第30話:描写を省く(2)

 主人公の描写を省くという実験を数作で行ったのですが、その中でも絶対に省かないようにしようとしたものあります。


 それは――


 「ヒロインの描写」


 ――です。


 もちろん、描写量はマチマチですが、これは必要な描写だと考えています。

 なぜなら、主人公は自分を重ねることが多いため、あまり描写はいらないのかもしれません。

 しかし、ヒロインは主人公(自分)が見ている物になるので、どんな相手なのか知る必要があるのでしょう。


 ただし、私の話は主人公が男性だから、男性視点となります。

 主人公を重ねにくい女性は、主人公をどう見ているのでしょうか。

 理想の男性像とかに重ねるとか、もしくは「描写してねーな。でも、まあこんなもんか」としてみられているか。


 ともかく、「削れる描写」を削ってしまうことで、地の文を減らして、さらに自由に読者の想像を任すという方法もあるわけです。


 しかし、これは昔からあった手法だと想います。


 たとえば、「彼は墓の前で、しゃがみ込んで手を合わせていた」と書いたら、日本人ならば「墓」と言われてでてくるのは、名前が彫ってあるような墓石と、お供え物やお線香の煙、菊の花などでしょう。


 これはつまり、共通認識を使って描写を補完するやり方なので、実は牛丼小説と考え方は一緒です。

 ただ、牛丼小説の場合、略されているのは描写と言うより設定という大胆さになります。


 また、海外の人が読んだら「墓」は別の形がでてくる可能性があるため、その場合はイメージの不一致が起こるでしょう。

 これも牛丼小説と一緒といえば一緒です。


 描写を削るには、ファーストフード化する時と同じように、対象者を絞り込みながら書かないといけないわけです。

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