2-3.Ⅳ:翼…洞窟探索④強敵「VSプリズドオーガ」
=^_^=―
ドカァーーン!!
大きな爆音で俯せに倒れていたミュリアは意識を取り戻した。
「痛た!?…ここは?…私は…はっ!?」
意識を取り戻したミュリアは何が起きたのか分からず困惑する。そして思い出した。先程までの事情を。
「そうだった! 洞窟内で急に地震が起きて…! そうだ、私は、アルトと一緒に、亀裂の入ったとこから下の階まで落ちて来たんだった……あれ、アルトは?アルトはどこ?」
ミュリアは一緒に崩落に巻き込まれて此処に落ちたはずのアルトが傍にいないことに気づいた。そしてアルトを探そうと体を起こそうとしたその瞬間だった。
「ミリー!そのまま伏せてろぉ!!」
「えっ!?」
近くから強張ったように、そして焦っているようなアルトの叫びが聞こえた。
いきなりでよく解らないが、とにかくアルトに云われた通りその場に伏せ直す。
ミュリアは伏せたまま状況確認する為、頭を上げ視線を先程聴こえて来たアルトのいる方へ向ける。すると、ミュリアの視界に映ったのは、余裕なく剣を振るうアルトと、巨大でこれまで見たことない、明らかにこの洞窟に入って段違いのレベルの魔物とが戦いを繰り広げている所だった。
Alto―
アルトはミュリアよりも早く気絶から回復した。
「イタタッ…何だってんだよ全く…そうだ、ミリーは?」
そして、自分の直ぐ傍に気を失っているミュリアに気付く。そして、とりあえず自分の状態を簡単に確かめた後、まだ仰向けで気を失っているミュリアの無事を確認するとアルトは安堵した。
何度か身体を揺すったり声を掛けるがミュリアが目を覚ますことはなかった。
時間が経てばこの寝坊助なお姫様も起きるだろうとアルトは周囲の、この落ちてきた不明な点のあった階層に様子を見回ろうとした。
眼鏡型アーティファクトである”ツール・K”は落ちた拍子に壊れたのかうんともすんとも機能しなかった。
後でまた直せばいいかと、壊れた”ツール・K”を鞄の中に戻すと、周囲に”気配感知”を展開した。
だが、直ぐにアルトは戦闘モードに意識を切り変えた。
直ぐ近くから異様な、少なくともこの
それとアルトの”感知”では、さらにこの階下に違和感があるった。
困ったなと呟くとアルトはこの空間の上方に目線を向ける。
そこには先の地震にて崩落して出来た穴の空いた天井だった。そして意識を奥の方に向ける。
そこには大きくはない階層内の奥に大きな魔方陣があり、更に奥には何やらお墓の様なものがあった。
アルトは、「なぜこんなものがここに?」と、お墓と思われるモノが少し気になったが、それよりも先程から感じていた異様な
軽く魔力反応を調べるとどうやらこの洞窟の階層内や洞窟の外に感じていた魔素はこれから漏れていたもののようだ。
アルトは取り敢えず注意しつつ魔方陣に近づくと、魔方陣が急に光だした。
「光るってことは何かが来るんだよなぁ」
そんなアルトのセリフに呼応するように周囲に充満していた魔素が魔方陣に集束していった。そして集束された魔素が大きな”何か”を形成していく。
「…拙い、かな」
アルトは直感でこれが危険な存在、今の自分より強いのではないかと感じ取り思わず呟いた。
直ぐにでも、形成前に迎撃するべきなのだが、なぜか動く事が出来なかった。
そして、光っていた魔方陣上にかつて何度か対峙した事のある魔物が現れた。
「厄介な…よりによってコイツとはな……」
アルトの前に形成され賜物は魔甲獣と呼ばれていた。
魔甲獣とは全身が特殊な装甲で出来た巨大なオーガタイプの魔物である。
頭に角がありその口は鋭い牙が生えそろっており、体は特殊な鉱石の様であらゆる魔法を弾く性質があった。そしてその強靭で、でかい両腕、そして腕より短い両足を併せ持つ姿をしていた。
以前この魔物と対峙した時には、アルト―アルゴノート―の持つ圧倒的の能力と”アイツ”の援護による最上位魔法によって撃退した。
アルトは “真眼・魔物解析”を発動した。
=======================
プリズドオーガ:魔物(魔甲獣)
危険度:赤
希少性:B
体力:1600
魔力:1000
筋力:1300
俊敏:120
耐性:1300
魔防:1000
保有スキル:魔法反射:魔法耐性:物理耐性:異常耐性:強靭:威圧:身体強化
=======================
「まじか…コイツはどうするか…というか相変わらずの耐性能力だな。頑丈に加え魔法をほぼ無効化させる奴だし、だけど…」
