2-3.Ⅰ:翼…洞窟探索①
翌日、アルトとミュリアは昨日見つけた魔素に溢れた洞窟へと足を運んだ。
因みにこの場所について昨日一緒に夕食を共にしたカンスとシーラに尋ねたが知らないとの事だった。
アルトは制服に腰に剣を携え、昨日に作製した魔晶石や簡易版のアーティファクトを入れたリュックを背負ったスタイルをしている。
ミュリアはその手に”火”の魔法陣を刻まれているルビーロッドに持っている。
洞窟という事もあり中は土の壁で構成されている。
ただその土壁のあちこちに光を帯びた岩が生えているのが見える。
その為、入り口からしばらくは明かりもあり問題なく進むことが出来る。
そして、しばらく警戒しながら進むと、下に進めそうな穴が見えた。
この階はどうやら魔物の類は存在していない階層だったようだ。
「…ここから下に行けそうだな」
「うん。魔物いなかったね」
(むぅ~。アルトに私の編み出した”
昨夜に編み出した”
アルトは下に行けそうな穴を御視すると、背負っていたリュックを下すと、そのリュックから一つの”物”を取り出した。
ミュリアはアルトが取り出した”物”を不思議そうに目を向ける。
「アルト、それは何?昨日作っていたやつだよね、それ」
「ん?ああ、これは眼鏡って言ってな。こうして掛ける事で視力を助けるものなんだ」
「視力を!?…でもアルト視力悪くないよね?」
取り出した眼鏡をアルトは掛ける。
アルトの視力は2.0はある。当然眼鏡をかける必要はない。普通の眼鏡を掛ける必要はない。つまりこの眼鏡はただのオシャレ目的でもなく、普通ではない眼鏡である。まあ”アーティファクト”な時点で普通とは言えないのである。
「ああ、俺は目に問題は今のところない。この眼鏡にはな、洞窟内や迷宮といった探索用に作ったものなんだ」
アルトはミュリアに説明していく。
この眼鏡型アーティファクト”ツール・K”には洞窟と言った迷宮内を解析し内部構造を把握する事を目的に作られている。そして解析に伴い罠等の存在も教えてくれる優れものである。充電式に作り出されており、作成後十分に”纏雷”の籠った充電器式アーティファクトで充電したので問題はない。最大で24時間は起動できる優れものである。
アルトがこのアーティファクトを作成したのは、洞窟探索等では、”索敵系”の
アルトはフレームのスイッチ部分を押すと眼鏡の鏡部分に今現在の、この階層内部を解析した内容が表示されていた。因みに鏡部分の内容は使用者側にしか表示されないのでミュリアからは見えていない。
更にスイッチを押して解析規模を拡大する。
すると鏡部分にこの洞窟がどれ程の深さがあるのかが表示される。
解析結果を確認して不可解な部分があるのが分かった。
「うぅん?」
「どうしたの、アルト?」
「いや、な。この洞窟内の深さとかが分かったんだけどな。この”ツール・K”の解析結果によれば、この階層を含めて30階層規模の洞窟みたいなんだけどな、どうにもその下にも、もう一階層程のスペースがあるって解析結果が出たんだよ。けどなぁ、何度最下層まで構造を見渡しても確認できないんだよ?そこか腑に落ちなくてな」
「?」
よくわからない風のミュリアに、アルトは掛けていた”ツール・K”を渡すと掛けさせる。説明するより実際体感する方が理解しやすいだろうと思ったからである。
渡された”ツール・K”を興味津々と言った表情で着けてみる。
「わあ!凄い、これって今いる所?えっと、ここを押すの?…この下にはこんな感じなんだ……ん?ここが最後?…うぅん、ほんとだ。一番下?まで映ってるみたい、だけど…何かあるみたい、なの」
ミュリアは子供のようにはしゃいだ様子で確認する。そしてアルト同様に不可思議な階があるのを確認した。
アルトはミュリアから”ツール・K”を取り上げると再び掛けなおす。この際玩具を取られたように「あっ!」と不貞腐れた表情で声を漏らすミュリアであった。そんなミュリアに苦笑するアルトだった。
+
不可解な階があるのが分かったが現状では何も判らない事に変わりないと結論に至った後、とにかく下まで潜れば何かわかるだろうとアルトとミュリアは下の階まで下りる事にした。
そして降りた先に待っていたのは、薄暗い暗闇の空間であった。
「うぅん、なんにも見えないな……ミリーはどうだ?」
「微かにしか見えないよ。どうするのアルト?」
身体機能、特に五感に優れている獣人族であるミュリアでも微かにしか視認出来ない程の暗さであった。
構造内は”ツール・K”のお陰で把握できるが暗さまでは把握しきれない。
現状罠の可能性はないようだが魔物の類に奇襲されるのは困ると、アルトは制服のポケットから一つの魔晶石を取り出した。
10㎝ほどの大きさで色はクリアだが内部に光の粉の様なものがその都度輝きを秘めていた。その輝きに「綺麗…」と目を輝かせるミュリア。ミュリアもやっぱりこう言う光物が好きな女の子なんだな、と思いつつ、アルトは魔晶石に魔力を籠める。するとその手にしていた魔晶石、月の光を浴び付加させてある魔石”月光石”を解き放つ。
