2-4.Ⅱ:翼…アーティファクト作製開始➁:現代兵器『銃』誕生

1時間程仮眠を取った後、アルトはいよいよ錬成銃の作製に入った。


“錬成”による黄金の魔力光がスパークを上げつつ色んな鉱石や魔物の素材を混じり合わせ”黒鋼”と”隕鉄”を生み出していく。

そして作り出した”黒鋼”と”隕鉄”をいくつもの別の物質へと形を変え、アルトのイメージした形へと変化させる。


だがなかなか上手くいかず失敗を繰り返していた。

銃の理論や概念は色々興味から調べて理解してはいる。

だが実際に実物を見たわけでない。その為、試行錯誤しながらの作成となった。

しかも今作っているのは科学技術と魔法技術を合わせたものなのだ、簡単にはいかなかった。

パーツ一つ一つの組み合わせから、必要な素材の調合。

いくつも試作品を作ってみたが、アルトのイメージし描く銃とは程遠かった。

2日目は失敗続きで終わった。



自室に籠りアーティファクト作製を始めて3日目を迎えた。


流石のアルトも昼夜問わず殆ど不眠不休で【銃】の作製に疲労が見えていた。

そして、どうしてもイメージ通りに行かない事にアルトは少々苛立っていたりする。

アルトは失敗続きによる苛立ちを抑える様に大きく息を吐く。


「くそっ、こうもうまくいかんとはイライラするな。――はぁ…しかたない、か。アレに頼るのはあまり気が進まんが、こちらも埒があかんし、仕方ないだろうな…」


アルトは溜息を付くと気が進まないなぁ、と“王権律レガリア・ウルク”を発動し一つの技能を引き出した。

王権律レガリア・ウルク”にて引き出し習得する技能。それは“碑眼”と呼ばれる技能だ。

この技能はその目に捉えた本質や概念を読み取り理解する事が出来る能力だ。

アルトはこの力でうまくいかない部分の本質や概念を理解し把握する気でいるのだ。

ただ、この“碑眼”の能力は習得してからある一定期間使い続けると、“碑眼”は“神眼”と呼ばれる“碑眼”の上位能力に覚醒するのだ。

この”神眼“はこの世の全ての情報を覚醒者に伝え理解させる能力だ。

“碑眼”は使用者の意思で行使可能。つまりオンオフが可能なのである。

しかし”神眼”は常時発動する。能力をオフにすることが出来ないのである。

常時発動し、ありとあらゆる情報を覚醒した眼を通じて覚醒者の脳に直接伝達するのである。

無論多大な負荷を強いてしまう。

実際、過去のアルト=アルゴノートは覚醒時、”神眼”が齎す負荷に耐えきれず右眼と頭に激痛を味わい続ける事になった。

”神眼”を抑え込む為に【大賢者】を筆頭にした仲間の助力にて、”聖骸布“と呼ばれる能力を抑える布で額と覚醒した右眼を覆う事で”神眼“を抑え込むことが出来たのである。


アルトは過去のあの激痛をまた体験するのは嫌だが、まったく新しい物を生み出すのに“碑眼”の能力は必要だなと至った。

そして、アルトは“碑眼”を過去と同様に右眼に修得した。

習得した証からアルトの右の瞳は黒から、かつての自分の色である水の様に澄んでいるクリアブルーに変色するのだった。


ふと部屋にあった鏡を覗くアルト。

自分の右眼が済んだ青に変わった己の眼を見詰め以前感じていた違和感が薄まるのを実感した。

あと、右眼の瞳がクリアブルーで、左眼が違和感のあった深い深海の如く黒の瞳のオッドアイになった己の顔に思わず、「…なんだか中二みたいだな」と呟くのだった。


「まあ、いいか」とアルトはさっそく右眼に宿った“碑眼”を発動した。

すると【錬成銃】の本質と概念を読み取り、何がうまく行かなったのか理解出来ていなかった部分を合わせて理解するに至り”碑眼”を通じて頭に浮かんだイメージ通りに作製を再会し始めた。


そして、始めて1時間が経過した頃、ようやく1つの錬成銃の各パーツを作り出す事にアルトは成功した。

逸る気持ちのままさっそくと出来上がったパーツを組み立てていく。

20分程経過した後、組み立てが完了した。

この“アストラル”にはない、“地球”の兵器と呼ばれる武器である『銃』が誕生した。

完成した錬成銃は弾倉6発の大口径リボルバー式の銃の形状をしていた。


銃の完成後アルトは弾丸の作製に入った。

作製中の弾丸には特殊な細工を施しつつ作っていく。

種類はまず2種類。

アルトの持つ各基本属性に加え、特殊属性である雷と、アルトだけが持つ固有属性である光の魔力を籠めた属性弾。あと能力付加にてその技能の能力が付加された特殊能力弾だ。

アルトは現在、”呪喪刻印”と呼ばれる正体不明のバッドステータスの影響で属性に関わる魔法や技能を展開する事が出来ない。

その為、属性付加によって作り出した魔晶石を攻撃武器にしていた。

だが、これによりアルトは魔晶石以上の戦力を得たと言える。

魔晶石は発動に際して詠唱は必要ない。だが発動には魔力を注ぐ必要があった。

しかも魔晶石を発動させた後は相手に向かって投擲する必要もあった。

だがこの錬成銃にはそのアドバンテージは存在しない。なにせ、発射と同時に発動は機能しており秒速の速さで相手に命中するのである。

また後者の能力付加の弾には、アルトの持つ固有チート能力である“王権律レガリア・ウルク”の力を最大限発揮できる。“王権律レガリア・ウルク”は使用者の望んだ技能を引き寄せ習得できるというものである。

