1-3.Ⅰ:夢・・・新月の森の獣人集落
「…お~い!君に聞きたいことがあるんだが?……おい!いつまでボーと座り込んでいるんだ?お前っ!
「!?」
俺は
獣耳がある事からこの少女は闇夜族の中で『獣人族』と呼ばれる種族の女の子であるのは間違いないだろう。
+
この
闇夜族には6つの
獣人族は闇夜の者では一番身体感覚能力に優れている種族で闇夜族の中では一番数の多いのが特徴だ。
次は、外見は人と変わらないがその背に翼を有している『
翼人族は高い魔力を有する者が多く、魔力が高い者ほどその翼を多く得ると言われている。
あと、神存在である“
あとは自然物との融合種である『
姿は自然物が体に付着しているのが特徴だな。その者の持つ自然物の特性と同化し操る能力を持っている。
個体で言うと、土の体で出来た『ドワーフ』、植物の一部を持つ『エルフ』が有名どころだ。
あと、魔物と忌諱されていた『
彼らの姿は人と変わりはないが、魔物と認定されている『竜』に変態できる特殊能力を持つが故に迫害されてきた。故に他者に冷酷で最も好戦的な種族であると言われており一度暴れると厄介な存在と言えるのが特徴だろうか。
そして残りが、かつて他の闇夜族を支配し世界に戦いを挑み、『英雄アルゴノート』に討滅された『魔王』の種族であった『
その姿は人間と変わらないが頭部に種族の証である角を有している。そして翼人族と同等の高い魔力を有し、稀に固有属性である『闇』の属性を持つ者がいるのが特徴だ。
++
俺も初めは優しく怖がらせない様に座り込んでいる獣人族の少女に話し掛けていた。
しかし先程から話しかけているのだが、なんだか目の前の少女は俺の方じっと見つめるだけだったのだ。
そんな少女にイラッとなった俺は少し強めに睨む様に威圧を掛けながら繰り返すと、少女はビクッ!と猫耳がピンと立ったりした後、こちらを警戒しながらも立ち上がった。
警戒心に関しては仕方ないか。つい先程、人間族に襲われ殺されかけたのだから…いやなんとなく先の男はこの子を殺すつもりはなかった様に思うが。
でもなあ、俺も同じ人間族だから仕方ないとはいえあんなのと一緒にされるのは不愉快だった。
しかしこちらの世界に帰還したばかりで何も情報がない以上、目の前の闇夜の猫耳少女に聞く以外にないからな…“あのバカ”は拗ねてるからな。素直に教えてくれるとは思えないし…
「お前は何故こんな所にいる?というかここは何処だ?何故人間に襲われていたんだ?」
「え、えっと―」
俺の質問に少女はゆっくりではあるが答えてくれた。
…しかしこの娘、なんなのだろうか。本当に獣人族の子か?なんか違和感があるんだよなぁ。
あと、妙な親近感が湧くんだよな。でもこの子とは初めてあったはずだしなぁ。
教えてくれた事は、どうやらここは『夜国』にある【新月の森】という森で、闇夜族の種族の1つである獣人族の隠れ集落の一つがあるようだ。
『夜国』とは、人に似た亜人である闇夜の種族達が暮らす国である。国と言っても王がいるわけでもなく、種族毎に集落を形成して暮らしている。そんな所である。
この少女は近くの集落に暮らしているらしく、薬草等を採りに来た際に先程の人間の男達に鉢合わせてしまった。そして必死に逃げた時に、つまり今、俺とこうして出会ったようだ。
……【新月の森】と言う名の森に聞き覚えがなかったが、先の様子からあの戦争から闇夜族に対する扱いが悪いというのが分かった。
「まったく、俺が少し離れた間に、一体あいつらは何をしていたんだか…」
俺はかつての同朋達に向けてため息を付きつつ小さく呟いた。その呟きに少女の耳がピクと動いた。
もっと詳しい͡事が知りたかったが、この娘もあまりこの周辺の国々事や今の情勢について詳しくないようだった。
正直もっと情報が欲しいがこの少女ではこれ以上情報を得られるのは無駄かと考えに至った俺は“気配感知“の感覚範囲を更に広げて発動した。
すると丁度この先に目の前の少女と同じ反応(恐らく獣人族)が沢山感知できた。恐らくそこが集落と思われる位置を掴んだ。
アルトは傍の少女を気にせず感知した集落の方に歩き始めた。
「え? どこに行くの?…!? 待って!? そっちはダメ!」
少女はいきなり歩き始めたアルトを不思議そうに見詰めると、アルトが自分達の集落の方に向かおうとしているのを察知したのか慌てて俺の目の前に来ると両手を上げて止めようとしてきた。
