一章
光とあった日
リプレイサーはあらゆる業務を行えるように調整されている。
300kg程度を持ち上げる力を持ち、100mを8秒で走られる。装甲は、内部の人工筋肉を守るために、人工皮膚の下に、防護用の金属板が仕込まれている。
勿論息切れすることも無いので、追いかけられて、逃げ切ることは殆どできない。
単純なおいかけっこでは、絶対に逃げ切れない。
ヤンはリプレイサーに見つからないように、街の光の当たらない部分・・・つまり、路地裏を経由して、必死に逃げているのだ。
なぜ逃げなければならないといけないのか。
この社会は、社会に害を成すものを排除する
しかし、害を成すとはなんなのだろうか。社会にとって、一体何が害なのだろうか。その価値判断を行う、G.E.N.E.テストというのがある。毎年住民カード更新のためにこのテストを受けさせられる。この結果で、社会に害を成すと判断された場合、住民カードが交付されない。持っている場合は、剥奪される。
労働のほとんどがリプレイサーによって置き換えられた現代では、人間は住民カードを通じて、電子マネーを毎月一定額使うことができるようにベーシックインカム制度が導入されている。
通貨は数年前に廃止されたので、もし住民カードがなければ、明日のパンを買うことですら不可能になる。
社会から排除される。
ヤンは今回の更新で、「社会に害をなすもの」と判断されたのだ。
住民カードを剥奪され、生活ができなくなった。
「どこで間違えたんだろうな」
ヤンは憂いた。自分の人生を。
間違えを探した。これまでの経歴を。
見つからないのだ。彼は生きていただけ
「発見」
路地裏でうづくまっていたヤンは、油断しきっていた
声のする方を見れば、背広の大男が立っていた。
リプレイサーだ。
すぐ分かった。そして、自分の逃走劇が終わったこともわかった。
リプレイサーがヤンの腕を強引に掴んだ。
「あなたには迷惑防止条例違反の容疑がかかっています。最寄りの警察署まで同行を要請します。」
眉一つ表情を変えないと言うが、動いているのは口だけで、リプレイサーには人間らしさがない。
そんなことは当たり前だが、同じ見た目をしているのだから少しの期待をしてしまう
リプレイサーの腕を掴む強さも、表情も変わらない。
期待をする浅はかさに、ヤンは嫌気が差した
体をおこし、顔を上げた瞬間に、なぜか腕を掴む強さがゼロになった。
フラと、強く掴まれてる腕に、相対する力をかけていた逆側に倒れそうになったが
踏みとどまった。
閃光
眼の前が一瞬、真っ白になった。
その白い世界の中に、ひときわ輝く
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