光芒一閃のルーチェ

ジック大森

プロローグ

明かりは見えているか


 「くっ・・・!」


 走る、走る、走る・・・

 息を切らしても、走る。



 

 空は月も顔を出せないほど、汚れてしまっていた。

 ・・・余談であるが、虫は夜、月明かりに対して、一定角度で飛ぶことで高さや方向を保っているらしい。


 人間がつくった明かりは眩しすぎて、虫たちはそれに影響されて、月の明かりが見えなくなり・・・錯乱した結果、明かりの周りを飛ぶことしかできなくなる。


 

 工業化が発達した太平洋に面する茜島市に住む人々は、この発達を悔いた。


 「リプレイサー」は、さしずめ人間が虫とすれば、リプレイサーは人間が作った明かりだろう。 リプレイサーとは、村上重工製造の汎用人形産業用ロボットである。リプレイサーの見た目は、みな人間とウリ二つである。うなじの部分に、パソコンと接続するようのコード穴があること以外はなにも人間と変わらない。


 しかし・・・。中身は仕事を効率的に行うことのみをプログラムされたもの。

 リプレイサーは独立している。社会を作らない。孤独に仕事のみを行う

 どれだけ外面が人間でも、中身は人間ではない。



 そんなリプレイサーに今、ヤンは追われている。


 だから走っている。


 


 リプレイサーというロボットに、人としての役割を奪われた人間

 ヤンもそのひとりである。


 

 


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