0-4.Ⅱ:現・・・募る想いの告白…そして運命が近づく
私は朝から
そしてやっとの想いで学園に着くと約束する事が出来た。
顔を真っ赤にしながら校舎まで小走りで入ると下駄箱で靴を履きかえる。履き替える際にも緊張してか取り落としかけたくらいだった。
アルトとは別になったクラスに向かう際に「きっと、アルトはどんな約束か想像も出来ていないんだろうな」と思うのだった。
実際優菜の予想は当たっているのだが。
+
シン・アルト…名前の響きもそうだけど、どこか不思議な雰囲気を纏っていた男の子だ。
彼と初めて出会ったのは2年前になる。
あれは思い返すだけでも不思議で衝撃だった。
私はその日学園に入学して2週間程過ぎたある日だった。
本来
でも私は園長先生が此処の学園の長である学園長の親類という事もあり便宜を図ってもらい週末の土日は孤児院に戻る許可を貰えたのだ。
私は孤児だ。幼い頃に私は両親において行かれ1人となった。私の家は貧しいけど両親は私に愛を与えてくれている。そう思っていた。けど現実は残酷だった。
ある日を境に両親が行方を眩ませたのだ。
私を置いてである。当然私は何時か帰って来ると泣き続けていた。
でもふと思ってしまった。帰って来ない、私は1人だ、と。
1人になった私は孤児院に預けられる事になった。
預けられた孤児院が『ふれあいの里』だった。
両親の失踪に絶望していた私は塞ぎ気味になっていた。
そんな私に親身になって、全てに拒絶していた私に根気強く接してくれたのが園長先生だった。
私は少しずつ園長先生に心を開いて行った。
何時しか本当の御母さんみたいと思う様になっていた。
その日も1週間ぶりに園長先生や孤児院の子供達に会うのでウキウキとしていた。
孤児院には私以外は小学生なのだ。子供で言うと私が最年長になる。
「う~んっ。今日も授業、疲れたなあっと。…いけない、いけないこんな風じゃ皆に心配を掛けちゃうわね」
折角学園で学ぶ機会を下さった園長先生や子供達に心配をかけてはだめ!と首を振り気持ちを切り替えると再び孤児院までの道を歩き始めた。
「…?なんだろ?」
院の前まで近づいて来た時だった。私にはまるでそこの空間が歪んで見えていた。
「なに…超常現象?……っ!?」
そう口にした瞬間だった。
歪んでいる空間が眩い光で溢れたのだった。
私はその光が眩しく目を閉じた。
そして光が収まったと感じた私は「なんだったん…」と呟きながら目を開けると、そこには1人の不思議なまるで物語に出てくるような服を着た黒髪の男の人が倒れていた。
++
とまあ、こんな感じに孤児院の前に記憶を失って倒れている彼を私は見つけたのだ…
私は直ぐに園長先生にこの事を伝え、他の子達の協力の下ベッドまで運んだ。
そしてベッドに横にした彼は1時間程経過した後に目覚めた。
彼に、私と園長先生は先程の、倒れていた出来事を伝えた。いきなり現れた!とは園長先生にも伝えていない。私もよく解らかったのだから。
その後、彼の名前などを訊ねた。
彼はどうも記憶がないようだった。唯一覚えていたのが自分の名前だけだった。
私は彼の、アルトの眼を見つめた。
アルトの眼は嘘をついているようには見えなかった。
と言うよりも私は彼の眼を見た時「ドキッ」とした。
深いまるで深海の奥底のような綺麗な黒い瞳だった。けど、その瞳は何だか深い悲しみを宿しているようなと、私は思った。
それからは、アルトはこの院で暮らすようになった。
私も園長先生経由で学園の許可を貰い、暫くは孤児院からの登校と生活を送った。
私は恐らく同年代で不思議な感じのするアルトと接しているうちに、他の小さな子達よりもアルトに興味を持った。
記憶がない為かアルトは色んな事を覚えようとしていた。
この国の事や歴史等を。これは私が教えたわね。
あと、アルトは凄く料理が上手かった。料理上手な園長先生と同じくらいだった。
……これは、私は関与していない。下手だもん、私……。
私はどうしても味付けをすると見た目は良いのに不味い物が出来てしまうのだ。
初めてアルトに手料理を振った時も、アルト倒れちゃったし……
アルトが此処に来て2か月程過ぎた頃に学園に通うのはどうかと言う話になりアルトはその話を了承した。
何処の学園がいい?と聞くと(内心私と一緒だといいな)と思っていたら、「優菜と一緒がいい」と言ってくれて凄く嬉しかった。
私はより一層必ず合格できるようにと勉強を教えた。若干引き気味になっていた気がするけど私はスルーした。まあ、それも心配するまでもなかった。アルトは一度覚えた事をしっかりと学び己のものにしていた。【英語】【数学】【理科】なんかは逆に私が教えられるという事もあった。
そして一月後無事アルトは合格を貰う事が出来た。
その後はアルトのお目付け役として元々登録されていた学園の寮に戻り、アルトも同じ寮だったので一緒に過ごす日々を送った。
そして彼との生活での触れ合いの中で、私はアルトの事が好きになっていたと自覚した。
恋心を自覚してからは、私なりにアプローチ(毎日朝起したり、一緒に食事したり、買い物に付き合ってもらったり、さりげなく恥ずかしいけど成長した胸を押し付けたり)して見た。どれもあまり効果があったのか微妙だった。
…
あれから2年。
私はそんな友人の様で、家族と言える関係を今日変えようと思った。
理由としては一月程前からアルトが見るようになったと言う夢の話を聞いてからだった。
それからのアルトは時折、本人も無自覚に何処かここではないどこか遠くを見ているような…
アルトの様子からそんな風にここ最近、感じていたのだった。
それはまるでアルトが私の前からいつか居なくなるんじゃないか…
そんな風にさえ感じて怖くなった。
だから今日を、私はこの日、アルトと始めて出会ったこの日に告白すると決意した。
+++
今日は正直、放課後の事が気になってソワソワしていた。気にし過ぎて学業にも支障をきたしてしまった。
恥ずかしながら友達にも心配されてしまった。
でもしょうがない。だって今日はアルトに一生一代の告白をするのだから。
でも、正直不安でもある。
アルトに告白して「振られたらどうしようか!」とか、これからどうなるのかを考えると正直不安でもある。
でも今日を置いて他にないと思ったのだった。
…なぜか分からないけど私の心にはずっと不安が付き纏っていたのだったのだ。
…そしてその放課後に私の抱いたその不安が現実となり、又私にあんな運命が待っていたのを知るのにはあまり時間はなかったのだった。
++++
そして運命の放課後となり、ホームルームが少し長引いた為、小走りでアルトが待っているはずの校舎裏に行こうとしていた。
「もうすぐ!」と校舎裏に近づくと私は一旦落ち着こうとした。
その瞬間、校舎裏の方から物凄い光が溢れた。
私は「なにっ!?アルト!」と慌てて校舎裏に駆け寄ると、そこにはアルトともうひとり?光っているためよく見えない何かがそこにいた。
私がアルトの名前を呼ぼうとした瞬間、溢れていた光が弾けたのだった。
その瞬間、私は「アルト…」と小さく声にしたあと、いつの間にか気を失っていたのだった。
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