3-2.Ⅴ:冒…食材を見て回ろう
宿を出た後、食料品が買える店屋を目指して歩いていた。
このルーテの街は基本一軒家で店を出してはいない。(冒険者御用達の武器屋とか、一部は別。)
通りに店を出すようにしている。いわゆる露店だろうか。
食料品を出している露店を見て回る。
とりあえず必要な材料はミュリアの御機嫌取りの為の魚とリガの実やアップルパイとかの材料だ。
一軒一軒見て回る。
そして一つの露店に目を向ける。
露店の主である男は「いらっしゃい!見て行ってくれよ!」と言う。
アルトは気にせず目的のリガの実を確認する。
「……さっきの店より品質は良さそうだな。味はどうだ?」
アルトの右眼には、『あらゆる理の本質を見抜き理解できる』と言う能力を宿した
”碑眼”を有している。ただし、この”碑眼”は対象を視認しなければ機能できない。なので視界に入れる必要があるのだ。
もっとも、この”碑眼”の上位能力である”神眼”は視認せずとも保有者の脳に常に情報を伝える事が出来る。制御不可の為脳に常に膨大な情報が流れ続ける欠点はあるが。
この”碑眼”でリガの実の鮮度を確認していた。
しかし鮮度は良くても味に不満があれば意味がない。
見た目よりも味を知る良い方法は一つ。
口にすればいい。
なのでアルトはその手にしていた真っ赤に熟しているリガの実を口に運ぶ。
「お、おいっ!何する気だっ!」
露店の男は慌てた声を出す。
それはそうだろうか。商品に手を出そうとしているんだ当然だろう。
だがアルトは気にせず一口かぶりつく。
「あぁ!?」と言う叫びも気にしない。
シャクシャクと良い歯応え。
果汁も満ちており味も満足だった。
「うん。うまいな。おい、店主。コレと、この3つのリガの実をくれ。ああ、無論コレの代金も出すから気にするな」
「おいおい、金ねぇ奴なら騎士団に突き出すとこだぜ。まったく」
リガの実だけでなく他にも購入した。
購入した食材を詰めた紙袋を受け取る。
紙袋二つ分。これで両手が埋まる。
「そうだ。この町で一番良さそうな魚を売ってる店はあるか?知ってるか?」
露店の男は「まだ買うのか?」と他に購入してどこに買ったものを持つ気だと思った。
アルトの両手はすでに二袋分ある。
まあ買ったものを宿かどこに置いてまた買いに行くのかとか考え、アルトにそう告げた。だが、
「いや。まだ容量はあるから大丈夫だ。だから教えろ」
そう言うとアルトは背負っていたリュックの蓋を外す。そして買った食料の入った紙袋を二つともリュックに仕舞った。
その光景を目に男はギョッと驚く。
それはあり得ない光景だったからだ。
アルトの背負っていたリュックの大きさと、先の購入した紙袋の大きさ。容量が同じなのに、入れた物はその倍の量がある。当然だが入るわけがない。
しかしアルトのリュックには、アルトが”
ある意味リュック内は異空間化していると言える。
アルトのリュックは1tくらいは優に入れる事が出来る。
ただそれを知らない物は驚くであろうが。
驚く店の男の驚きなど気にせず魚屋に関し訊ねる。
「あ、ああ…この先の通りの先に如何にもな漁師の男の店がある。そこが良いと思うぜ」
「そうか。邪魔したな…」
そう告げるとアルトはその場を離れ聞いた場所を目指し歩いて行った。
「……変わったアンちゃんだったな」
離れて行った客であるアルトに店の男はそう呟いた。
+
そのあと、教えられた店で新鮮な魚も手に入れた。
新鮮な魚もリュックに入れる。
異空間化しており時間の流れがない。
つまり常に鮮度を失わないのである。
偶にどこに入れたか分からなくなる場合もあるが、とにかく空間系能力は便利なのである。
そう。便利なのである。
そして、そのような便利な物を狙らう輩は当然存在していた。
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