二章 毟られるのが終わるまで

第18話 暴挙

 金を払うと言ってから3日後、自分はいつも通り仕事をしていました。

 その間、奴らからの連絡は一切無視。電話もメールも折り返さないで、シカト決め込んでました。家の付近で張り込みもしてなかったので、懲りたんだと思ってました。

 しかしこの日奴らはとんでもない事を仕掛けてきました。言うなれば『実力行使』とでも言うのでしょうか? 信頼を持って、お金を支払わせるやり方を変えてきたのです。



 パチンコ店で勤務をこなし、時刻は21時頃。お客様は数十名程度になり、忙しい時間帯が過ぎ、接客しつつ、片づけをこなしている時でした。勤務をこなす自分の肩を誰かが、ポンポンと叩いてきました。

 それに反応し、後ろを振り向くとあろうことか、それは板熊でした。


「よう」


 こんな気の抜けた返事を奴はいきなりしてきました。


「何? なんで職場にいんの?」


 かなり嫌そうな感じを表す様にした声で、問いかけました。


「いやさ、お金支払うって言ってたのに連絡なかったからさ、話を聞こうと思って」


 板熊は特に悪びれる事もなく、いけしゃあしゃあと自分勝手な事をほざいてきました。

 これは本当に参りました。よりにもよって職場に乗り込んで来るなんて、想像してなかったからです。

 しかも周りにはお客様もいる。ここで板熊が金銭的な話せよ、ヤクザの話にせよ、そういう話を振ること自体が迷惑でした。先のお金を借りようとした一件以来、自分は職場の人から金に対して見境がないと思われています。そんな中でその手の話を職場で話して、悪い噂が立ったら、最悪退職だってあり得ます。だからこそ、職場には来ないで欲しかったのに、板熊は来たのです。これではヤクザの借金取りと変わりません。

 当然ながら強く反論なんて出来ません。噂を立つだけでもこっちにはデメリットしか見えない。早く話を切ろうとするが、板熊は此方が払うと言わせるまで引く気配もない。

 こうなるともう誘導尋問ですよ。さっさと話を切って、仕事に戻りたい。でも払うと言わせるまで相手が離れない。面と向かって話をしてるだけでも、こっちは迷惑なので、長期戦も出来ない。ならどうするか? 答えは簡単です。払うと言うしかないのですから……


 話自体は2分程度で済みました。比較的スムーズに話は進みました。しかし自分はこの一件で板熊に対して、明確な『怒り』を抱きました。自分の生活を脅かす行為です。怒ら無いわけには行かなかったでする


 しかし、仕事終わりに、板熊と再会しましたが、結局自分はお金を支払ってしまいました。口止め料の意味もあって、支払わざるを得ないでした。悔しかったです。明確な怒りがあるからこそ、屈した形になったのが、本当に悔しかったです。

 ですが、これで終わりではありません。この一件は言うなれば分岐点でした。毟られ続けるか、それとも動くか。その選択に対して自分で考え、自分で決定する為の理由としては十二分だったのです。

 

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