初期の技能であろうと多くの技能を籠める事が出来るのは有利と言えた。

あと、通常の火薬を用いた弾や、相手を無力化したり脅す際にと殺傷性の少ないゴム弾なども作製した。


アルトはある数の弾丸の作成を終えた後、傍に残った素材を見て、「もう1ついけるか」と今度は別の形状のピストル型の銃を作る事にした。

先に作った際に要領を得たのかスムーズにパーツを次々作り上げ組み立てていった。


心に余裕が出来たのか、アルトはピストル銃の組立ちをしながら、あの洞窟での事を、1つの疑念点を思い返していた。


(一体誰が、プリズドオーガを倒したのか……)


****


気絶していたアルトは目が覚める慌てて上半身を起こそうとした。

すると、アルトの視界には自分に抱き付くように眠っている猫耳少女ミュリアの姿が映った。何がどうした?と困惑しつつ周囲に今度は目を向ける。

すると自分達の近くで、首から上がない、つまり頭のない、先程まで闘っていたプリズドオーガの死骸があるだけだった。


(何が、あったんだ?……ミリーに怪我は、無いか)


安堵するような微笑みを浮かべながらアルトにしがみ付いて眠っているミュリアに怪我は無く、ただ眠っているだけだと分かりて安堵するアルト。

安堵した後、ミュリアを優しく引き離した後、現状の把握の為にとプリズドオーガの死骸に近づいて行く。

プリズドオーガの死骸にはアルトから受けた体の中心から縦に割れた大きな傷と細かな傷があった。

だが、問題なのは、まるで超高温の魔法によって蒸発させられたように見える頭部と右腕だった。


「これは……魔法によって消滅させられた、と見るべきか?…だが、コイツの装甲は魔法を弾くんだ。並み大抵の魔法ではこうはならないはず……俺の殲滅光魔法か、アイツくらいならいけると思うが……まさか、ミリーがやった、訳ないよな」


死骸を調べたアルトは怪訝そうな表情のまま疑問を抱いた後「まさかな」とミュリアの方に視線を向ける。

アルトには覚えがあったのだ。

過去において、あの魔法装甲の弾く防御を突破する魔法を。その1つに。

確かにミュリアはその可能性を秘めているかもしれない。

アイツと同じ血筋なら可能性はあると。

しかし、ミュリアが習得しているのは、アルトが“王権律”で習得し、教えた下級の四元素属性魔法だけだったので「いや、ありえないか」と考えに至った。

疑念は残ったが、考えても分からないので一先ず目的であったプリズドオーガの死骸を“錬成”を用いて素材に分解し、分解した素材を大きな布の袋に入れた。


袋に入れ終えた頃に丁度ミュリアが目を覚ました。

ミュリアは目を擦る様に可愛らしく欠伸をした後、「あれ?あれ?」と慌てた様に何かを思い出したのかキョロキョロと視線を周りに向けるとその視線はアルトを捉えた。

ミュリアはアルトを見つけた途端、飛び掛かる様に抱き付く。

アルトは涙目に自分を心配するミュリアを宥め安心させるために、自分は大丈夫な事を伝え安心させた。


そして、ミュリアが落ち着いた後、アルトは自分が気を失った後の事についてミュリアに尋ねた。だがミュリアも記憶が曖昧で何があったか覚えていなかったようだ。

微かに誰かの声を聴いた気がする。くらいだった。


取り敢えず疑問は残ったが目的は達したとミュリアと共に洞窟を抜け、集落に戻った……


****


そんな風に回想をし終えた頃に、二つ目の錬成銃が完成した。

ピストル型用の弾丸の作成を終えた後、アルトも3日間ほぼ不眠不休で作製していたテンションから普段では大きな声など上げないアルトだが椅子から立ち上がると「出っ来たぁ――!!」と腕を大きく上げながら大きく声を上げ叫んだ。