そしてアルトは“光れ”と唱えると周囲に光の球体がいくつも出現し洞窟内に散布させた。すると暗闇だった空間が一瞬に青白い空間となった。
急な空間の明るさに思わず「うにゃ!?」と眩しく一瞬目を閉じるミュリア。
この”月光石”には月の光、つまり光の力が宿っているのだ。
本来のこの”月光石”であれば空間内を覆う程の光は燈せないのである。
しかし、アルトの固有能力である”
この”月光石”もアルトの”
「よし、これで !? ミリー、来るぞ!」
「ぇっ!?う」
アルトが注意を促すと同時に3匹のグライアイが『ギシャー』と叫びながら襲ってきた。
グライアイとは一つ目の鋭い牙を持つ吸血蝙蝠なのである。
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グライアイ:魔物
危険度:緑
希少性:E
体力:80
魔力:0
筋力:80
俊敏:120
耐性:60
魔防:10
保有スキル:身体強化【牙】:飛空:闇眼:吸血:暗闇同化
=======================
グライアイは、本来は大人しい性質だが光が大の苦手という事もありその原因である侵入者、つまりアルト達を敵と認識し襲い掛かったのである。因みに暗闇の中では同化状態のため感知するのは難しい魔物でもある。
3匹のグライアイはその鋭い牙をむき出しにし、原因であるアルトに噛みつこうと襲撃する。
アルトはグライアイ達の攻撃を躱しつつ、一つの魔晶石を瞬時に取り出し握る。そして取り出した魔晶石に魔力を注ぎ発動させる。
その手に持っていた魔晶石を1体のグライアイAに向かって投げつけた。
「これでもくらえ、一目玉!」
『ギギっ――!!?』
グライアイにアルトが投げつけた魔晶石がぶつかった瞬間、その魔晶石はパリンとガラスが割れる様に砕けた。その代わりに雷が迸る。
その雷をもろに浴びたグライアイは奇声を上げつつ焦げる様に地面へと落下した。
“雷”それは、この世界では上位となっている属性なのである。
この世界の基本属性は“火”、“水”、“風”、“地”の4属性である。それら以外は高位の属性とされておりアルトが使った“雷“は珍しいとされている属性なのである。
アルト本人の適性属性は”光”なのだが、その派生属性として”雷”も使う事ができるのだ。
唯、今のアルトは”
グライアイは光を嫌う為、光に近い雷を受けた事で特効の効果を得たのだった。
他の2匹は仲間がやられたことに怒りの奇声を上げるとアルト目掛けて再度襲撃しようとした。だが、「私をっ!無視しないでくださぁい!」とミュリアが叫びつつルビーロッドをグライアイに向ける。そして魔法名を唱えた。
ミュリアは“
グライアイは絶叫の様な奇声を上げながらその身を炎で焼かれることになった。
そして残りの一匹となったグライアイは旋回すると今度はミュリアを標的と定めると、襲撃しようとした。
だがそれは叶わなかった。
絶妙なタイミングでアルトは飛び上がるとそのまま風の属性が付加されている剣による斬撃を繰り出し、その剣を受けたグライアイは首を落とされ倒されるのだった。
アルトは地面に着いた。
「ふう、なかなか良い感じの連携になったな」
「うん、でも…」
ミュリアはじとーとした視線をアルトに向けていた。そして問うた。
「ねぇ、アルト…アルトは知らなかったの?こういう所にああ言う魔物がいるって?」
「いや、知ってたぞ。ただ―」
「…ただ?」
「―忘れてただけだ!」
「威張って言う事じゃないよ!」
「……すまん」
アルトはうっかりスキル持ちなのである。こういった手合いで過去にも何度か仲間に忠告されていたのだった。だがなかなか治らないのである。うっかり故に…
ミュリアはアルトに呆れた様に怒ると、アルトも今回は自分のミスなので素直に反省した。
とほほ、である。
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☆おまけデータ☆
【魔晶石一覧】
○発火石…”火”の属性を魔石に付加させて作り出された魔晶石。付加させた魔石の純度によって威力が異なる。純度が良いほど炎による爆裂効果も上がる。一度使うとなくなる。
○月光石…月の”光”を魔石に浴びせる事で、魔石内部に光を充填させる事が出来る魔晶石である。アルトが使用する場合空間内すべてが光りに覆われる。純度の高い魔石を用いて作成されているので何度でも使える。
○雷晶石…上位属性である”雷”の籠められた魔晶石。使用時には対象に命中時に魔晶石自体が砕ける。そして砕けた瞬間内部に充填去れていた”雷”が解放される。一度使うとなくなる。
【アルト製アーティファクト】
○ツール・K
眼鏡型のアーティファクト。主に洞窟と言った構造や罠の存在の索敵と解析の為に作製されたものである。動力は魔力なく電力を用いている。最大稼働24時間。
元ネタは、体は子供、頭脳は大人な、永遠の小学生(時々高校生に戻る)探偵の少年の掛けている眼鏡から。
○充電器
その名の通り。
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