その後、残っている人、出てきた人など(『作家の値うち』を読む)

 この本は2000年4月に発売された。

 その後、約16年経ってかなり出版界の様子も変わっているので、どう変わったのか書いてみたい。

 取り上げられている100人全員についてどうなったか書くことは自分の能力では不可能なので、あくまでもわかる範囲、自分の興味のある範囲内である。

 純文学の方はよくわからないので、主にエンターテイメント編について、取り上げられている作家がその後どうなったか、知っている作家についてのみ書く。それと、この本には出ていないがその後売れ出した人にどんな人がいるのかについてもかなり売れている人についてのみ書く。

 まず、亡くなられた方が井上ひさし、宮尾登美子、山崎豊子、渡辺淳一、栗本薫の

5名。

 他にもいるかもしれないが、目次の作家名が並んでいる表を見て目についたのはこの5人だ。

 宮尾登美子、山崎豊子、渡辺淳一は亡くなられた後でも、今のところ本屋から著書が消えていないが、井上ひさしと栗本薫の本は見かけなくなった。井上ひさしの本は新刊書店にはあるがブックオフにはほとんどない。栗本薫はその逆。どうしてそういう違いが出てくるのか興味深いが、ちゃんと調べるのは難しいと思う。

 私がすぐに気がつく、順調に有力な作家として生き残っている人は、桐野夏生・宮部みゆき・林真理子・浅田次郎・東野圭吾の5人。

 林真理子はちょうどこの本が発売された頃に46歳で直木賞選考委員になった。黒岩重吾・田辺聖子といった20歳以上年上の人と並んで選考にたずさわっていたのだから、直木賞の選考委員としては非常に若かった。

 桐野・宮部・浅田・東野もその後選考委員になる。この5人は、現在本屋に行って文庫本の棚を見るとたくさんの本が並んでいる人気作家だ。

 本書に出ていない人で、その後デビューしたり売れ始めたりした人を見ていく。

 まず浮かぶのが佐伯泰英。ちょうど2000年頃に時代小説に転向してから売れ出して、現在では月間佐伯泰英と呼ばれることもある売れっ子量産作家だ。

 それから、3I(スリー・アイ)という言葉があるかどうか知らないが、伊坂幸太郎・石田衣良・池井戸潤の頭文字Iの3人。3人とも最近非常に売れているが、2000年当時は、3人とも新人賞を取って間もない、まだ駆け出しの新人作家だった。

 2000年当時というのは、森博嗣にとってはメフィスト賞をとってから5年くらいして量産体制に入った頃である。その後も順調に出版点数を増やし、人気作家になった。最近はあまり書いていないようだが。

 重松清は2000年度の下半期に直木賞をとり、2000年代に多くの作品を発表している。

 堂場瞬一は、ちょうど2000年にスバル新人賞でデビューした人だが、今では著書100冊以上、本屋に行ってもたくさんの本が置いてある。

 村上由佳の本も、最近では本屋に行くとたくさん置いてあるが、2000年当時は、直木賞をとる前でまだあまり売れていなかった。

 こうしてみると、もちろん司馬遼太郎や松本清張の本が本屋にたくさん置いてあることなど、変わっていないこともいくつかあるのだが、約16年経ちいろいろな変化が起きている

 福田氏には、是非ともこの本の改訂版を書いてもらいたいし、他の文芸評論家にも似たような本を書いてもらいたいと思う。

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