2-4.Ⅰ:翼…アーティファクト作製開始①:『雷切』誕生
アルトは夢を見ていた。
自分の中では2年、この世界の時間軸では1000年前の思い出を。
あの懐かしく充実とした毎日。アイツと出逢い共に過ごし……そして、共にこの
その冒険の中で出会った仲間達。
時にはぶつかり合った時もあった。
それでも、色んな事を得る事が出来た日々。
楽しかった夢は、ふと、儚い夢に変わった。
その瞬間、アルトは夢から目覚めた。
1000年もの時が経過し再び舞い戻ったこの世界に。
新たに出会ったアイツと似た、アイツとの様に大切かもと思わせてくれた少女と出逢ったこの世界に。
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ここは闇夜族の国である『夜国』にある獣人族が暮らす集落の1つ。
その集落をまとめる族長宅。その一室に、1人の黒髪黒瞳の人間の少年が真剣な表情を浮かべつつ何かの作業を行っていた。
その少年の名はシン・アルト。
過去において【アルゴノート】と言う名として、闇夜族を支配し人間に戦いを挑んできた【闇夜の魔王】を討伐し、その後1つの王国を作り世界を平定した“英雄王”の称号で世間から語り継がれている人物その者である。
最も、”英雄”と”魔王”の戦いは1000年前の出来事である。
なぜ1000年もの時代のアルトが、この1000年の時を経たこの“アストラル”にいるのは”精霊王”の悪戯と言える。
さらに戻って来た時から色々重なった出来事を経て、自分の力不足を再認識した。
アルトはそんな力不足に対してどうするか考えた結果、自身の技能“
この世界には“創る者”と“壊す者”の二種類存在している。
過去において、【英雄=アルゴノート】を知る者は、その他者を寄せ付けない傲岸不遜な態度や、固有属性である”光”の殲滅魔法や”
だがそれは違うと言えた。
元来、アルゴノートは“創る者”に分類されるのである。
それは、この世界に戻った彼のステータス技能に記されている。
“創造”と“料理”
元々はこの2つのみだったのだ。
特に“料理”スキルは旅での生活に必須だったので自然と身に付いた技能と言える。
他の技能は“精霊王”から得た“
故に最初からアルトが産まれ持って所持していた技能は“創造”と呼ばれる、物の構造を読み取り、物の物質を別の物質に変換、合成したり、そして物を作り出す。云わば鍛冶職に該当する技能だった。
もっともアルト=アルゴノートの“創造”は一般的な能力を超えアーティファクトすら作成する事が出来る程だった。
アルト=アルゴノートは過去にこの技能を極め多くのアーティファクトを生み出した。
そしてその作製し生み出したアーティファクトの大半は、三大神器と呼ばれている”王鍵”の中に納められ封印されている。
アルトはいずれそれも回収するつもりだが、
+
素材集めにと潜った洞窟からミュリアと共に集落に戻ったアルトは、集落に戻って来ると直ぐに自室に入ると扉を閉める。
怪我の類はないがボロボロの状態のアルトを心配するミュリア達に「これから3日間!集中してアーティファクトの作成に入る。神経を研ぎ澄ませて行うんでな、絶対誰も入って来るなよ!邪魔をしたらただじゃおかないぞ!」と、鬼気迫る様に告げた。
この時あまりの迫力の籠ったアルトの声にミュリア、カンス、シーラの3名は背筋が震えるかの様に感じたのだった。ミュリアや他の、カンスやシーラを初めとした集落の者達はボロボロで疲労困憊の様相だったアルトを心配だったが、取り敢えず3日待っていようと納得するのだった。
アルトは早速この集落の中央にあるこの集落地帯を守る結界を発生させるアーティファクトを強化するアーティファクトと、錬成刀の作成に入った。
ミュリアは「だいじょうぶかなぁ」とアルトの部屋の外で心配そうにハラハラとした様子で、カンスやシーラはそんなミュリアを苦笑しつつ宥めていた。
+
一室内では今、アルトの放つ“錬成魔法”による、黄金色の魔力光のスパークで染まっていた。
アルトは部屋に籠ると早速とばかりに、まず”結界強化”のアーティファクトから始める。
このアーティファクトが最も簡単に生み出せるからである。
なにせ基が既にあるで色々とアレンジを加えるだけで完成できるからだ。
無論完成させるのに必要な素材がなくてはならなかったが今回その素材も揃ったので問題はなく作製に至れたのだ。
半日で完成させるに至った。自分でも出来の良い物が出来たと自負する程だった。
本来この手のアーティファクトを完成させるのには何ヵ月も掛かるはずなのだ。
だがアルトは経った半日で完成させてしまった。”練成“技能持ちの者が知ったら驚愕するに違いない。
