2-3.Ⅴ:翼…洞窟探索⑤”秘められし魔法”

(=^・^=)―

ミュリアはその時に始めてその”魔法”を使った。たとえその時が記憶から失われていたとしてもである。

確かにミュリアは行使したのだ。

嘗てこの世界で唯一扱う事が出来た【魔王】と呼ばれたものと同じ魔法を。





アルトから援護を任された後、ミュリアは突如としてプリズドオーガを圧倒する動きを見せるアルトに。

動体視力が優れているミュリアでも、アルトの動きは何とか追える程度だった。

それほどアルトは身体能力を発揮していた。

そのアルトに援護を頼まれ、今まで自分の修練の成果を見せるチャンスと今回初の4属性魔法同時展開を発動した。

発動と一緒にアルトから驚けのある視線を向けられミュリアはアルトを驚かせる事に成功したと喜び笑みを浮かべる。

そして…アルトの凄まじい一撃によってプリズドオーガは縦に切り裂いた。

ミュリアは素直に凄いなぁと思った。あんな巨大で強い魔物を倒すなんて、と。

そして…圧倒的な身体能力を発揮していたアルトの体から発していた力が消え、疲労感が押し寄せふらつく様子のアルト。

ミュリアは慌ててアルトの元に走る。支えてあげないと、と思い。

だが次の瞬間、ミュリアはさらに慌てた。それは敵がまだ生きている事。そして疲労がピーク状態で気付くのが遅れているアルトにミュリアは叫び警戒を促した。

ミュリアの声に何とか反応したアルトだったが軋む体では対処出来ず、何とか腕でガードするもプリズドオーガの一撃を喰らい壁に打ち付けられた。

そして…アルトが気を失っている光景を。

そして…プリズドオーガが意識を失っているアルトに近づきその腕を振り上げた瞬間を。


今の状態でプリズドオーがの攻撃を受ければアルトは死ぬ。

”アルトが死ぬ”

そんなの嫌ぁ!心の内からそう叫んだ瞬間だった。

ミュリアの視界はなんだか白黒の世界の様に映し出されていた。又周囲の動きが遅いとも感じた。

不思議がるミュリアに何処からか一つの女性の声が届いた。

自分に届く声が何なのか?幻聴が聞こえたのでは?

そんな事、ミュリアにはどうでも良かった。

彼(・)女(・)が望んだのは唯一つ。“アルゴノートを守る”という事だけだった。

彼を守れるのであれば何でもいい!


ミュリアは聞こえてきた、どこかで聞いた様な気がする女性の声に導かれる様に右手をプリズドオーガに向け狙う。

そしてミュリアは唱えた。かつて、とある幽角族の女性だけが扱う事が出来た【英雄・アルゴノート】の”光の力”の対として語られし最強の“闇魔法”を。


「”黒炎“!!」


唱えた瞬間、プリズドオーガがアルトに向け振り上げようとしていた右腕が突如漆黒色の闇の炎に包まれた。

プリズドオーガは絶叫し突如黒炎に包まれた右腕を振り黒炎を消そうとした。だが一向に消える気配がなかった。

そして、瞬く間に右腕が消滅したのだった。

プリズドオーガは自身の右腕を消した相手であるミュリアに畏怖を孕んだ視線を向けた。

なぜ魔法の効かないはずの自身の体の一部が消えたのか?

なぜこんなにもかの小さき存在に畏怖の感情を持つのか?

そんな風に感じてしまうなど1000年間無かったのだから。


ミュリア自身も驚いていたが、これならプリズドオーガを倒せると今度は先の無詠唱でなくよりイメージしやすい様にと完全詠唱を行った。


「永劫不変なる漆黒の炎よ!我が眼前の敵を飲み込みその魂をも燃やしつくせ!“黒炎”!!」


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闇魔法:黒炎 魔法位:帝級 

●視界に入った標的を魂まで焼き尽くす獄炎の炎。この炎は一度発現すると使用者が止めない限り永遠に燃やし尽くす効果を持つ。更に魔法無効化の効果を更に無効化する事が出来る。

但し、消費魔力が大きい為連発するのは難しい。

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ミュリアは自身の超感覚を有する猫耳にてしっかりとアルトの呟きうっかりを聴き取っていた。

ミュリアはプリズドオーガの弱点である頭部の角を狙った。

プリズドオーガの源はこの角なのである。

呪文が完成すると、プリズドオーガの頭が黒炎に包まれた。プリズドオーガは絶叫を上げていたがそのあらゆる存在を燃やし尽くす漆黒の炎はその絶叫すらも燃やし尽くしてしまった。


残されたのは首から下だけの体となり絶命したプリズドオーガはその場に仰向けに倒れた。


ミュリアは信じられない思いだったが、そんな事よりもアルトの安否が気になった。先程の“黒炎”を使い、魔力の殆どを消費し魔力酔いの状態でフラフラとしながらもアルトの所まで歩み寄ると壁に埋もれるように気絶しているアルトを何とか横にすると、ミュリアは自分の唇の先を噛み血を滲ませるとアルトに口付けて“血癒”による治療を行った。

真紅の光と共にアルトの怪我¥が治ったのに安堵すると、ミュリアは周囲に敵影がないか確認する。

周囲に敵の影がない事を確認した後、”闇魔法”と“血癒”を施したこともあり魔力が完全に枯渇状態となった為、ミュリアは急激な眠気からアルトにしがみ付くと眠りについた。



眠りに付く寸前のミュリアに何者かの意思が微笑むように一言告げた。


“生きてね――の命の子”

”—―また、逢いましょ…”


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【使用可能魔法】

○ミュリア・ダークマター

『火属性』

焔の渦フレアスピン:分類【攻撃魔法】魔法位【自然級】

『水属性』

水龍アクアブレス:分類【攻撃魔法】魔法位【精霊級】

『風属性』

風刃エアブレード:分類【攻撃魔法】魔法位【自然級】

飛空:分類【補助魔法】

『地属性』

重圧プレス:分類【攻撃魔法】魔法位【自然級】

『闇属性』

黒炎:分類【攻撃魔法】魔法位【帝級】


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