3-1:序②…【英雄】とモードレッド

建国されたシュメール王国は英雄アルゴノートの遺伝子情報を素にこの世界の上位存在にして星の創造神と呼ばれていた【精霊王アストレア】が生み出した一人の少女が治めた。


その少女の名は【モードレッド・シン・アルトリア】。

”モードレッド”とは『その血を持つ複製者』と言う意味で、”シン・アルトリア”は『その者その血を持つ血縁者』と言う意味があった。


『”うぅ~もっと素直だったあの頃のアルゴノートに逢いたいよぉ~”』とアルゴノートに内緒で【精霊王】が勝ってに創造した人造人間である。謂わばクローンであるかな。

【精霊王】はもっと幼い頃の無垢な頃の少年を望んでいたのだが、どこかで間違ったのだろうか。

生まれたその子はアルゴノートと違い過ぎた。

まず性別が違う。

アルゴノートは男だが、モードレッドは女の子だった。

男女の違いもあり背丈や体格も違う。顔はどことなく近寄っているがやはり違いはあった。髪の色や瞳の色も違った。

アルゴノートの髪は金色、瞳は透明感のある薄い蒼色だった。だがモードレッドは髪が白に近い銀髪に瞳も真っ赤な深紅の色をしていた。

創り出した張本人である【精霊王】も『”アレ?アレレ?なんでこんな?”』と想定外だったようだった。


【精霊王】はモードレッドを失敗作と呼び興味が無くなったのもあり、モードレッドをアルゴノートに押し付けた。

当然行き成り押し付けられたアルゴノートは憤慨した。


『”ゴメンネ♪そういう事でこの子、君の子供みたいなものだからアナタが面倒見てね~よろしく♬”』

『はぁ!?何ふざけた事抜かしてんだコラァ!?』


とまあこんなやり取りだった。

そして押し付けられたアルゴノートは意外であり当然なのだが戸惑った。

なにせ自分の面影を持つ存在、しかも殆ど同い年くらいの成熟している女の子が自分の血を持つ子供とか言われたのだ。戸惑わない方がおかしかった。

ただ旅の仲間からは意外だな、と言われていたが。


それからアルゴノートはモードレッドを妹として扱う事にした。

モードレッドはアルゴノートの事を『お父様』と初めは呼んでいた。

どんな事にも動じず己が道を行くアルゴノートだったが、その呼び方だけは止めさせた。

そう呼ばれる度に【マリー】と呼ぶ者から冷たい嫉妬が籠った目を向けられたからだ。

仕方なくと『兄』と呼ぶ様に説得した。

このやり取りを知る仲間たちはこっそりと笑っていた。

こっそりなのは彼の八つ当たりと言う報復が怖かったからであるが。


生まれて間もない赤子の様なモードレッドで、父と慕うアルゴノートの言う事には大概従うのだが、この時は渋々と言った様子だった。


モードレッドはアルゴノートを素体に生み出された存在。

だがモードレッドにはアルゴノートの持つ3つの固有能力は所持していなかった。

これも【精霊王】が失敗作と言った要因の一つでもある。

だがモードレッドには卓越した戦闘能力が備わっていた。


ある時、アルゴノートはモードレッドと手合わせを行った。

モードレッドの能力を把握するのと彼女用の専用アーティファクトを作製する為だった。

データを取るだけだからと、この時点で既に圧倒的な能力を有しているアルゴノートはモードレッドを軽く考えていた。まあ自分より下だと思っていたのだ。

だがその考えは間違いだと思い知らされた。

その手合わせにアルゴノートは技能を使うつもりはなく技法や身体能力のみで行うつもりだった。それでも余裕だと思っていた。

しかし―――結果は自身を超えるモードレッドの身体能力の高さに、【三大秘宝】まで使わされる結果となった。

この時…『技能なしの戦いでは最強だな…いやはや自分で言うのは何だが、チートだな』とアルゴノートは零した。



モードレッドはアルゴノートから与えられたアーティファクト、【クラレント】を用いアルゴノートの戦いのサポートを務めた。

【魔王】率いる闇夜軍との戦いでは多くの敵をアルゴノートの道を作る為にと屠った。


始めは無表情で彼が何かをモードレットに告げなければ反応しない、生まれたばかりで赤子同然なのだから当然だったのだが、始めはアルゴノートの言う事のみに反応していた。

だが彼との旅の中で一つ一つ成長し無表情と言われていた表情も、硬い部分もあるが豊かさが多くなっていった。


そして終戦後―――アルゴノートは一つの王国、すなわちシュメール王国を作った後、この国を任せるのに相応しい、そして最も信頼できる人間として、”自身の分身であり、父と慕う娘もとい妹であるモードレッド・シン・アルトリアにこの王国を任せるのだった。


そしてアルゴノートに託された王国を己が寿命が尽きるその時までモードレッドは王としてシュメールの国を治めた。



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