俺は「この先にはいかせません!」と両手を横にしている少女を無視して歩こうとしたが、ふと、助けたという事情のあるこの少女と一緒の方が、色々面倒事が減るかと思い直した。
そして俺は目の前の少女に一つの提案を問いかけた。
「俺はこっちに久しぶりに戻って着たばかりでな。今の、特にこの辺の情報を多く求めている。この方向にお前の住んでいる集落とやらがあるんだろ?集落っていうんだ、人も他にいるんだろ?」
「それは…うん、長老やカンスさんとかなら他の集落の人とも連絡を取り合ったりしているみたいだから…知っていると思う…けど……」
あー、人間を同族に会わせるのは不安なのだろう…
「心配している事は分かるが、俺は聞きたい情報を得たらここを離れる予定だ…そうだな、不安なら君が案内してくれないか?そうすれば俺を監視する事も出来るから…」
迷っている少女に用事が済めば直ぐに立ち去る事や特に何かするつもりもない事を伝えると少女も俺を見逃すよりも傍で共にいる方が得策だという思いに至ったようだ。
それに、まだ他にさっき見たいな連中がいないとは限らない為だ…
「……わかりました。その、一緒に行きましょ…私が案内するから……」
取り敢えず道案内の約束をした後、俺は目の前の少女に自分の名を、
「助かるよ。…そうだ、俺の名前は…“アルト“だ。君の名は?」
「私は…ミュリアって言うの。その、短い間だけど宜しく…あと、その…さっきは、助けてくれて、ありがと……」
「気にするな。まあよろしくな、ミュリア」
御互いに自己紹介した後2人は集落を目指して歩き始めた。
歩いている最中ミュリアも緊張した様子だがいろいろ話しながら歩いている内に笑顔がチラホラと見え始めた。
(なんでだろうな? ミュリアを見ていると不意に頭に浮かぶんだよなぁ?……アイツの事が)
ミュリアの、その笑顔がアイツを思い出させる様で気になるアルトだった。
・
・
・
20分程歩くと、目の前に樹で組まれた門が見えて来た。どうやら目的の集落に着いたようだ。
近づくにつれ集落の門の前に、ミュリアと同じく頭に獣耳のある2人の闇夜の獣人族の男女がいるのが見えた。
二人共武装している様で男の方は190㎝くらいで、茶色い髪の頭には狼耳があるようだ。右手には片刃の大剣を持っている。
女の方は薄い茶色の長髪をしており頭にはミュリアと同じ猫耳があった。その手には弓を持っているようだった。
その2人は誰かが近づいてくるのが見え、そして近づいてくるのが薬草を摂り行ったきり帰って来なくて心配していたミュリアだと気付くと安堵の表情を浮かべた。
数時間前に薬草を取りに行ったがなかなか帰って来ないので、2人は心配していたのだった。
しかし安堵した表情はミュリアの隣にいたのが人間族の男だと気付くと驚愕の表情に変わり武器を構えようとした。
そしてミュリアに向けて何やら叫ぶように話しかけた。
「ミュリア!ਇਸ ਨੂੰ ਸੁਰੱਖਿਅਤ ਸੀ? ... ਇਹ! ?《無事だったか?…アレは!?》」
「! ? ਇਸੇ ਮਨੁੱਖੀ ਜੀਵ ਇਕੱਠੇ ਹਨ! ?《何故人間が一緒なの! ?》」
闇夜族の言葉か俺には理解できなかった。唯一ミュリアという名前だけ理解できたが。
(はぁ~ここまで能力が落ちてるんだな。昔なら理解できて…そうか、“アレ”を習得してないからか)
と考えていると、ミュリアは「アルトさん、お二人に事情を説明してきます」と、俺をこの場で待っているようにと残すと困惑した様子で臨臨戦勢のままの2人に近寄って行った。
「カンスさん!シーラさん!」
「ਪਰ ミュリア ਸੁਰੱਖਿਅਤ ਸਨ ਚੰਗਾ ਸੀ.《ミュリア無事だったのは良かったが》」
「ਇਸੇ ਆਦਮੀ ਦੇ ਆਦਮੀ ਨਾਲ ਤੁਹਾਨੂੰ ਹਨ?《どうして人間の男と共にいるの?》」
「それは、彼は私が薬草摘みに言った際に2人組の人間から助けてくれたの。それで…」
「ਇਹ ਸੱਚ ਹੈ?《それは本当か?》」
「ਨਾ ਜ ਧੋਖਾ?《騙されてたりしてない?》」
「彼はそんな人じゃないわ。だって見ず知らずの私を助けてくれたんだもん。それに私の感が嘘を言っているとも思えなかったもん」
「ਮੈਨੂੰ ਨਾ ਵਿਸ਼ਵਾਸ ਨਾ ਕਰੋ, ਮਨੁੱਖੀ ਪਰਿਵਾਰ ਮੈਨੂੰ ਮੈਨੂੰ ਸਾਡੇ ਦੀ ਮਦਦ ਕਰਨ ਦੀ ਕੋਸ਼ਿਸ਼ ਕਰ ਰਿਹਾ ਹੈ ਹੈ. 《信じられんな、人間族が俺達を助けようだなんて》」
