第2章~EX…シルフィ

2-EX①:翼…シルフィと夢想

私の名前はシルフィ・ビスマルク。


人間達と異なる姿を持つ異種族。一般的には【闇夜族】と呼ばれている。

私はその闇夜族達が暮らす国である【夜国ウルク】。その集落の一つである【満月の森】に生まれた。


私の父は、闇夜族の中で最も多く、身体能力や五感が優れているが、魔力を持たないと言われている種族。動物の耳を持つ事から【獣人族ビースノイド】と呼ばれている種族だった。

私の母は、父の種族である獣人族と真逆で、種族としての数は少なく、潜在魔力を高く有し、その背中に鳥の様な翼を持つ種族である【翼人族フェザーフォルク】の出身でした。


私は母の【翼人族フェザーフォルク】としての特徴をもって生まれた。


ただ、私はどうやら、普通の、一般的な翼人族フェザーフォルクとは違うみたい。

その特徴だけど、まず私の髪の色が両親とは違う。

両親である父と母は茶色の髪なのだが、私の髪は何故か白銀色だった。


母によれば、どうやら私は、翼人族フェザーフォルクの中で、稀に私の様な色で生まれる場合があるらしい。

その者は【神子】と呼ばれ、その者には、この世界の創造主である【精霊王】と交信を行い声を聴く事が出来るらしい。


もちろん生まれたばかりの私には交信能力が発揮されることはなかった。

それでも生まれた【神子】として周りから神聖視された。


(まあ私はただノンビリ寝たりできればそれでいいなぁと幼いながら思っていたかな……)


そんな風に育ち、よく寝ていることから、周囲から私は【眠り子様】なんて呼ばれたりした。

そんなある年。

6歳のある時に、私は不思議な体験?をすることになった。


周囲からよく寝る子、なんて呼ばれるくらい、私は寝ることに関しては才能があった。

いつでも、どこでも、どんな時でも、グッスリからウットリまで、寝る事が出来る。

その日も私は眠気から家でお昼寝をしている時だった。

それはなんだかいつもと違う感じがしたのだ。

まるで夢の中なのに自分自身を自覚していることだった。

いつもなら起こされるまで眠りに入っているだけなのに。


『……ん?…なに、これ…夢…?』


今までにない不思議な夢に思わずそう声にする。

すると、姿はないけど何故かそこにいるとわかるように、私にその存在は声を掛けてきた。


“おや~?…人の子がわたしをこうして感じ取るなんてねぇ~いつ以来だろぉ~”


その声は女性の声だった。今まで聞いた事ないキレイな声だった。

私はその声に、声を掛ける。


『………だれ?アナタは、何?』


私はあまり表情を現さない。表情が読みにくいと周りの人から言われていました。

初めての夢の出来事に、私なりに、されど周囲には分からないであろうけど、戸惑っていた。

その夢に出て来たのは金の光の存在でした。声は女性的でその姿もどことなく女性的に見えた。

けどどこか曖昧に見えてもいる。そこにいるけどそこにいない。

その声の主は、笑みを浮かべたように感じた。


”おやおや~、わたしの声を聴くことは出来ても、わたしの存在を感じ取りこうしてお話が出来るなんて……うん。翼のお嬢さん、貴女で3人目ね~”


いや~うれしいなぁ~、と私に言う謎の存在。


『…3人目?』

”えぇ、御嬢さん。貴女で3人目なのよねぇ~。…まぁ~今では、こうして話せるのは、貴女だけだけどねぇ~”


私にそう答えた声の主は、なんだか少し寂しそうと感じた。


『…ん。私の名前はシルフィ。…アナタの名前はなんていうの?』


私はその声の主の名を聞いた。

声の主は何やら驚いた様な雰囲気を見せる。


“……うぅ~ん。初対面でこうして先に名を答えられ、聞かれた経験はないわねぇ~。ふふ、貴女面白いねぇ”


声に笑みが込められている気がする。


『…何が面白いのかよくわからないけど、アナタは一体何者でなんていう名なの?』

“オッと、そうでしたねぇ~。人に聞かれたら答えてあげるが世の情けよねぇ~。わたしは、わたしを認識するモノからは【精霊王】と呼ばれてる存在よ~”


ドヤッ!とでも言うかのように、と言うより言ってるんだろうな。表情が見えないけど、うんドヤ顔を浮かべているのが頭に浮かぶ。

そう浮かびつつ私は驚いていた。

何が世の情けかよく解んないけど、声の主が名乗ったのは、この世界アストラルにおける創造主と言われている“精霊王”だった。

驚きながら私は、ふと母が話してくれたことを思い出していた。

母から聞いた話では、たしか…『―かの精霊王様は、昔々からこの地を見守る存在で、この地を歪める者に対して、その歪みを修正する力を授ける。そしてかの精霊王様のその声を聴いた者は、特別な翼の民と、かの【英雄シン・アルゴノート】のみと言われているのよ』と。


「…本当に?…アナタが精霊王様なの?この世界の神と言われている?」

“…むぅ~ん!なんだい、なんだいっ。最近の翼持ちは、信心が足りないよぉ~。わたしと夢を介して会話してるのがその証拠でしょ~”


母からこんな話を聞いていた。

『私達の始祖様の中には、精霊王様の声を聴く特別な御力を有していた者もいたらしいわ。もっとも、今ではその声を聴ける者は聞かないけれどね』と。


『…私は、周りの人から見たら変わってるらしい。だからアナタの存在も変わってるから、分かるのかな…』

“あらあら、確かに変わってるわねぇ~あなた。そう言えば、こんな事態に遭ってるのにあんまり動揺しているように見えないものねぇ~”


そんな事はないんだけど…あまり表情に出ないだけなんだけど……


「…そんな事ない。…驚いてるよ?」

“なる~、表情を出すのが豊かな方ではないと言う事かなぁ~”

「……まあ、そうかも」


そんな風に私は初めて精霊王様と対話した。

私はこの能力は【夢想】と言うものだと教わった。

夢の中で望んだ者と対話する能力。翼人族フェザーフォルクの特別な女子にのみ与えられる力。この能力を持つ者は『巫女』の称号で呼ばれるようになるらしい。

うん。巫女とか正直面倒そうだからいらない気がする。


そう考えたらなんだかこの夢想の空間が薄れてきた。

どうやら眠りから覚めるらしい。


”うぅん、どうやら今回はここまでのようね~”

『そうみたいね。……そう言えば―』

”ん?どうしたの~”

『アナタの名前を聞いてない…―』

”ああ!そう言えば名乗ってなかったわね~。じゃあ、わたしの真名は●●●●●よ―”

『えっ?』

”……じゃあね~”


私は精霊王様の口にした真名を聴き取れなかった。

まるでノイズでも走るかのような感じだった。

もう一度聞き返そうと思ったけど、それより早くこの空間が終わるのが早かった。


どうやら目覚めの時らしい。



そして、私は御昼寝から目覚めた。

欠伸をしながら眠い目を擦りつつ起きるとふと気づいた。どうしてか、両親や集落の皆が心配そうに、そして驚いた表情を私に向けている。

そして私が目覚めた後、物凄く喜ばれた。父さんも母さんも私をギュッと抱きしめると涙を浮かべていた。


何だかよく解らない状況に困惑する私に、私を抱きしめる涙目の両親は教えてくれた。

なんと、私は丸2日眠りについていた、という事だった。

全く起きない私を心配した故だった。

そんなに眠りに入っていたなんて知らなかったので、ゴメンナサイと心配をかけたことを謝った。


そのあと。

私は夢での出来事を両親に告げた。




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