アルトは“鉱物解析”をプリズドオーガに発動した。するとアルトの予想通りでこの目の前の魔物の装甲はアルトにとって、ここで必ず取っておきたい素材であった。
=======================
鉱物鑑定:【プリズムナイト】
●魔法に対して高い耐性があり強度もある貴重な鉱物素材。
=======================
アルトは現在3つのアーティファクトの作成に着手していた。
一つ目は、集落の中心部に設置されている【魔よけの結界】と呼ばれている”クリスタル・オベリスク”の結界の効能を強化するアーティファクトだ。こちらは元がある為、比較的簡単に作製の目途が付いた。
二つ目と三つ目は、アルトの新たな武器だ。
まず二つ目は、このアストラルには、少なくとも闇夜族の者には認知されていない武器である。それは【刀】である。しかもただの刀ではない。魔法技術を組み合わせて作り出される、言わば【魔剣】ならぬ【魔刀】と呼ぶものである。
アルトが武器の作製を頭に浮かべると、真っ先に浮かんだのが【地球】の日本で見た【刀】だった。
今までにも色んな武器の類は作ってきたが、【刀】はまだだった。まあ知的好奇心故にとも言える。
色々と試し今回手に入れた素材で作成の目途が付いたのだ。
そして最も難関と言えたのが三つ目の武器だった。
それは恐らくこの世界の誰もその存在を認識していないであろう武器。地球における武器で訓練すれば誰にでも扱える代物。そしてその扱いやすさと共にその武器の殺傷性の高さが目に入る。扱いやすいが故に誰でも使えそして殺傷能力の高さゆえに、アルトの転移した国では認められた者しか所有する事が出来ない物だ。
それは【銃】である。
そして無論、アルトが作製にと構成を考えているのはただの銃ではない。
言わば【魔法銃】といった代物だった。ただ、作製に至り、アルトが思案しているこの銃には魔法力との調和に長けたものでなくてはならないのだ。
調和性のある素材。なかなか見つからず一先ず一つ目と二つ目の作製で我慢し、旅にでも出て作成に使えそうな素材を求めにでも、と残念そうに考えていたその矢先だった。
今、アルトの目の前には絶好の素材が現れた。
この魔物の装甲を分解した素材である【プリズムナイト】があれば魔法銃の完成の目途が付くのだった。それにこの素材があれば結界強化のアーティファクトと刀もワンランク上の物が作り出せる。
なんとか潰して手に入れたいとアルトは考える。
そんなアルトの考えに反応したのかプリズドオーガが咆哮と共に動き出した。
「あらら、ヤル気になったか。…まっ、いいか。やる事は一緒だからな!」
「グラァアアアアアアァ!!」
この世界に戻って初めて対峙する強敵を相手にアルトは笑みと共に剣を抜いた。
こうして、アルトとプリズドオーガとの戦いが始まるのだった。
「グラアアアアアァ!」
プリズドオーガは咆哮するとアルト目掛けて歩き始め、目の前のアルトにその巨大な右腕を振りかぶるとその鈍重な足運びには裏腹に早い一撃で殴り付けた。
「早いな!」
アルトはなんとか後ろに飛ぶ事で躱した。飛んできた衝撃も利用したのだ。
プリズドオーガは激昂すると左腕を振りかぶると続けて殴り付けてきた。
「チッ!…巨体の割に良く動くやつだな、相変わらずっ!…」
何度も叩き込んで来るプリズドオーガの強烈な拳を紙一重で躱しているアルトだがその表情は芳しくなかった。攻撃するタイミングがなかなかなく手招いていたのだ。
それでも何と躱し、攻撃のチャンスを狙おうとしていた時だった。
ミュリアが意識を取り戻したのは。
=^_^=―
アルトは躱し攻撃の機会を窺うと同時に気を失っているミュリアから遠ざかる様に戦っていた。
見つめる先のアルトには余裕が無い様に伏せながらミュリアは感じていた。
今までそのアルトの圧倒的と言える力と能力で今までの相手(帝国兵や魔物)を楽々と捻じ伏せていたアルト。そのアルトが苦戦を強いられている事に目を疑うミュリア。
あのプリズドオーガはアルトの3倍程の巨体をしており、その巨体に似合わず速く強烈な攻撃を繰り出しアルトを追い詰めていた。
アルトが何とか躱し続けていられるのは、”気配感知”を最大に発動させて相手の行動を先読みしているからと、プリズドオーガは攻撃速度は速いが、その体躯の愚鈍さ故であった。
プリズドオーガに戦うアルトに、ミュリアはふと疑問に思っていた。それは、「どうして”魔晶石”を使わないのか?」と言う事だった。
