3-2.Ⅲ:冒…ルーテの街
アルト達は街に辿り着いた。
街の中には商人達の護衛という形を取った。
街の中に入る際にはいくらかの金が必要だった。
多少は今までの帝国兵から奪った金があったが、この後換金しに行くまでにいくらか金が必要となるだろう。
商人達もアルト達があまり金を持っていないことを聞いていたので、助けて貰ったお礼として護衛と言う形でそちらで支払ってくれたのだ。
「悪いな…」
「いえいえ。皆さんがいなければ我々はこうして街に辿り着けなかったのですから、お互い様ですよ」
「そうか…」
街に入ると商人達とは別れた。
街に着いたタイミングで、それまで中年の大人が寄り固まり一つのゲーム機に群がるのは残念感があった。『ゲームの文字はアストラルの言語に改修済みなので問題はない』。そのゲーム機を回収したら、物凄くどこか遣り過ぎでゲーム機を親に没収され隠された子供の様な視線がいくつもアルトに向けられた。
「まったく。はぁ、いつかこれと同じ物を作るつもりだからその時は売ってやるからそれまで我慢しろ」
溜息を付きながらそうと言うと、子供の様に目を輝かせ「約束ですよ旦那!」と燥いだ声。勿論中年の良い大人達がだ。
それに「誰が旦那だ?」と思いつつ、引き攣った笑みを「どんだけ…」とも「アストラルにニート野郎が量産されるか?」とかが浮んだ。
+
「この後はどうするのアルト?」
ミュリアが聞いてきた。
この後の方針を確認したいようだ。
「とりあえず手持ちの魔石や魔物素材を換金所に持って行って買い取って貰い金を作る。今の手持ちは多くないからな。今後は必要だからな」
闇夜の国では人間国の様に金でのやり取りはしていない。
だが、これからは必ず必要となる。
実際街に入るだけで金が必要だった。
ないと困るのだ。
「そのあとはどうするのです?私はゆっくり寝たいです…」
街に入る頃には起きていたシルフィが、さっきも十分寝ていただろう?とツッコミを入れたい事を言いつつ聞いてくる。
「金策の後は宿の確保と食料の確保。あとは服屋で服を見繕うくらいだな、とりあえずは」
「服を買うのアルト?」
「…私達の分もですか?」
服を購入するに反応する二人。
アルトは頷いて肯定する。
「今の服は冒険に不向きな服だからな。冒険者用の服を買うつもりだ。それに服に関しては主にお前たち二人がメインだから」
「「私達がメイン?」」
声を揃えるミュリアとシルフィ。
「ああ。2人共今の服だと全力を出せないだろ?ミリーはフードをいつも被っているのもどうかと思うし、ミリーは魔法以外にも動き回るからな。今の自分の戦闘スタイルに合った服を着たほうが良いだろう。あとシルフィもだな。シルフィはその種族特性である翼が重要だからな。背を隠している状態だと全力を出せないはずだ。まあ、いずれは俺がいつでも”幻影”効果付きのアーティファクトを作ってやる」
「「まるほどぉ」」
+
まずは換金してくれる場所に向かった。
換金できる場所は商人達から予め教わっているので迷うことはない。
この街にも冒険者ギルドの支店として存在する。
他のギルドで受けた依頼を、別のギルドで報告したい場合のために核に街に小さいが支部が存在する様だ。
そこで今まで手に入れた魔石や魔物の素材を売った。
買取依頼の際に冒険者登録しているか?と受付の女性に聞かれたが、現在は冒険者ではないと伝える。すると、やはり冒険者であれば買い取り価格が少し上がったらしい。
特に気にしていないので買い取って貰い換金してもらった。
一先ずの金を得た。
あとその際に冒険者登録するなら何所のギルドが良いか尋ねた。
女性からは登録するなら王都が良いと言われた。
(王都か…)
王都と聞いてふと脳裏に一人の人物が浮かんだ。
自分の血を継ぐ父と呼びたがった少女の事が。
+
換金を終えた後はまず宿屋を探した。
泊まれるような宿があるのは商人達から聞いているが、早い内に泊まれるか確認した方が良いと考えた。一杯で泊まれないと困るからだ。
結果としては直ぐに泊まれる宿に巡り合えた。
宿と言うより3階建てのホテルみたいだなとアルトは思った。
ただ…泊まる際の確認時にこんなやり取りをしたのだった。
「えっと、お部屋の方はどうされますか?男の方と女の子達で二部屋で分けますか?それとも大きめのお部屋で一緒にしますか?」
「一部屋で良い」
アルトは受付の若い女性に泊まる部屋に関して確認されたのでそう答えた。
部屋を別に取れば料金が二部屋分掛かる。それにミュリアとシルフィは闇夜族の人間だ。何かトラブルに巻き込まれたら困ると思っての事だった。
しかし、
「えぇ!一緒の部屋でって、アルトのエッチ!」
「いや意味わからん」
同じ部屋に男性と一緒は恥ずかしいと頬を染めながら抗議の声を上げるミュリア。
「私は別に一緒でも構いませんよ?…腕枕を希望したいです」
「いや一緒には寝ないぞ」
逆にシルフィは気にしていないようだった。ちゃっかり一緒のベッドで寝て腕枕を希望してくる。軽くチョップしておいた。
ちゃんと3人分のベッドがあるから、自分の寝ろと伝えた。
そしたら「えぇ…」となんだかシルフィは残念そうだった。
ミュリアにも先の理由を伝え何とか了承を得ようとした。
「うぅ、恥ずかしいけどしょうがない―」
「うん。ならミュリアは一人部屋で、私とアルトで一部屋にしましょう」
「えっ!?」
「……あ?」
何を勝手にと”念話”をシルフィに使うアルト。
(”何を言ってんだシルフィ?”)
