットの20万の合計30万が限度でした。

 そこで自分はまた親に頼ってしまうのです……情けなさすぎて、首吊りたくなる……


 親には本当の事を言えず、「車を自転車でぶつけてしまい、支払わないといけない」というオレオレ詐欺みたいな言い訳で頼みました。

 しかし、親はオレオレ詐欺には引っかからないボケていない大人でした。車なら当然保険が効くので、そんな支払いが法無しで発生はしない事、請求書が無いのに明確な額を請求するのはおかしい、などと至極真っ当かつ的確に嘘を暴きました。

 そして嘘と分かると、親は心配を感じて、問いただそうとしてくれました。お陰様でゲロする事になります。

 ゲロといっても以前借りた100万をまた借りた事と自分が強姦罪に適用されるかも知れない事は伏せました。甘えの極みです。正し、板熊、芝崎の両名の名前とヤクザ絡みの話はちゃんと話しました。

 親は当然「警察に行こう」と言ってくれましたが、捕まる可能性が怖くて、それは止めようと、必死に説得しました。(説得の時の言い訳はヤクザの報復が危ないから止めようという物)

 説得が通り、親は警察に行くことを止め、20万を貸してくれるように約束してくれました。

 正し、借りる条件として、板熊達が、支払っているヤクザ達から今後一切支払わない事を約束する『誓約書』を直筆で書いて、持ってくることが条件でした。

 以前自分がヤクザ達に要求された誓約書。今回は自分達が要求する形になります。

 最初は、書いて貰えるのか? と思い、書いて貰えないだろうと言いました。しかし親は賢い大人でした。先に話した通り、自分は誓約書を書いた事を親に話しました。そして親はその事を踏まえた上で書いて貰えると言いました。

 理由は二つ。1つは誓約書を要求して、それを片方(安否の保証)が守っていないのは誓約書としての効力が無いから、逆に書いた誓約書がやくざ達に対してマイナスになっているし仮に誓約書が既に無くなっていたなら、支払う義務が無い事。

 もう1つは、誓約書を書かせたという事は、相手も穏便に物事を進めたい証拠。警察の介入が望ましくない事になるから、引き際(この場合、多分毟る相手が今までの自分の様なバカではなく、真面な相手になった)だとわかる。という理由でした。

 当時の自分はよく分かってなかったですが、金が入るならそれでいいと思い、それを承知します。

 そして後日、親に言われた通り、板熊達に「お金は用意したが、誓約書を書いて持ってこないと支払わない」と電話で報告しました。

 板熊達もそれを了承し、電話はスムーズに終わりました。


 先に言ってしまいますが、50万も支払いました……ですが、これが最後の毟られです。

 そして誓約書、これこそ大バカ者の自分でも、今まで騙された。と一発で分かる、証拠。キング・オブ・証拠でした。

 更に、この誓約書という課題に対して板熊達が行った行為。この行為は正に、実は板熊達も世間知らずの大バカ者だと分かる愚行だったのです。 

 

 

 

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