2-5.Ⅱ:翼…大事な友達!
ミュリアSide…=^_^=
私はどこかで期待していた。
アルトならあの子を、シルフィを助ける事が出来ると。
確かにアルトでも、大人数の相手をするのは困難だろうとは思う。
でもアルトなら何とかできるって思っていた。
自分には理解を超えるアーティファクトを生み出し、能力を超えた固有能力すら持つ、そして、かつて、アルトはあまりそう呼ばれるのを嫌ってる感じだけど”英雄アルゴノート”とまで呼ばれた人。
だからと思っていたのだと思う。
…だけど、アルトは拒絶した。
アルトが部屋を出て行った後、私はあの子の、シルフィの侍女のエトさんから出来る限りの情報を聞いた。
「いいもん!アルトなんていなくても、私だけで助けて見せるんだから!」
ミュリアは1人でも助けに行く気だった。
シルフィ・ビスマルク。
闇夜族の中でも個体数の少ない【
しかも、あの”精霊王“と交信できる能力を持っていると前にシルフィから聞いたことがある。
ある時、あれはまだ私達が幼い頃にシルフィがこの集落に訪問してきた際に、私はシルフィと出会い、シルフィとは年齢も近い事もあり直ぐに友達になった。
出逢った時の印象は正直、のほほんとした子で、なんとなく危なっかしいなと思わせる子だった。実際、シルフィは何だか眠たそうにフラフラとした時なんかがあった。
でも、芯の処はしっかりとした意思をもっている。
シルフィは私が高い魔力を内包している事を教えてくれたりと魔法に秀でている。特に風属性の適性が高く、上位の魔法も扱えるみたい。
私にとって、シルフィは大事な友達。
『―友のピンチには駆け付ける』
そう、御互いにあの日に誓いを立てあった。
だから……必ず助けに行く。例え一人でも!
私は1人でもシルフィの救出に行こうと準備を始めた。
アルトから強化して貰った特性のルビーロッドを持ち、闇夜に隠れやすい紺色のローブを着こむ。目的の方角の分かる道具。携帯の食料などを鞄に詰めた。
そして、皆静まる夜になった頃、私は1人集落を抜けて行こうとした。
だけど、
「…こんな夜遅くにどこへ行こうと言うんだ、ミリー?」
「えっ!?」
集落の門に背中を預ける様に立っていたのは、私の御願いを拒絶したはずのアルトだった。
***
まあ、ミリーならこうすると予想し気配を殺しながら待っていた。
門を背にしている俺に気付いたミリーが近づいてきた。
俺もミリーに近付く。
「……どうして、アルトがここに?」
「…そりゃ、どこかの馬鹿が此処を通って、馬鹿をやりに行くと思ったからだな」
「ば、馬鹿ってなによ!……止めるの…アルト?」
馬鹿呼ばわりされ、俺に止められると思ったのか構える様に睨んでくるミリー。
「いや、止める気はないぞ。但し…」
「止めないの?それに但しって?」
「俺も付いて行ってやるよ」
「………えっ?」
間の抜けた顔をしているミリーに俺は口を笑みにしながら答える。
「だから、付いて行ってやると言ったんだよ。ミリーだけ行かすのはどうも不安だからな。だから付いて行く。まあ、それだけだ」
「うぅ、でも、どうして?…さっきは助けてってお願いした時は拒絶したのに?」
「他人の為に力は使わない。これが俺の流儀だ。だからさっきは拒絶した。だが…」
俺はミリーをしっかり見詰めながら答えた。
「ミリーは俺のパートナーだ。そのパートナーが1人で無茶をするのなら俺が支える。ただ、それだけのことだ」
「ふぁ~」
俺の答えを聞いてミリーの頬が赤くなった。俺を見る目も潤んでいる様な気がする。
そんなミュリアが涙目で笑顔と言う変な表情でアルトの胸をポカポカ叩きながら答える。
「バカ、バカバカ!最初から行くんなら、そう言ってよぉバカぁ!」
「いや。最初から行く気なんてだからないと言っただろ。無茶な真似をするパートナーを支えるだけなんだからな」
まあ、いくつか他に理由があるんだけどな。
そんなやり取りの後、近くで俺達の様子を見ていたカンスとシーラが呆れた様に話し掛けて来た。
「…お前等、緊張感ねぇな、ほんと」
「そうね…これから帝国の奴らと一戦行うって言うのにね」
「……本当に、大丈夫なのでしょうか?このような人間に任せるのは?」
「えっ!?皆居たの!?」
カンスとシーラも気配を消して潜んでいたのに気付いていたが、2人だけでなくエトとか言うウサ耳女もいたか。
取り敢えず、『このような』とか言ってたがスルーしてやるとしよう。
あまり時間もないしな。
「まあ、気にするな。とにかく行って来るぜ。村の警備は任せるぞ」
「あぁ。本当は一緒に行きたいが、しょうがねえしな。村を空けるわけにもいかねえし」
「そうね。残念だけど此処で待ってるわ。…あと、ちゃんとミュリアを守ってね」
「ああ。解ってるさ。それじゃ行って来るぜ。夜のうちに終わらせて朝にはその巫女って子を連れて戻るからな」
「えっ?朝までにって、うにゃ?なんでアルト、私の手を握ってるの?」
アルトはカンス達に朝にまで戻ると告げるとミュリアの手を握った。
色々と訳が分からず混乱しているミュリアを他所に、アルトは空いている方の手に握っている“転移石”を発動した。
発動した瞬間2人の体は光り輝くとその場に2人の姿はなかった。
「……頼んだぜ、アルト」
「……無事でありますように」
「……巫女様。どうか御無事で」
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