1-4.Ⅰ:夢・・・襲撃と再会と

日の光で私は目覚めた。

体を起こすと伸びをしながら「ふわぁ」と欠伸をした。

うん、少しいつもより眠りが浅いなあ、そんな風に思いながら布団から出ると夜の一幕を思い返していた。


「アルトさん…?、あれ……!」


アルトさんの事を考えていた私は彼はもう起きてるのかな、アルトさんのいる筈の部屋の方に意識感覚を向けてみた。けど、その方向に人のいる感覚が伝わってこなかった。

もしかして!と私はアルトさんの部屋に急いで向かう。


「アルトさん!?」


どうやら私が予想した通りだった。

部屋には誰もおらず、綺麗に畳まれていた布団があるだけだった。

なんだろ?と私は綺麗に畳んである布団の上に1枚の紙が置いてあるのに気付いた。

私はその紙を手にすると、そこに書いてあるアルトさんの手紙の内容を読む。

そこには簡潔に『一宿世話になった、元気でな』と書かれていた。


「そっか…アルトさん、もう行っちゃったんだ……不思議な人だったなぁ…」


手紙を読んで、彼が既に集落を出て行った事実を実感した私は、


「…何でだろ?……寂しい、な…また逢えたらいいな…」


と手紙の胸に抱きしめながら切なげにそう思うのだった。



私は自分の部屋に戻ると寝間着から着替えていく。

着替えながら頭に浮かぶのはアルトさんの事だった。

私は今まで人間にあった事はない。

カンスさんやシーラさんから聞いていた人間と違うなと思う。

確かに森であった2人の人間の男にはカンスさん達が言っていた通りだった。

でも、アルトさんは全然違った。

初めは警戒していた集落の人達が、宴会を通じて彼の為人ひととなりに触れ楽しく笑顔を浮かべながら接し合っていた。

宴会を思い出すと思う。


「…アルトさんの料理、美味しかったなぁ~」


と。

もっとも、その後の出来事は驚愕に値した程の真実を知る事になったのだけど。


アレは宴会が終わり、皆自分の家に戻った後だった。

私は、「もっとアルトさんとお話がしたいな」、と彼の姿を探していると外に出て行くのが見えた。

私は外に行く彼の後を追う。

アルトさんは前を向いていて私に気付いていない。

ちょっと驚かしてみようかな?と、ちょっとお茶目な行動してみようかな?と思ったのだけど、耳を澄ませてみるとどうやら彼は誰かと会話をしているようだと聴き取れたのだった。


そこにはアルト以外いなかったが、ミュリアの耳にははっきりともう一人の声を聞き取る事が出来たのだった。

出るタイミングがなかったのでこっそりと物陰から会話を聴いていると驚く様な会話が耳に届いてきた。


(あれ?アルトさん一人のはず?誰と話をしているのだろ?)

(…えっ? そんな…精霊王ってあの!?)

(…アルゴノートって昔話の物語に出てくるあの『英雄』の?私達の御先祖様と戦いこの世界を平和に導いたって言われている?)


私の種族特性として五感が特に優れていた。特に耳がとても良く集中する程、どんな小さな声や音でも聞き取る事ができるのだった。

私は集中し感覚を研ぎ澄ませて聞いていたので、アルトさんの声と不思議な何処からか聞こえてくる声もはっきりと聞こえていたので間違いはなかった。

聞こえてきた単語の中に彼と出会ってから度々聞こえていた内容もあった。

料理をされている時にも“あっちの世界“といっていた事もあり、その会話の内容も信憑性があった。


そしてこっそりと聞いていたのだが、アルトさんに気付かれた。

私は驚きの表情のままアルトさんの前に出ると気になったことをアルトさんに尋ねた。

するとアルトさんは色々と語ってくれた。

自分がかつての【英雄=シン・アルゴノート】である事などを…

別の世界?という所での話もしてくれた。

科学?という私にはよく解らないモノがあったり、アルトさんが興味を持った趣味となったもの、友人となった人の話等、興味深い話がいっぱいだった。

知人の話の際に出てきたユウナさんと言う人の話の時、なぜか私は「むっ!」とどうしてか嫉妬に似た気持ちになっていたのだった。



着替え終えた私は族長宅から出た。

すると外で丁度、シーラさんとカンスさんの2人と発合わせた。

どうやら御二人共アルトさんに会いに来たようだった。

宴会を通じて御二人共、特にカンスさんはアルトさんと仲良くなっていた。

私はそんな二人にもう彼が出て行った事を伝えた。とても残念そうにしていた。


「――!」


そんな時だった。

私の耳がピクっとなった。私の超感覚は時折こうして無意識的に発動する事があるのだ。その感覚聴覚が集落の近くに沢山の人間と思われる足音が近付いて来るのが感じ取れたのだった。

私は慌ててシーラさんとカンスさんにこの事を伝えた。

それと同時に、集落の中央にあるクリスタルオベリスクが淡い光を灯した。

それは悪意の、この集落に害する意思のあるものが近づいている証であった。

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