・・・・・・
どうもあまり芳しくなさそうな感じだなぁと思うと俺は「そう言えば」と思い、闇夜の言語を理解する為に“王権律“を使い“言語理解“を得た。
同時に“言語理解“を得た際に、(ん?そういえば、どうしてミュリアの言葉は理解出来ていたのだろう?)と、ちょっとした疑問を持ったが取り敢えず気にせず3人の方に歩み寄ると、俺が近づいてきたことで警戒した2人に俺も”言語理解“の力を使い話しかけた。
すると人間族がいきなり闇夜族の言葉を喋ったので当然「何故、我等の言葉を人間が!?」と驚いたようだった…
・
・
・
俺は森での出来事を2人に説明した。説明を聞いた二人は懐疑的だったがミュリアが援護してくれた事と俺の眼を(特にカンスが)じっと見つめると「嘘を言っている眼じゃない」とどうやら信じてくれたようだ。
獣人族の多くは相手の眼を見て相手の胸の内を量る傾向があるのだ。
「そうか…お前には家族を助けてもらった事になる。…複雑だが助かった。…俺の名はカンスだ」
「ミュリアを助けてくれて感謝するわ。私の名はシーラよ」
「気にするな。助けたのはただの偶然だからな。俺はアルトだ。短い期間だがよろしく」
俺は取り敢えずカンスとシーラにも此処の事や周辺の情勢などを聞いてみたがそれ程詳しいわけではなかった。
「どうするかな」とアルトは考えていると、意外にもカンスが「族長ならくわしい事を知っているかもしれん。どうする?取りなしてもいいが」と提案して来た。ミュリアやシーラはカンスが村に人間族を招き入れる提案をした事に驚いた様だ。
俺はカンスに理由を聞くと「お前の眼は曇っていない良い目をしているからな。それに、“魔除けの結界”が作用していない。この集落に害をもたらす事はないだろう」との事だった。俺は是非もなくその提案を受け入れた。
そしてカンスたちの案内の下集落の大木で出来た頑丈そうな門を抜け中に足を踏み入れた。
この集落は樹を使った家が殆どで住民は150名程が住んでいて、そのほとんどが獣人族の者の様だ。あと若いものは少ないようだった。
年老いた者や幼い子供が殆どで俺と年が近いのはミュリアくらいで若者もカンスやシーラの2人くらいの様だ。
長老のいる家まで歩いていると、やはり集落に人間がいきなり現れた為か住人達は家の窓から警戒した視線がチラホラしていた。
そんな視線に若干鬱陶しいなと思いつつ、一先ず目的である族長の家まで案内してくれるようだ…
少し集落の中を歩いた先に、この集落で1番大きいと思われる木造の家が建っていた。どうやらここが族長宅の様だ。
族長家の前に到着すると族長との面会の許可を貰う為にまずミュリアとシーラが中に入っていった。事情の説明などもするようで時間が掛かるかも、との事だった。そして、カンスが俺と共に残った。
暫くして入って良いとの事でカンスと共に族長家に入った。
族長は老齢もありあまり体を動かしたりするのが難しいとの事で自室まで案内された。ミュリアが取りに行った薬草も族長の為だったようだ。
そして案内された部屋に入るとミュリアとシーラ、そしてゆったりとした椅子に腰かけている白い長髪と髭をしており頭に丸い狸耳をした老いた人物がいた。
この者が族長と呼ばれている者で間違いないだろう。
族長は俺を見るや、先に話を聞いていたのか、まずミュリアを助けた事に対して感謝の言葉を述べた。
「…この度は我らが家族を守って下さり感謝しますぞ。人の子よ…」
「別にミュリアを助けたのは偶然なんだ。気にされ過ぎてもこっちが困る。それより俺はアナタに聞きたいことがいくつかあるんだが」
「ふむ。ワシに分かる事でよければ答えよう。それで何が聞きたいかえ」
「まず。…」
感謝してほしくてしたわけではなかったので率直に聞きたい事を尋ねた。
だが尋ねた内容の返答を聞いた俺は恐らく今日一番の衝撃を受けた…
アルトは「はぁ?」とポカンとした表情を浮かべた。
それくらいの衝撃的だった。それは、
“精霊王“に
自身のステータスが低くなっていた事や余計な特殊能力を得ていた事や、
いきなり人間の男に襲撃されたり、成り行きでミュリアを助けたりした事よりもだった。
――なんと、俺が世界を超えてから帰還の間、1000年の時が過ぎていたのだった……
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