第27話:牛丼小説(ファーストフード化現象)

 なろうなどで、いくつも似たようなテーマで展開される話をたくさん見ます。

 異世界、転生、チート、人生やり直し……。

 どこかで見た話、どこかで見た設定。

 中にはうんざりしている方もいるかもしれません。

 でも、よく見ていると一つの現象がわかります。


 あの手の話を読んでいる読者には、だふん共通の「前提条件」ができあがっているのではないでしょうか。

 もっと簡単に言えば、「お約束」です。


「異世界? ああ、こういうものだよね」


「転生? ああ、あるある」


「チート? はいはい。ずると言うより能力の事ね」


 普通、小説は物語を進めながら、少しずつ前提条件などを説明していき、そこからドーンとイベントが発生したりします。


 前菜から始まり、メインディッシュにたどりつくフルコース的なものです。


 しかし、最近のアクセス数を稼いでいる話は違います。

 いきなりメインディッシュが、ドーンとでてくる感じです。

 もちろん、今までの小説でもメインディッシュをドーンと最初にだすことはあったかもしれませんが、その後にシェフがいろいろと詳しく解説してくれたりするものです。


 しかし、その手の話は詳しいことを説明する必要がない。

 細かい前提条件は、読者任せ。


 ヘイ、お待ち!

 食い方? 味? もうわかってんだろう?

 あとは好きに食ってくれ!


 私はこれを「牛丼小説」と呼んでいます。

 そしてこの流れを「ファーストフード化現象」と呼んでいます。


 フルコースでちまちまと食べてなんていられない。

 もっと、気軽に、ちゃちゃっと食べたい。

 説明がいらないのが楽でいい。

 スープもサラダもいらないから、肉もってこい、肉!


 主人公が突然、異世界に飛ばされてすごい力でドーンと活躍。

 スカッと爽やかコカコーラ。

 読みたいところだけをピックアップ。


 まさにライト時代の象徴です。


 ただ、こればかり喰っていると、腹がもたれます。

 肉、肉、肉は飽きてきますね。


 でも、たまに読んだり、時間がない時に読みたい時にはちょうど良いのかもしれません。


 正直、私はストーリーものでこれをやられると、面白いとは思えません。

 どうしても受け入れられず、「ああ、私の感性はもう今のラノベには合わないのかもしれない」と愕然としました。


 しかし、一方でストーリーものではなく、雰囲気を楽しむ物ならありだと感じられるようになりました。


 たとえば、異世界でのほほーんと暮らす話。

 そこに細かい設定は野暮に感じることもあります。

 雰囲気を大事にして欲しい時もあるのです。


 フルコースか、ファーストフードか。


 書く時には、どちらかに傾くことになりますが、Webラノベはファーストフードよりにならないと受け入れられにくいところがあります。


 ただ、さじ加減はできます。

 同じハンバーガーでも、マクドナルドかモスバーガーか。

 牛丼だけなのか定食にするのか。


 書く前に、「どこまで書くのか」ということを考える必要があるのかもしれません。

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