1-2.Ⅰ:夢・・・帰還とステータス

「どうやら…うん、帰ってきたみたいだな……2年ぶりに、故郷の【アストラル】に!」


俺は今までいた世界地球では感じ得なかった魔力をその身に感じ取った。

今まで感じる事のなかった魔力を感じ摂る事で、故郷に帰ってきた実感を得た。


実感を得ると周囲を見回してみた。周囲に見えるのは緑の木々ばかりで光があまり入って来ないくらいの森であった。

そして周囲の様子をある程度見回すとアルトは「全くあのバカ“精霊王“の奴は、いつもいつもこちらの都合に関係なく今回も勝手をしやがって」と無茶ぶりをしてくれた“精霊王“に憤っていた。

しばし“精霊王”に愚痴った後、


「ここはどこだ?…う~ん。どういう事だ?俺が知らない場所があるなんて…」


と呟いた。

俺は“バカ精霊王“の奴から、ある事を成せと言われた俺はそれを受ける代わりに、とある条件を提示した。

その条件とは、あの“バカ”の言う事を成した後、「ここではない、俺の知らない場所に俺を送れ」と言う条件の下契約を結んだ。

そして俺は成すべき事を成した後、契約に従い俺の知らない場所に行くことになった。

それはいい。正直この地にいるのは嫌だった。居ても辛い想いを思い出すだけだったから。

だが…まさか異世界に送られるとは夢にも思っていなかった。しかも記憶を失っている状態でとは想定外の連続だった。

あと、容姿も変わった。昔は金の髪にクリアブルーの瞳をしていたが、現在は黒髪に黒い瞳に変わっていた。


まあ、“精霊王”との契約に関して、未知の異世界に送られたのは当然と言えば当然と言えた。

なんせ俺はアイツと共に『アストラル』中を冒険したのだから。俺に知らない場所などないと言えたから……

なのだが、帰還した森に見覚え、いや、微かに記憶の片隅に感じるか?と思う森にいるのは不思議に思うアルトだった。


「まっ、いいか。気にしても意味はないか。…とりあえず今の俺の状態を確認しておいた方がいいか……なんか体に妙な違和感があるんだよなぁ」


俺は気持ちを切り替えると今の自分の状態を確認する為に、その者の力量を示すものであるステータスを確認する呪文を紡いだ…


「”我が力量を示せステータス・オープン“」


唱えると目の前に四方形の光が出現した。

そこには俺のステータスが表示されている。それを見て俺は愕然となった。

――――――――――――――――――――――――――――

シン・アルト(アルゴノート)

:種族「人間族」:クラス「英雄」:属性「光」:性別「男」:年齢「17」

体力:300

魔力:1000

筋力:100

俊敏:100

耐性:200

魔防:200

『固有能力』

光乃利顕ひかりのりけん:『光』の属性を得て、『光魔法』を自由に操る事が出来る能力。また光属性の魔法のランクを1つ上げて使用行使できる。

王権律おうごんりつ:所有者の望んだ技能を引き寄せる能力。引き寄せる事が出来る技能は初期のものである。

『特殊能力』

魔法適正:光属性

魔性枯渇:保有している魔力を消費するとそのままとなり魔力を回復できない。また、この能力がある限り魔法行使が出来ない。例外)固有能力『王権律』は展開できる。

『技能』

:剣技:料理:錬成

――――――――――――――――――――――――――――

……な、なんだ、このステータスは!? 以前よりも能力が落ちているのか!?…

というか物心がついた際に冒険者を志した子供の頃以下じゃないか!?

確かに以前より体が妙に重い感じがしていたけど…いや、そんな事些細な事だ。ステータスが下がったのならまた上げればいいだけの話だからな。だが、俺には看破できないことが特殊能力欄にあった。それは…

『固有能力』の“光乃利顕“、“王権律“があったのはいいが、特殊能力に“魔性枯渇“と言う、所謂バッドステータスに当たるものがあった。これはなんだ?こんなもの以前は所持していなかったはずだ。

これでは魔法行使が出来ない。つまり光魔法も使用できない。それでは“光乃利顕“の恩恵がまったく意味をなさないじゃないかぁ!

