第3章~【冒】~

3-1:序①…始まりの王国~シュメール~

【シュメール王国】。

このアストラルの世界において【王】を据えた初めて国家という体裁を整えた初の国である。

この王国は【闇夜の魔王】から世界を救った英雄によって建国された。


初の国。

ではそれまではどうしていたのか?

それは各土地で冒険者によって運営されていた【ギルド】と言う組織が仕切っていた。


シュメール王国の建国には一つの大きな戦いがあった。

それは、とある1人の【闇夜族】の存在からだった。

その者は【魔王】と呼ばれた。

ある時代に唐突に覚醒したその【魔王】はその己の固有能力を使い己と同じ血を持つ者。すなわち闇夜の血を持つ者達を支配し己の手勢とした。

そしてその手勢を引き連れ【魔王】は残されし支配を拒んだ同胞、そして人間達に戦いを挑んだ。

当然現われし【魔王】を打倒しようと多くの冒険者が立ち上がった。

だが、誰一人として【魔王】に敵う者はいなかった。

絶大な【闇】の力に呑まれていったのだ。


一人、また一人と名乗り出た冒険者が【魔王】とその手勢に駆逐されていく。

ギルドも組織として機能させようとした。

だがあくまでもギルドは仲介組織としての面が大きく多くの冒険者を纏められるような力はなかった。


そんな【魔王】の絶対的な力の前に人々は怯える生活を送る事になりかけた。

そんな時、とある冒険者がその【魔王】の前に立った。

その者はまだ15歳と若い人間の少年だった。

金の髪に額と右眼を覆うような赤い布を巻いていた。

その少年は特殊な能力を持った装具、所謂アーティファクトを多数持つ者だった。

さらに、少年は如何なる技能をも持ちそれを駆使して見せた。

そして少年は、【魔王】に怯え尻込みしていた人間達の【光】を導いた。

その手に持つ【光】の刃の聖剣を持ちて。


絶対の存在だった【魔王】にして、その対極である【光】を持つ金髪の少年を御し切る事は出来なかった。

その少年の姿に活気を取り戻した人間達は少年を筆頭に【魔王】の軍勢に立ち向かった。


そして数か月後―――【魔王】は、かの少年によって打倒された。

そして【魔王】を打倒した少年は皆から【英雄】として祀り上げ称えられた。


【魔王】を討って暫くして【英雄】と呼ばれた少年は一つの王による統治国家、シュメール王国を創った。

ただ、英雄の少年がその国の王になる事はなかった。

王国の基盤を創りし後、当時の仲間が最後にその姿を見た後、忽然と少年は姿を消した。


それから英雄と呼ばれた少年―アルゴノートの姿を見た者はいなかった。

そう、王国が建国されて約1000年の時の流れの中で。


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