ミュリアがその疑問を思い浮かんだと同時に、突如アルトから“念話”が届いた。
いきなり頭に直接響く様に聞こえて来たのでミュリアは驚いた。
「えっ!?なに!?」
「(驚かせて悪いな、ミリー。これは”念話”という能力でな。直接、特に相手に聞かれない方法で使う能力だ。ミリーにも予め渡しておいたクリスタルがあるだろ?それは俺が“念話”の能力を“錬成・能力付加”で付加させたものだ。試しに使ってみろ)」
ミュリアは予め幾つかの魔石をアルトから受け取っていた。ミュリアはアルトに言われた透明なクリスタルの魔法石を袋から取り出した。そして目を閉じて“念話石”に魔力を籠める。アルトに話し掛ける様に。
============================
『魔晶石』*作成者:シン・アルゴノート
念話石:対象者と対象者の魂を繋ぎ、頭に浮かべた事を言葉として脳に伝える事が出来る。遠くの者に使用する場合、多くの魔力が必要となり、その分魔力を消費する。
============================
「(…アルト?聞こえる?)」
「(あぁ、聞こえてる。どうやら問題ないようだ)」
アルトは戦いつつミュリアに“念話”するという器用な真似をしていた。
ミュリアは更に“念話”を送った。
「(あれは一体何なの?)」
「(あれがどうやら此処のボスでプリズドオーガと言う魔物だ。実は――)」
アルトはミュリアにここまでの経緯を伝えた。
それを聞いたミュリアは呆れたような眼差しをアルトに向けた。
「(困った人ですね、アルトは…)」
「(しょうがないだろ? 近づいただけで発生しちまったんだから? 取り敢えずミリーはそのままで居ろ、もしくはゆっくりと気配を殺す様に遠くの壁に居ろ)」
それを聞いたミュリアは後者を選んだ。ゆっくりと体を起こすと相手に悟られない程度の気配を殺すと安全そうな場所まで下がった。
そして戦いを見つめる…
「(ねえ、アルト。どうして魔晶石を使わないの?)」
アルトはプリズドオーガの攻撃の反動を利用し一旦距離を取ると剣を構える。それと同じくミュリアの疑問を伝えた。
「(ん? ああ、それは無意味だからだ)」
「(無意味なの?どういう事なの?)」
「(そうだ。アイツの体は物理や魔法に対して強い耐性があるんだ。しかも魔法に関しては弾き返す事も出来るんだよ)」
「(ど、どうするの!?アルト、アイツに勝てるんだよね?大丈夫なんだよねぇ!)」
「(…正直、賭けな所だな。これから取り敢えず反撃してみるが、それが無理なら逃げるしかないかな。…一先ずの時間稼ぎはできたし…)」
“念話”を終えたアルトはとある技能を発動した。
それはプリズドオーガとの戦闘開始と共に“王権律”を展開し、“限界突破”と言う派生技能を引き出していた。
“限界突破”…それは己の能力を3倍以上の出力を引き出す事が出来る『奥の手』と呼ばれる技能である。ただ、発動まで時間がかかるし、使用後に物凄い疲労感が使用者に降り掛かるのである。
アルトの体から魔力が溢れ出始めていた。それはまるで体から蒸気が噴き出しているように見える。実際ミュリアにはそう見えていた。
アルトは準備が整ったと一足踏み込む。その瞬間アルトは一瞬でプリズドオーガの左側面に接近すると、プリズドオーガの左腕目掛けて剣を振り下ろした。
振り下ろされた剣は左腕を両断する事は出来なかったが深いダメージを負わせる事が出来た。
プリズドオーガは驚愕交じりの咆哮を上げると、右腕の拳でアルトを潰す勢いで振り下ろした。
振り下ろされた衝撃は凄まじかった。だがその腕の拳はアルトには届いていなかった。
プリズドオーガが右腕を振り上げた瞬間に、アルトは既に動いており、プリズドオーガの後ろに移動していたのだ。そしてアルトはその背中を斬りつけた。
プリズドオーガは絶叫を上げると怒りの眼をアルトに向けようとした。
だが既にアルトは後ろにはおらず、プリズドオーガの右横に移動していた。そして斬り付ける。
死角に移動しては斬り付けまた移動する。そんな繰り返しをアルトは行った。
だが未だ決定的な一撃を与える事が出来ていなかった。
“限界突破”により早さはプリズドオーガを軽く凌駕していたが、強力な耐性持ちの為、有効打になりえていなかった。
(こうなったら仕方ない。“限界突破”も、もう長くないし、持てる力を、全力の一撃に籠めるしかない…それには)
そう判断したアルトはミュリアに“念話”を飛ばした。