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※~ステータス補足説明~

体力=その者のHPで、0になると死亡もしくは仮死状態となる。

魔力=その者のMPで、0になると死にはしないが魔力酔いの状態となり、身体機能が著しく低下する。精神回復剤や睡眠などの手段で基本的に回復ができる。

筋力=その者の力を示す。この値が高い程、攻撃力が上昇する。

俊敏=その者の素早さを示す。この値が高い程、機動性が上昇する。

耐性=その者の物理的な防御力や状態以上に対するものを示す。

魔防=その者の魔法力に対する抵抗力を示す。

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俺が今の低すぎるステータスと技能力に絶望した暗い表情を浮かべていると、周囲から“精霊王“の声が聴こえてきた……


“はろ~♪ゲンキ♪……ン~、アレ?ドウシタノ、ステキに、オチコンデ?“


どうも“精霊王“の言葉が少し聞き取り難いが、余りの事態に茫然としている俺の様子から“精霊王“が不思議そうにからかうかのように聞いてきた。

俺はどんよりとした雰囲気のまま取り敢えず今のステータスを八つ当たり気味に“精霊王“に伝えた。


「これ、どういう事だよ。俺の能力値、物凄く低いじゃねェか。お前、なんかしたのか?それに…なんだよ、この“魔性枯渇“って能力は!?」

“あ~、ソレはシカタナイよ~、ナガイキカンまりょくノナイ世界二、いタノダしね~……アト、 “魔性枯渇“?コレニ関してはわたしもシラナイよぉ~まあぁ可能性をアゲルト……“


なんだ?やけに間を持たせるな。


“やっぱりいわないわ~だって、アルゴノート。アナタ怒りますものぉ~”

「(俺に怒られる?)…いいから言え」

“オコラナイ?絶対?”

「ああ。怒らないから、いいから言え。今は少しでも情報が多い方がいいんだからな」

“そう。なら言うわ。………”

「っ、ふっざけてんのかぁ、テメエェェ!!」

“やっぱり、おこったじゃない!?”


この“バカ”が語った理由を聞いて当然ブチ切れた。なんでアイツが “魔性枯渇“なんて呪いを俺にかけるんだ。冗談でも言って良いことと悪い事があるだろうが。


“むーむー!アルゴノートの嘘つきィ…”


“バカ”のいじけた様な恨めしそうな呟きが聞こえていた。正直ウザい。ウザいが俺にも少なからず悪かったので、嫌だが仕方なく「言い過ぎた」と詫びを入れた。

だが、拗ねたのか“精霊王”の声が聞こえなくなった。


「おーい。…まっいいか。さて」


気にせず俺は取り敢えず今できる事をしておくかと固有能力である“王権律”を発動した。

『固有能力:王権律』…俺が“精霊王”から得た特別な能力の1つだ。その能力は使用者の望んだ技能を引き寄せ習得出来るというチート級の能力だ。

なにせ適性の無い技能や特殊能力(例えば闇夜族の持つ特殊能力)は習得する事は出来ないようだが、それ以外ならどんな技能でも習得できるというチート能力なのだ。

だが、この能力で得られる技能は全て初歩の技能であるという事。あと“王権律”の発動の際には魔力を多く消費する事が難点と言えるかな。

俺はステータスの魔力数値を確認しつつ取り敢えず周囲の気配等を感知する事が出来る技能“気配感知“を習得した。そして、習得し消費した分、魔力も減った。


(…この魔力量での減り具合なら、…あと、7,8回くらいで底につくかも……取り敢えずアレを試すか)


俺は残りの魔力量から“王権律”を行使できる残り回数を計算した後、試しに周囲に満ちる魔力をその身に取り込む魔吸オドと呼ばれる、魔力を体内に微弱だが取り込む呼吸法を試した。通常ならこの魔吸オドを行う事で少量だが魔力を回復する事が出来る。

しかし、使ってみても手応えがまるで無かった。


(困ったな。本当に魔力回復できないとは、“魔性枯渇”予想以上に厄介だな。何とか消す方法を探さないとな。あと、ここが何処か知らないと始まらんか、見覚えないしな、この森)


俺は現在地の特定の為周囲に人がいないか確認する為、試しに先程得た“気配感知“を発動しようとしたその時だった。

近くから、アルトの後方から人間の足音が一つこちらに向かってきているのに気付いた。


ガサガサ!


「ん!?ミナレナイヤツ!ココデナニヲシテイル!」


見たことのない鎧を纏い、剣を持った男が俺に向かって聞き取り辛い言葉でいきなり敵意を向けて叫んできた。


俺は相手の男の敵意に反応すると同時に目を細めると俺は相手を瞬時に“敵“と判断した。

敵と判断した瞬間、俺は “王権律“を発動させた。

脚力を強化する事で俊敏を上げ、相手の間合いを瞬時に制圧できる技能“縮地“と、今は武器が無いので己の拳のみが武器と言えるこの状況に合わせて、拳を強化する事が出来る技能“武闘“を得た。

俺は“縮地“を得た瞬間、すぐさま“縮地“を発動し一息で相手の懐に入ると、驚きで動けない敵(恐らく相手は俺の”縮地“の動きが見えなかったのだろう)の鎧の無い腹部に向けて“武闘“で強化した拳を全力で叩き込んだ。

俺の今の全力の腹パンを受けた男は「ぐは!?」と吐血すると男は意識を失いその場に倒れた。


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《一般兵》の基本ステータス(あくまで目安)

体力:300

魔力:100

筋力:100

俊敏:80

耐性:150

魔防:50

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