2-4.Ⅲ:翼…結界晶石『オベリスククリスタル』

魔除けの結界の強化をする為に族長宅を出る.


「おぉい!アルト出て来たのか、心配したぞぉ!」

「こんにちは。出てきたと言う事は何か作っていたのか出来たってことね」


カンスとシーラに出合わせた。アルトはこの2人なんかいつも一緒にいる気がするんだが?と思ったりする。


「おう、さっき完成したんだよ。これから村の結界の強化に行くつもりなんだよ。ああ、あとコイツありがとよ。シーラが作ったんだろ感謝するぜ」

「ふふ、いえいえ…あら、ふふ」

「ぶ~」

「ククっ、不貞腐れてるなミュリア。…そうだ、その結界強化俺達も付いて行ってもいいのか?」


村の結界強化に行く事とホルスターの礼をするアルト。

そんな礼をしてくるアルトに笑みを浮かべつつ頬を膨らませるミュリアに更に笑みを浮かべるシーラ。

そんな様子を面白いと思いつつ自分達もアルト達がこれから行う結界強化に随伴していいのか確認するカンス。


4人で歩いているとアルトは何だか自分に視線を向けられていると気付く。

視線に目を向けるとミュリア、カンス、シーラの3人共がアルトの顔、と言うか眼をジッと見つめてくるようだった。


ジッと見つけてくるミュリア達に不思議そうに「なんかついてるか?」と聞くと、ミュリア達が気付いた事を聞く。


「……そう言えば、なんだけど。アルトの右眼。瞳の色が変わってない?」

「…ああ。変わってるよなぁ。確か、3日前までは黒、だったよな?」

「……そうよねぇ。今はまるで宝石のようなクリアブルーですものね」


3人共、どうやらアルトの右眼の色が変わった事が気になった様だ。


「ん?あぁ、コレか。コレは”碑眼”って技能を得たらこうなっただけだ。変か?」

「うにゅぅ、変なんてそんなことないの」

「ああ、むしろ色違いなんて格好良いじゃねえか、なぁシーラ」

「格好良いかはともかく、凄く引き寄せられる感じがするわね。まるで宝石の様」

「うん。私もそう思うわ!綺麗な宝石みたいで綺麗だにゃ~」

「……そうか、まあ変じゃないならいいか」


うっとりと目を輝かせている女性陣にやっぱり女は光物に目がないんだな、と苦笑するアルトだった。



集落の中心に着いた。

その中心には結界の魔力を帯びた10メートルはある長方形の先端がピラミッドになっているオベリスクがあった。そのオベリスクこそが魔除けの結界を生み出すアーティファクトなのである。

実を言うと、アルトはこれの存在を恐らく誰よりも知っている。

なぜならこれを作り出したのはかつてのアルトなのだから。


(昔に俺がアイツと共に過ごした中で闇夜族の風習とか変えたんだよなぁ)


悪意を遠退ける【魔除けの結界】、正確には【結界晶石】と魔晶石を大規模にした結晶体であるこれをいくつも作製した。

ほかにもアルトは闇夜の獣人族の殆どに風呂に入る風習もなかった事で起きた病気関連に関わり入浴の風習を作ったりもした。


アルトは魔除けのオベリスクに近寄ると作った結界強化のアーティファクトのクリスタルを取り出すと、オベリスクに当てる。すると、当てたクリスタルは光ると、そのままオベリスクの中に溶け込んでいった。

そして、全てがオベリスクに取り込まれたその瞬間、オベリスクからオベリスクの結晶体と同じ色をしている青白い光の柱が上空目掛けて放出された。

光は夏オベリスクに驚きの表情を浮かべるミュリア、カンス、シーラ。村の者達も突然の光の柱に目を向けていた。

放出された光は上空で拡散すると新月の森全体に降り注いでいった。

どうやら成功した様だと、アルトは確信した。

神秘的な光が上がった事に驚きのまま3人が不思議そうな表情のままアルトに尋ねる。


「わあ、綺麗な光なの…ねぇアルト、成功したの?」

「ああ。”碑眼”で確認したから分かる。どうやら問題なく大結界は機能している。これで、この集落、並びに闇夜の血以外の者がこの森周囲に侵入すれば直ぐに結界が起動され、侵入者は迷いの霧に当てられていつの間にか森を出ているようになる。ふふふっ」

「そ、それは便利だなぁ。…ん?それだと、アルト、お前森に入るたびに結界が作用すんじゃねぇか?」


カンスが、人間であれば機能すると聞いて、アルトも人間なのだから機能が働くのではと心配する。


「それなら当然対策は取ってあるさ。いくら俺がうっかりでもな」


アルトが仕込んだ機能には、あらかじめ魔力を認識させることで、作用効果の対象から省く事が出来るのだ。

因みに、魔力を似せるなどの手段をもってしても、人それぞれの持つ魔力には多少の誤差が必ず発生するので欺くことは絶対できないように作られている。

そう説明した後、さすがに3日間ほぼ完徹でアーティファクトの作製に取り掛かっていた為急激な眠気を得始めるアルト。

眠気からフラフラとするアルトをミュリアとカンスに支えられながら自分の部屋に戻るとそのままベッドにダイブすると眠るのだった。


「グー、グー…」

「ふふ、お疲れさま、アルト」



アルトはこの時6時間眠りにつくのだった。

その間に、この新月の森の近隣に位置する、満月の森。その満月の森にある集落にて事件が起きたようだった。


その事件が、アルトと白銀の翼を持つ巫女の少女との新たな出会いを齎す事になるのだった。



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