第16話 旅の目的

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名前 :グリム(『ウルドの呪い』)

種族 :アニマン

クラス:ダークメイジ

Lv :8/60

HP :50/50

Stm:70(100%)

MP :65

神具 :『ステータス巻物』『翁の事典』

装備 :『翁に貰ったローブ』


パッシブスキル:

『マナマネジメントLv2』『リリーブヘイトLv1』

『ダークフォースマスタリLv1』


アクティブスキル:

『テレキネシスLv2』『ホーリーアローLv1』『HPポワード』

『デボートキュアLv2』『オーバーヒールLv1』


ポテンシャルスキル:

『翁のガイドライン』『秘められた魔術師の才能』『聖母の手』

『デュアルプレイ』『アナライズサイト』『黒魔術の才能』


称号:

『異世界から来た男』『ウルド最後の希望』『小さな救世主』

『借金ベイビー』『癒者』『レッドライカン討伐者』

『逃げる男』『魔道に入る者』

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〈ダークフォースマスタリ〉

・黒魔術の効果が上がる。


〈オーバーヒール〉

・治癒能力を過剰に亢進させ、損傷を与える。

・アンデット系の魔物には特に効果が大きい。


 ぶるっと、グリムは身震いした。

 文字で見るだけでも恐ろしい。『オーバーヒール』からの『デボートキュア』のコンボは、人間に使っちゃいけないな、と思った。レッドライカン・レヴァナントに与えたダメージほどではないにしろ、それに近いようなことが起きるに違いない。


 そう思って『翁の事典』を閉じる。

 俺と愛馬のパトラッシュは、次の町に向かっていた。今は休憩中である。

 ハンを追い出された後、真っ暗闇の中を歩いて駅宿に辿り着き、その日その宿の馬小屋で一泊した(夜中の旅人を気味悪がって、宿の主人が部屋に入れなかったのだ)。

 そこからは、村を一つ、駅宿を一つ経由して、今に至る。

 ハンを出てから三日が経っていた。


 小さな山を抜けると町があり、今はその山の入り口である。

 ゆるい傾斜の道で、傍らに小川が流れ、今は、石の上に腰を掛けて、足を川の中に投げ出している。パトラッシュも、水浴びをしてご機嫌だ。


『おぉ、やっとるかねぇー』


 何の前触れもなく、翁の声が聞こえてきた。

 まるで、気紛れで授業に顔を出してきた校長のようである。


「爺さん、あの、一つはっきりさせたいことがあるんだけど」

『なんじゃね?』

「どうして俺を召喚したんですか?」

『うん? あれ、言っとらんかったっけ?』

「言ってねぇーよ!」


 このボケ老人が!

 こっちがどれだけ体張ってると思ってるんだ。


『すまんすまん、うっかりしとった』

「おい」

『勿論、ちゃんとした理由がある』


 当然そうだろう。

 ただの気紛れで召喚しました、とかだったら本当に救いがない。俺だって、その目的によっては頑張ろうと思っているんだ。


「で、目的は何なんですか」

『うむ、それがな……そのぉ……』

「言ってください。今更多少無茶、望むところです」

『そのなぁ……お、怒らない?』

「ガキか! 早く言ってください」

『なぜ、召喚したか……忘れてしもうたんじゃ』


 想像の斜め上だ!

 忘れたって何!? そんな大事なことを?

 マジでボケてるんじゃないのか、この老人は! 物忘れで済まされるようなことじゃないぞ。というか、俺の人生なんだと思ってるの?


「え、どういうこと?」

『わしにもわけがわからんのじゃ。だがのぉ、忘れてしもうたもんは、仕方ないじゃろ?』

「いやいや、仕方あるよ! え、じゃあ俺はこれからどうすればいいの?」

『わからん!』


 わかれよぉー!

 頭を抱えてしまう。本当に、俺は何しにここに来たんだよ。


『わからんが、これだけは確かなことがある』

「何ですか……」

『お主がここに来たのには、意味がある!』

「そりゃあそうでしょうねぇ!」

『わしは何のためにお主を召喚したんじゃ!』

「こっちが聞きたいわ!」


 ほら、パトラッシュが不思議そうにこっち見てるだろ。


「せめて地図を下さい……」

『地図ならもう渡したじゃろ?』

「だからね、俺ここの文字分からないんですよ。言葉も。だから、翻訳したものを下さい」

『なんと! そうか、わしはお主に〈言葉の祝福〉を与えておらんかったか……』

「えぇ、その祝福はいただいておりません」

『なぜなのかのぉ……ここに招き入れた者には必ずそれを与えておるのじゃが』

「今からは貰えないんですか?」

『難しいのぉ……そうする方法もあったように思うんじゃが……』


 翁が、どんどんボケキャラになってゆく。

 大丈夫なのだろうか。いや、大丈夫じゃない。主に俺が。

 どうすんの、これ。


「大きな理由があるんですね?」

『ある』

「わかりました……まぁ、魔王を倒す、とかでしょう?」

『どうじゃったかのぉ……。いやしかし、魔王関係は女神の領分じゃから』

「女神いるんですか!?」

『うむ』

「チェンジ!」

『馬鹿者。お主の召喚者はわしじゃ』

「だって、わからないんでしょ? 目的」

『……グリムよ』

「な、何ですか?」

『真面目な話をして良いじゃろうか?』

「俺ふざけてないから……」

『何となくじゃがの、お主は、わしが呼べる最後の召喚者じゃったかもしれん。そんな気がするのじゃ。これまで多くをこの地に召喚してきたが、ことごとく目的を達成できず、死んでいった。この地を抜け出せずにのぉ……』

「それは、ウルドとかいう遺跡の人が言っていた、バザック領? を出るとかでないとか、そういう話ですか?」

『うむ、そうじゃ、ウルド領じゃ。ウルド領を出れば、道が開かれるかもしれん。地図の翻訳はそうじゃな……お主が次に出会う強敵を倒したとき、得られるようにしよう』


(『翁の地図の約束』の加護を得ました)


 なんとざっくりな約束なんだろう。

 強敵――なぜ雑魚敵にしてくれなかったのかわからない。理由があるのか、それともただ気が回らなかっただけか。


 翁の声が消えて、俺はため息を禁じえなかった。

 とりあえずの目的は、ウルド領を出る事になった。だが地図がなければ、その肝心のウルド領が、どの範囲を指しているのかわからない。そして地図を得るには、強敵と戦う必要がある。


(「やっぱり、とりあえず町だな」)


 町に行って、またその町の冒険者ギルドでクエストを受ければ、きっと強敵と出会うことだろう。報酬の良いクエストなら、十中八九強敵が出るはずだ。


 全く、向こうでもこっちでも、楽はできないものだなぁとグリムは思った。

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