3-2.Ⅰ:冒…商人達が魔物に襲われていた【VSオーク】

新月の集落を後にして。


この世界アストラルとは異なる世界である地球。

その地球からアストラルに戻ったアルトは、闇夜の国にある新月の集落にて出会った【血】を媒介に治癒等を成す事が出来る、かつて【闇夜の魔王】と同じファミリネームを持つ猫耳獣人族の少女ミュリアと、先の事件(満月の集落を帝国兵が襲撃した)にて出会った【巫女】と呼ばれる銀髪の眠たそうな(実際よく寝る、どこでも寝られる)翼を持つ翼人族の少女シルフィの2人を連れ、一先ず街を目指していた。



当面の目的地は夜国ウルクの西方に位置しているシュメール王国。その王国を目指すのは、王国領に存在する三大迷宮と呼ばれる場所。その大迷宮の奥底には、嘗て英雄アルゴノートの象徴と言える遺物を取りにいく為だ。

王国までの道形はどうでも良かったので、闇夜ウルクの森を抜けて一番近い街を目指していた。



「ミリー、オークは”火”が弱点だ!炎系の魔法で倒せ!」

「わかったっ!そこっ!”炎の渦フレアスピン”!!」

「シルフィ、オークは確か豚鼻が弱点だったはずだ!得意の”風”で殺ぎ落としてやれ!」

「了解…さあ、私の眠りを妨げるもの、ここに朽ちるべし…”風刃”!」


「鬱陶しい…豚臭くなるだろうが。近付くなっての!」


近付いてくるオークにアルトは嫌悪感を出しながら右手の魔導銃バリスターを狙い撃ち頭部を吹き飛ばし始末する。


なぜ魔物オークをこうして倒しているか。

それは街を目指して今日も歩いていると、魔物=オークの群れに襲われている旅商人達がいたのだ。

アルトは旅商人達が魔物に襲われていようが気にする気はなかった。

ただまあ襲っている魔物を駆逐して旅商人達の荷車を得ればとか思ったりしていた。

だが、ミュリアが、


『たいへん、魔物に襲われてる!助けないと!』

『は?あっ!?」


と止める間もなく真っ先に助けに行ってしまった。

それに『仕方ない…慈善事業とかガラじゃねえのに』とブツブツ言いつつ右手でホルスターから六連式リボルバー魔導銃【バリスター】を抜くと魔物に今まさにその爪の餌食にされそうな男を救出するため引き金を引きその魔物を撃ち始末した。


『ギギャ―』

「な、なんだ、今のは…」


今まさに豚の様相で二足歩行の魔物【オーク】の爪に襲われそうだった男は、目の前にそのオークの頭が吹き飛び絶命した様子に、驚きの声を零した。


「そこの人達っ、危ないから安全なとこに下がってっ!」


驚きで茫然の様子の商人の男にミュリアは叫び、その手のルビーロッドに魔力を流しアルトの助言に従い”炎魔法”を発動する。ミュリアのルビーロッドにはアルトが新たに加えた特殊効果によって『炎』の魔法の威力を少し上げる効果が付加されている。

発動と共にルビーロッドから真っ赤な炎が渦巻く様に放射されオークの一体に命中。絶叫を上げながらオークは焼かれ絶命した。


「……」

『ブガアー』


オークの数体は同種の仲間がいきなり頭を吹き飛ばされたり、炎で焼かれていくのに、仲間がやられたことに対する怒りと弱点である炎にいきなり体が吹き飛ばれる恐怖を抱いていた。

怒りのオーク達。しかし怒りを抱くも本能が謎の武器で的確に頭を吹き飛ばしていくアルトと、オークの弱点である炎の魔法を駆使するミュリアに対して警告をしていた。手を出せば同じ目にあうぞ、と。

なのでオーク達は残っているシルフィを標的にしようとした。

なんだかフラフラとした感じで今にも倒れるのでは?と言うイメージをオーク共に抱かせる。

雄叫びと共にシルフィに襲い掛かろうとしたオークだったが、


「…うるさいのです、眠いのでお静かにっ」


その言葉通り、眠たげな眼に殺気が籠る。

何処でも立ったままでも眠る事が出来る変な才能を持つシルフィだが、やはり寝心地の良い状態で眠りたい。

ここ数日間は夜国ウルクを離れていることもあり、シルフィの髪の色と同じ白銀の翼は人目に付かなようにと背中に収納していた。

収納時背中が重くなり身体も疲れやすくなる。元々シルフィの種族である翼人族は体力のない種。

外での慣れない野宿に気持ちよく眠れていないのが現状だった。

それでも休める時はアルトやミュリアよりグーグーと寝入っているのだが。

本人的には熟睡できてないらしい。

なので少しイラッとしていたのだ。

そんな時に大きな声と殺気を向けられれば、理不尽なそのイライラ感をぶつけてもいいよね。


シルフィは両手を合わせる。そしてその手に風の球体を作り出す。


「行っておいで”風刃”」


シルフィはその種族特性”翼・覚醒タイプ・ウインドの力で、【風】の魔法を行使する際には詠唱無しで、呪文銘のみで発動する事が出来る。しかも魔法の【位】を一段階底上げして発動する事が出来る。


風の球体がはじける。弾けた風は刃のようになり襲い掛かろうとしていたオーク共にその風の刃が迫り切り裂いていく。狙いはアルトに助言された鼻の部分。

絶叫を上げながらそのオーク共は切り裂かれ絶命していった。


「……ふぅ。これで静かになった…ZZZ…」

「いや、寝るなよ。まったく困った寝坊助姫だな」


呆れつつバリスターを発射。残りのオークを片付けていく。

アルト達は僅か数分でオーク共の殲滅に成功した。




助けられた旅商人達は、自分達が助けられた事に安堵するも、内心では一体あの怪しそうな者たちは一体何者だろうか?と不思議であった。


旅商人達がそう思ったのは、まずアルトの未知数の武器。弓でもボウガンでもない形の見た事も聞いた事もない遠距離武器の形。おそらくはアーティファクトか何かだと考えている。

商人達はただただ好奇心が湧く。興味津々である。できれば交渉にて是非手に入れたいと商人魂に火を付けさせる。

そして、助けられた身ではあるのだが3人に対して怪しいと思わせられる理由。それは二人の女性がフードを深く被って身を隠している事だろう。


ミュリアは獣人族ゆえに猫耳が頭にある。これはシルフィの背中の翼のように隠したりすることは出来ない。”幻影”系の能力や魔法もあるが、ミュリアは取得していないので使えない。なので一先ずはフードを被り正体を隠す事にしているのだ。

そして同じくシルフィもフードを被っている。

だが、本当ならシルフィは被る必要はない。種族特性である翼は背中にあるし隠せるからだ。

ただ本人としては『ミュリアと一緒』。それだけの理由である。


そしてもっとも銃以外にもアルトの着ている地球の学生服に注目していた。

商人達は一目で今までの、そして今自分達が来ている服とも素材が全く異なる物であると看破していたのだ。


正体を隠している二人の女の子。

未知の素材で出来ている服と圧倒的な未知なる武器を持つ少年。


旅商人達は、一先ず自分達の商人魂を何とか抑えながら、襲って来たオーク共から助けてくれた3人に感謝をするのだった。


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