(”まあまあいいから…ふふっ”)
どうやらシルフィには何か思惑があるらしいと、アルトは一先ずは様子を見ることにした。
「そ、それは…ダメニャ!」
顔を真っ赤になりながら否定するように叫ぶミュリア。語尾がネコ見たいに『ニャ』が出ている。動揺したりすると出るらしい。
「どうして?ミュリアは一緒だと恥ずかしいのでしょ?だったら良いじゃない?私は気にしてないもの…ふふ、一緒の部屋、アルトが寝てからめくるめくる夜の時間…♪」
「ダ、ダメッ!いくら友達のシルフィでも、アルトと、よ、夜の時間なんて!?ダメなんだからねっ!いいわ!3人一緒で良いもん!よ、夜の時間なんて……うにゃあぁ!絶対ダメニャあぁ!」
ミュリアがリガの実(林檎の様な果物)の様に真っ赤になりながら宿内に響くのでないかと思うほど叫んだ。
そして宿には当然だがチラホラと利用客がいた。当然周囲にいた者達からギョッと視線を集めた。その視線と共に『夜の時間?』の声もチラホラ。
そして人より五感、特に聴覚が優れているミュリアも自分に向けられている視線の数に自分がすごく恥ずかしい叫びを上げた事に気付く。
そしてどこかニコニコと笑みを浮かべる親友のシルフィと、「なるほど、面白いものが見れた」と納得気なアルト。
ミュリアは自分がシルフィに揶揄われたことを悟った。
+
「うぅ、ひどいよぉ…」
「ごめん。でも後悔はしてないわ。だって可愛いミュリアが見れたもの…」
「シルフィ!?」
結局は3人一部屋で泊まる事になった。
周囲からの視線に羞恥満点のミュリアは赤い顔を周囲の視線から隠すようにフードを深く被り震えていた。
「あはは」と笑いつつ受付を即済ませ、止める部屋に案内された。
案内された後は直ぐ中に入り扉を閉めた。
中に入る際に受けつのお姉さんから、
「あまり夜はしゃがないでね♪」
と揶揄い感ある言葉を貰った。
無論その言葉にミュリアは「むにゅあうぅ」と羞恥に震えた。
扉を閉め鍵を掛ける。
部屋を見て回る。
部屋はそこそこの大きさで3人部屋と言う事で、広間にキッチンとかトイレもありシャワー室もある。奥が就寝部屋となっている。3人部屋なので3つベッドが用意されていた。
今回は2つ日間滞在するので二日分の利用金をし払っている。
生活する分には十分の設備があり満足。
教えてくれた商人達にアルトは感謝を送る。
今日は流石に野宿が続いていたこともあり、久々の事もあり疲労感があったので、今日はこのままゆっくりして、次の日に必要物品と服の買い物に向かう予定にした。
それに……揶揄われて頬を膨らませ御機嫌斜めのミュリアを宥める必要だった。
部屋に入るとミュリアもシルフィもフードコートを脱いだ。
フードを外す事でミュリアの特徴である猫耳が外気に晒される。
シルフィもコートを脱ぐとその背に”収納”されている白銀の2翼を展開する。
「ふう…軽くなったです……ミュリアまだ怒ってるの?」
「…ムニュウ!…」
アルトとシルフィはゴメンと何度も謝った。
アルトは(なぜ俺も?)と思うも羞恥に真っ赤に悶える彼女に対して「面白い」「良いもの見れて満足」と思っていたので仕方ない。
なんとか謝り尽しミュリアの御機嫌取りに成功した。
アルトはミュリアの好物を作る約束をさせられた。
「まあそんなもんで良いなら安いもんだな。とりあえず俺は食材を買ってくるから、その間にお前達は風呂でさっぱりしてろ」
「やった♪ムフフ♪」
「分かったわ…」
「あと俺が帰って来るまで部屋には誰も決して入れない様にな」
そう告げるとアルトは買い物に出かけた。
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