出来た上がったアーティファクトは30cm程の大きさのクリアブルーのクリスタルの様な形をしており、クリスタル内に何やら術式が組み込められている板状のクリスタルが組み込まれていた。
そして、次に取り掛かったのは錬成剣。
錬成剣は過去にも多く作製しているので、それほど手が掛かる事もないと履んでいた。
ただ違いがあるとすれば、今回作製する武器の形や特性が今までにない者であるという点のみだ。
その形は剣ではなくこの【アストラル】の世界では恐らく馴染がなく、異世界に転移した国では馴染み深い”刀”の形状をイメージしていた。作製のイメージは日本刀に決めていた。
アルトはまず魔石と魔物の一部である素材を取り出すと二つの物質に分解し再構築していく。
一つは柔軟性に長け武器の形を形成し易い”
アーティファクトの作製に欠かせないのがこの二つの素材なのだ。
”黒鋼”だけではただの武器でしかない。
”隕鉄”だけではただの装飾品でしかない。
無論この二つを錬成させるのにも時間と経験が必要なのである。
この二つを掛け合わせて生み出されるモノこそがアーティファクトに分類される武装なのである。
アルトはまず”黒鋼”の錬成を行う。50の魔石とプリズドオーがを倒して手に入れた装甲を分解した素材を組み合わせていく。
そして完成した”黒鋼”は漆黒の長方形型の粘土状の形をしている。
”黒鋼”の作製を終えると、純度の高いクリスタルと言った結晶体20個を凝縮させ一つの結晶体に重ね合わせる。そして重ね合わせた結晶体にアルトは魔力を混ぜ合わせていく。
するとアルトの魔力に反応し結晶体は
”隕鉄”の作製に成功したアルトは試しに20㎝位の結晶体を手に取ると魔力を注ぐ。すると結晶体からバチバチッと電気が発生する。
属性付加に成功を意味し満足するアルト。
次の工程に移るアルト。
作製した”黒鋼”と”隕鉄”を混ぜ合わせ一つに合成するのである。
机に”黒鋼”と”隕鉄”を並べる。そしてフッと息を吐くのと同時に二つに手を翳し魔力を迸らせる。
弾ける様な魔力光はスパークを上げ二つの物質を一つにしていく。
そしてこの工程に更に加えていく。
一つにする時に武器の形に形成するのだ。
武器の形成に必要なもの。それはイメージ力である。
イメージが明確であればある程、アーティファクトの質も向上する。
武器としての強度、刃の殺傷力、付加される能力の練度が違うのである。
バチバチっとスパークを上げていた魔力が収まっていく。
形成に成功したのである。
そして異世界の剣である【刀】が誕生した。
掛かった時間は1時間程であった。
有り得ない速度の錬成スピードである。
神業の如く速さを見せたアルトは完成した刀に目を向ける。
完成した【刀】は、形は柄のない直刀である。
刃の面が黄色くほんのり光を帯びている。波紋はまるで雷のようであった。
「…完成、だな。……雷を帯びた刀だからな……そうだな、やっぱりアレがいいな…」
アルトは完成した【刀】に名を付けようと考えて、、かつて博物館で見学した際に一番イメージが湧き、イメージしやすかった刀、その銘を貰う事にした。
その銘は雷を斬ったと謡われていた名刀【雷切】。
その銘を付けた。
更に【雷切】を納める鞘を作成した。
無論こちらの鞘もただの鞘ではない。
【雷切】自身には雷の属性を帯びており、魔力を弾くプリズドオーガの装甲から“錬成”した素材”プリズムナイト“を用いている事から、高い魔力耐性を有しており、特にその名の由来と言える雷を斬る事も出来るのである。さらに雷のエネルギーを開放する事で所有者に雷を纏うことも出来るのである。”纏雷”の技能を再現する事が出来るのである。
無論雷に対して耐性を持たない者には扱えない代物である。
雷に未耐性の者が扱えば高圧力の雷で全身を焼かれ黒焦げと言った具合になる。
アルトには高い耐性に、光の派生属性である雷を既に有しているので、雷を纏う事も普通に可能である。
あとは、刃の部分に振動を与える機能がある。切断力向上にと振動を与える風の属性を付加させている。さらに加えて硬度も最高クラスで、黒塗りの部分は特に高く、重量のある魔物に踏まれても折れず曲がる事もない程である。
鞘にも一工夫されており、所有しているだけで所有者に魔力に対する抵抗力を向上させてくれるし、鞘に刀を納めるだけで刀を最高の状態に磨いてくれる便利能力もある。
まさにチート刀が出来上がった。
この
因みに二振り存在する【聖剣】の一振りの所有者はアルトである。
現在は三大迷宮と呼ばれるうちの何処かつに封印されている。
そして、アルトはいよいよ錬成銃の作成に入った。
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