アルトが叫んだ瞬間、部屋の扉がバタンと壊れるのではないかと思うくらいの勢い開いた。扉を開け放ったのは「物凄く心配だった!」と言わんばかりのミュリアだった。


実を言うと、この3日間ミュリアは殆どアルトの部屋の扉の前を行ったり来たりと、殆ど扉の前にいたのであった。

そのミュリアの様子を見ていたカンス達村の人達は飼い主に構ってほしい犬の様と苦笑していた。ミュリアは犬ではなく猫なのだが。


「どうしたのぉ!? いきなり大きな声で叫んで!?」

「ん?あぁ、ミリーか。いやぁ、悪いな、やっと出来上がった!と思ったらなんか叫びたくなってな」

「出来たって……異世界の武器って言うの?」

「そうだ。あと村の結界を強化するのも出来たぜ」


満足気に笑みを浮かべるアルトは机にある出来上がったリボルバー式の所謂マグナム銃を手に獲ると壁に向けてリボルバー銃を構えた。


「わぁ!それが…じゅう?っていう物なんだ。…あっ、あとこれ頼まれていたの」


ミュリアは銃を構えるアルトの姿に「格好いいなぁ♪」と呟きつつ、アルトから事前に頼まれていたものを渡す。

ミュリアがアルトに渡したのは、作製した銃を収納する為のホルスターだ。

自作しても良かったのだが、恐らく心配させるだろうと思い部屋に入る直前にミュリアに頼んでおいたのだ。


「おぉ、サンキュな。えっと…うん、依頼通りだな…」


ミュリアから受け取ったホルスターは足の太ももに巻き付け装着するタイプで試しにとアルトは受け取ったホルスターを右足に装着した。

そして足に装着したホルスターに構えていたその手のリボルバー銃を収納した。

着け心地は問題なかった。

しかし、黎明学園の学生服に銃や刀を持っている姿にアルト的に違和感が大きくなっていた。


「……ボチボチ、衣装チェンジする頃かな」

「ちぇんじ?」

「何でもない。ありがとうな。これ、大事に使わせてもらうぜ」


感謝の言葉をミュリアに伝えたのだが、なぜかミュリアは居た堪れないような心境だったのか落ち込んだ表情をしていた。

その急に落ち込んだミュリアの様子に「どうしたんだ?」と尋ねると、どうやら初めはミュリアがアルトを待つのに気を紛らわせたらいいなとホルスター作りに挑戦したのだが、まったくうまくいかなかった様で何度も失敗し指を針で刺しては「うにゃあァ」と涙目になり悲鳴を漏らすミュリアを見かねたシーラが苦笑しながら変わったとの事だった。


(……ミリーは“壊す側”かもしれないな)

「……アルト、なんか失礼な事思ってない?」

「……そんなことはない。さてっと、村の “魔除けの結界クリスタル・オベリスク”の強化に行くかぁ」

「むー」


「……不器用なだけだもん」「…アルトの事が心配だっただけだもん」と小さく呟きながら膨れているミュリアの頭を時折獣耳を苦笑しつつ撫でた後、結界のあるトコに向かった。

髪や猫耳をアルトに撫でられた事で次第にミュリアの機嫌も良くなった。

頭や猫耳を撫でられている時に「うにゃ~」と頬が赤くなり緩んでいるミュリアの様子を見て、「猫みたいだな~」と(なにこの可愛い生物)と思うアルトだった。


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『武器データ』レア度Ⅰ→Ⅹまで。聖剣クラス【Ⅸ】神具クラス【Ⅹ】

シン・アルゴノート(アルト)

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『錬成剣【雷切】』

分類:アーティファクト

レア度:Ⅶ

効果:属性付加【雷】:能力付加【切断力上昇・魔力耐性・構造強化・魔力回復・自動修復】

説明~シン・アルトの“錬成”によって作成された地球の刀に似たアーティファクトの刀剣。刃の部分はクリアイエローのように輝いている。雷の属性を持つ。この刀剣の存在だけでも激しい奪い合いとなる可能性を持つチート剣。

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『錬成銃【マグナム銃:バリスター】』

分類:アーティファクト

レア度:Ⅷ

説明~シン・アルトの“錬成”によって産み出された科学と魔法の融合したこの世に一つしかない現代兵器。形状は弾倉6連の大口径リボルバー銃。魔力の調和性のある“プリズムナイト”を含む色んな鉱石や魔石を“錬成”で強化された“コントラクトナイト”製の銃。この世界では最高の強度を持つ。威力重視で開発された為反動が強く連射性は低い。魔方陣もなく魔法詠唱要らずで、魔法以上の威力を持つ故、この世界の者は動揺する事は間違いない。

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『錬成銃【ワルサー銃:ヒューザー】』

分類:アーティファクト

レア度:Ⅷ

説明~シン・アルトの“錬成”によって産み出された科学と魔法の融合したこの世に一つしかない現代兵器。ピストルタイプの銃。魔力の調和性のある“プリズムナイト”を含む色んな鉱石や魔石を“錬成”で強化された“コントラクトナイト”製の銃。この世界では最高の強度を持つ。魔方陣もなく魔法詠唱要らずで、魔法以上の威力を持つ故、この世界の者は動揺する事は間違いない。錬成銃【マグナム銃:バリスター】の後に作成され、【マグナム銃:バリスター】より連射性に富んでいる。

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弾丸リスト~

属性弾【発火弾『火』:炸裂弾『火』:陽電子弾ローエングリン『光』:加速弾レールガン『雷』】

特殊徹甲弾【誘導弾:反応弾:静寂弾サイレンサーetc】

通常弾【火薬弾:ゴム弾】

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