2-2.Ⅰ:翼…素材集めの狩り「VSゴブリン」

素材集めの為にアルトとミュリアは魔物が出没しやすい場所を探していた。

アルトは”気配感知”を用い、ミュリアは種族特性の超聴力を用いながら魔物を探していた。

捜し始めて30分程経過した後、”新月の森”から離れた場所に5つの魔物の反応に行き着いた。

感知した魔物はどうやら同種の魔物のようだった。

アルトは”気配感知”から程度の低い魔物であると分かった。

少なくとも今のアルトでも楽勝と言えるレベルだった。


アルトとミュリアは感知した5つの魔物のいる場所に、相手に気付かれない様にと近付いていく。

そして2人の視界にターゲットである魔物の姿が映る。


「……ゴブリンか。大した魔物ではないからもしかしてとは思ったけど、雑魚のレベルだな。素材としてもあまり期待できないな」

「…そうなんだ」

「けど、まあ……あれだしな」


相手がゴブリンだとアルトは残念と思う。

ゴブリンは数多く存在している魔物の中でも弱い分類に入る。当然素材としても価値は高くないのである。

ゴブリンは低級の魔物で知能も低い為、冒険者を目指すものが初めに討伐依頼されるような魔物である。

醜い顔つきに小柄でぽっこり腹のでた緑の皮膚をしている。その手には棍棒のようなものを握っておりそれを武器に襲い掛かってくるのである。

だが、そんな弱き存在であるゴブリンなのだが、厄介なのはゴブリンの持つ生殖能力で、他種族と交配をすることができる能力を持っているのだ。

過去に集団で集落を襲撃し異性を苗床にしてしまうという事が時折報告される。故に発見次第、即排除が基本の対処なのである。

因みにゴブリンは雄しか存在しないので被害を受けるのは女性である。

だからアルトはからかい風にミュリアに忠告する。


「だから、気を付けろよ、ミリー」

「うにゃ!?嫌なこと言わないでよぉ!――、一瞬考えちゃったじゃない…」

「ふふふ…それは悪かった…」

(考えたのかよ…)


ゴブリンの基本ステータスは“王権律”で得た、相手の技量を確認する事が出来るスキルである“真眼”で確認するとこんな感じだ。

=======================

ゴブリン:魔物

危険度:青

希少性:E

体力:60

魔力:0

筋力:30

俊敏:20

耐性:30

魔防:10

保有スキル:棒術:身体強化:交配

=======================

とまあこんな感じで正直アルトにとっては雑魚である。

魔物の危険度は青→緑→黄→赤→黒の順である。

希少性もEからSSSまである。当然Sに近い方が希少で珍しい存在なのである。


この新月の森には良くても緑くらいのものである。

魔気の濃い洞窟や迷宮といった場所には危険度の高い魔物がいる可能性が高く、逆に良質な魔石や素材が手に入りやすくなる。

ゴブリンを狩る準備をするアルトとミュリア。

ポケットから一つの真紅の魔晶石を取り出し左手に握ると、右手に剣を抜く。

そして横目にミュリアの方に目を向ける。

ミュリアもアルト特性のルビーロッドを握りしめヤル気満々と言った様子だった。

どこかミュリアの目に『…女の敵、必ず倒すっ!』と言う風に燃えていた。


「それじゃ、俺が5匹のうち3体狩るから、ミュリアは残り2体を倒すんだ。まあ油断しなければ問題ない敵だからな」

「うん、あんなのに負けない!」

「よし、じゃあ……いくぜぇ!」


そう言ったアルトとミュリアはゴブリン達の前に出る。

そして急に現れたアルト達に慌てだすゴブリン達。

どうやらアルト達の気配を感知することも出来ていなかったようだ。


そんな慌てているゴブリンに気にする事もなく、アルトがまず左手に握っていた10㎝くらいの真紅の魔晶石に魔力を籠める。

魔力が籠められた事で真紅の魔晶石は赤く光り出す。

アルトはその光輝く魔晶石をゴブリン達の中央に向けて投げる。


ゴブリン達は自分達に向かって投げ込まれる赤く光る不思議な石に『ナンダコレ?』と言う風にマヌケにも目を追っている。

そんなバカなゴブリン達に笑みを浮かべるアルト。


そして、ゴブリン達の面前まで近づいた瞬間魔晶石が一際赤く光る。そして――魔晶石が起爆しドカーーン!!と爆発が起きた。


「わあぁ!凄い…」


その魔晶石による爆発の威力に驚くミュリア。

そんな驚いているミュリアを尻目に、アルトはイマイチだなと感想を抱く。

今回使用した火炎系の効果を付加させた魔晶石の素材に使ったのは純度の低い魔石なのだ。

魔晶石は作成の過程に使った魔石の純度によって効果や威力が異なる。

当然純度の高い魔石を使い作成した魔晶石ならば、この辺り一帯を吹き飛ばす爆炎を起すことも出来るのだ。


爆炎による煙の中、ゴブリンの呻き声が聞こえてくる。

どうやら一体は一番近くだった故に黒焦げになって絶命している。

他のモノも大小の火傷を負っているようだった。


『グギギッ!』


ゴブリン達の目の瞳孔部分の奥に赤い光がともっている。どうやら怒らせたようだ。

魔物の多くは憤怒の感情を抱くと瞳孔部分が赤くなるのが多い。いわゆる攻撃色と言えるものだ。


左右2対となったゴブリンを、アルトとミュリアはそれぞれ2体を相手にする。

アルト・ミュリアVS4体のゴブリンの戦闘が始まった。


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