歴史もの及び時代もの、載っている人いない人(『作家の値うち』を読む)

 前回に続き、「『作家の値うち』ではどんな作家が取り上げられていないのか」を見ていくが、今回は「どんな作家が取り上げられているのか」についても見ていく。

 今回は歴史作家・時代作家について考える。

 まず、本書に載っているいわゆる歴史作家・時代作家を書き出してみる。ここで取り上げるのは、歴史ものや時代ものも書くと言うのではなく歴史ものあるいは時代ものを中心に書いている作家である。

 調べてみると、池宮彰一郎・佐藤賢一・津本陽・藤本ひとみ・宮尾登美子・宮城谷昌光・佐藤亜紀の7人だった。 

 宮尾登美子は大正・昭和初期の頃の話に代表作が多いが、もちろんその時代も現代とは言えないので歴史作家に入れることにした。

 それと、本書は田中秀樹も取り上げている。ただし田中秀樹は、中国歴史小説の方にもいい作品が多いが、『銀河英雄伝説』や『創竜伝』シリーズなど歴史小説以外のイメージが強いので歴史作家の仲間には入れなかった。

 上記の顔ぶれを見てまず気がつくのは、全員エンターテイメント作家であることだ。やはり、「時代物か歴史ものの純文学ばかり書いている人」というのはいないとは言い切れないかもしれないがかなり珍しいのだろう。

 そして、一平二太郎と呼ばれる司馬遼太郎・池波正太郎・藤沢周平の3巨頭が入っていないことである。

 この3人はいずれも1990年代に亡くなり2000年当時には故人である。だから現役作家という基準で見れば載せることはできない。

 ただし、本屋に行けばこの3人の書いた本は2000年当時も今もたくさん置いてあり、2000年当時で考えると(現在もそうかもしれない)上に上げた6人よりも人気がありそうだ。

 この事実及び『作家の値打ち』のブック・ガイドという性質から考えると、現役作家という基準が疑問のような気もする。

 それと、塩野七生が入っていない。塩野七生は2000年当時、ルネサンスものは書き終えて、『ローマ人の物語』も全巻の半分以上書いていた。同じく西洋ものを書いていた藤本ひとみや佐藤亜紀よりは売れていたような気がする。

 なお、現在ものすごく売れている佐伯泰英はこの本が書かれた頃はまだ時代小説を書き始めたばかりで今日のような時代ものの量産作家ではなかった。

 ざっと見てきたが、やはり司馬遼太郎・池波正太郎・藤沢周平の3巨頭が入っていないのが一番考えさせられた点である。作家のその時点における執筆状況等よりも作品の売れ具合等を基準にして現役かどうか決めるやり方の方が、ブック・ガイドという本の性質に合うのではないかと思った。

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