「(ミリー!)」
「(ぅにゃ!?なに?)」
「(これから最後の一撃を入れる!その一瞬の隙を作りたい。だから、今、ミリーの使える魔法を出来る限りプリズドオーガ目掛けて撃ってくれ!)」
「(えっ!?でもアイツに魔法は…)」
「(いいから!何でもいい、俺を信じて撃て!!)」
「(! わかったわ、魔力を籠めるし20秒待って!)」
(「わかった。頼む)」
そう“念話”を解くとアルトはミュリアを信じ20秒稼いだ。その間にも死角に入りブリズドオーガに剣尖を浴びせ裂傷を増やしていく。
硬度が高いプリズドオーがの装甲に斬り付けるだけでも、強化はしていても元は普通の剣である故に剣自体にダメージが蓄積されていった。
「アルトぉ!準備できたよぉ!いっくよぉー!!」
「ああ!ブチかませぇ!!」
ミュリアは魔法の有効射程圏内ぎりぎりの所で、今回初めてアルトに見せるとっておきを始めた。体に赤い魔力紋が浮かび上がった。そして解放した魔力を今あるミュリアが習得している中で最大の威力を持つ4属性魔法を同時に使用した。
アルトはそれを目にして4属性の、しかもその魔法を同時に展開したミュリアに内心驚嘆な思いだった。
いつの間にそんな器用な真似が出来るようになっていたんだ?と。
そしてミュリアの火属性の“
“
本来のブリズドオーガでは魔力は効かない筈だがその体にはアルトによって付けられた大小の傷があった。
その傷自体は魔力を弾く事は出来ずダメージが入っていた。と言っても殆どの攻撃が弾かれていたのだが。
だが動きが鈍った状態に、それを待っていたと言わんばかりにアルトはプリズドオーガの前で跳躍すると、今ある魔力を籠めた剣を両手で握り全力の一刀をプリズドオーガ目掛けて繰り出した。
両断とまではいかなかったが顔から腹部のあたりまで縦に裂く事が出来た。だがその代償に、今までのダメージの蓄積により剣に亀裂が走り砕け散ったのだった。
「よしっ、これで何とか、なっただろ…」
アルトは“限界突破”の効果時間が終わり”限界突破”の副作用により物凄い疲労感が襲っていた。おそらく数日は筋肉痛に苛まれることになるだろうか。
だが成果はあったので良しとした。
アルトはふらつきながらも今回の隙を作ってくれた功労者であり、4属性同時展開と言う高等技術を披露したミュリアの元に行こうと重い体を引きずる様に歩いて行こうとする。
だが、ミュリアから鬼気迫る叫びが聞こえた。
「アルト、後ろ――!!」
アルトはミュリアの必死の叫びと、倒したと思っていたプリズドオーガからの殺気に反応し、鞭打つ様にプリズドオーガに己が体を向けた。
なんと、プリズドオーガは顔から縦に割られていたにもかかわらずいまだに生きていたのである。
アルトはなんとか対応しようとしたが“限界突破”の副作用の影響で動きが鈍っていた為、その撃ちだされた右腕に対して、何とか”金剛“で強化した両腕をクロスするように防御するも衝撃を殺す事も出来ず、そのまま壁に埋まる様に打ち付けられた。
「がっ―」
その衝撃から意識が飛びかけた。
近づいてくるプリズドオーガに対して、薄れいく意識の中でふとアルトは思い出していた。
プリズドオーガの弱点と言える部分を、その頭にある角である事を。
本当にアルトはうっかりさんであった。
(やっちまったなぁ)を思いながらアルトは副作用の疲労と先の一撃による衝撃によって意識を失い気絶するのだった。
気絶したが故に、アルトは知ることは現段階でなかった。
アルトの絶体絶命の危機に、ミュリアの内に秘められ力が解き放たれる瞬間を。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
“限界突破”使用時のアルトのステータス
体力:550
魔力:10000→30000(限界突破発動時)
筋力:350→600(武闘発動時)→1800(限界突破発動時)
俊敏:350→600(縮地発動時) →1800(限界突破発動時)
耐性:350→600(金剛発動時) →1800(限界突破発動時)
魔防:500→1500(限界突破発動時)
耐性解放時のプリズドオーガのステータス
体力:1600→3600
魔力:1000
筋力:1300
俊敏:120
耐性:1300→2000
魔防:1000→3000
~~~~~~~~~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます