赤いスライムはぴりりと辛い

スライムべス

追い剥ぎくらい簡単だと思っていた時期が僕にもありました(爆笑)

当ブログを閲覧頂き誠にありがとうございます。まずは自己紹介からでしょうか。


私はスライムべスです。普通のスライムと違い、赤い身体をしています。スライムべスってことは魔物です。主な仕事は追い剥ぎ、人間共の村の襲撃、勇者の討伐です。この春ようやく成体になり、これらの仕事に就くこととなりました。草むらで会ったら気軽に声を掛けてください。

噂によると勇者は海を挟んだ山間の村の生まれだそうで、まだ私の住む大陸に来るには時間がかかりそうで、非常に安心しています。


何故安心かって?

勇者を倒して手柄を上げてやろうとかそういう野望はねえのかって?


そりゃ簡単。成体した魔物として社会に出て、私は私がどれだけ使えない存在だか自覚してしまったからです。草不可避。


就職して研修をかねての最初の仕事は村人から金品を強奪することでした。酷い話です。私の仕事はこういった非人道的な行為が大半です。


ここは一つ、新人の中で一旗揚げてやろうと、私は近くの村で腕利きの魔法戦士に的を絞りました。

何といっても私はスライムべス。この世界を代表する魔物の上位互換です。それが弱いわけがない。


思えばこの甘ったれた考えこそがフラグだったのでしょう。


現地に到着した私は草むらに隠れて機を窺うこともせず、洞窟の調査に向かう魔法戦士に正面から喧嘩を売りました。

何と言っても私はスライムべス。西の大陸の赤い彗星が、相手が勇者だというならまだしも魔法戦士風情に負けるはずが無いと、この時の私は心から信じていたのです。


私を見付けた魔法戦士に対し、さてさてどうしてくれようか。

何かどえらい攻撃魔法でも撃ってやろうか。状態異常付与の打撃でもかましてやろうか。この尖った頭で肛門を開発してやろうか。

私は拳を(拳なんて無いんですが)ばきばき鳴らし、身の程知らずの魔法戦士をどう料理するか考えました。




しかし。

私はどえらい攻撃魔法の詠唱呪文すら知りませんでした(爆笑)

状態異常付与の打撃が聞いて呆れる。私には毒など無いし、有毒ガスを放出しそうな身体の部位も無い。頭の突起も初物の肛門にねじ込むには柔らかすぎる。


スライムべス は こんらん している !


状態異常は私でした。私は魔法戦士の体力どころか魔力の一つも奪えずに破邪の剣でボコボコにされ、命からがら汚らしい毒の沼地に逃げ帰りました。


しかし私も社会人(「人」ってのもおかしいか、プゲラ)。

何の成果も上げずに帰った場合は即リストラです。

毒の沼地で汚物にまみれて泣いている場合ではないのです。


その後も腹の出た商人、口が臭い神父、鼻が上を向いた宿屋の娘などを襲ってはみたのですが、結果は変わらず、火炎草を投げつけられたりロザリオで肛門を開発されたり散々な目に遭いました。


それでも私は明日も仕事に出ることを許されました。ここまで読んで下さった方なら察しが付くと思いますが、決して強奪が成功したわけではありません。



ならばどうしたか。

私は実力はありませんが運は良いようで、私が神父に肛門を辱められている様子を見ていたシスターが薬草を恵んでくれたのでした。

この薬草を肛門には使わずに上に献上してみたところ私は及第点を与えられ、ひとまずクビは免れたのです。



その帰り道、同じ地域に配属された暗黒魔道士やミノタウロスは今後の仕事について語り合い、勇者をどう料理してやるかという話題で盛り上がっていましたが、私にはそんな気力はありません。

私の父もこんな思いをして家族を養い、死んでいったのかと思うと涙がこぼれそうで、私はスライムべスに生まれた自分を呪いました。



勇者が来れば皆も自分の価値を知る事でしょう。私たちは決して勇者の宿敵などではなく、ただの金と経験値の塊です。(後で知ったことですが)スライムに毛が生えた程度の能力しかない私はいち早くこのことに気が付きましたが、なまじ力のある暗黒魔道士やミノタウロスはまだ当分かかりそうです。



今、自宅で泣きながらキーボードを打っています。今日の私は魔物としてのプライドを捨ててシスターに恵んでもらった薬草をあたかも奪ってきた物かのように献上してクビを繋ぎました。


神父に掘られたお尻が痛いです。この世に神はいない。あの野郎はお祈りと蘇生しか出来ないただの変態です。いずれ勇者が攻めてきたら、意気揚々と向かっていくであろう暗黒魔道士やミノタウロスを盾にして、たった一匹になったとしてもどうにか生き延びてやろうと思います。



その日まで私は、魔物としてのプライドを切り売りして暮らしていくのでしょう。今夜はあの心優しいシスターが変態の神父に凌辱される姿を想像しながら眠ろうと思います。


更新が途絶えたらその時は死んだものと思ってください。

どれくらい続くかはわかりませんが、今後ともお付き合い頂ければ幸いです。



                               スライムべス

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