0-4.Ⅰ:現・・・募る想いの告白…そして運命が近づく

僕はこれまでの道程を思い返しながら、眠たげに欠伸をしつつ優菜と共に学園まで歩いて行く。

この2年で僕は身長も急激に伸び180cmまで伸びた。

日に日に伸びる僕に皆「お前はどれだけ超人なんだよ!」と嫉妬されたりした。

2年では夏の大会に準部員として個人戦に参加し見事全国大会優勝をしてしまった。

最初は「弱いな、もっと強いのはいないのか?」と勝ち進むごとに思っていた。

全国大会では唯一早乙嵐さおとめらんと言う男子が健闘してくれた。ポイントを取るのにも苦労した。

他にも年間成績1位を2年連続で獲ったりした。2年の冬季授業の期末では初の全科目100点を取ったりもした。

『文武両道の超人』なんて綽名を付けられたりもした。

優菜とも2年目も同じクラスになれ、我事の様に喜んでくれた。


僕は隣を歩く優菜に視線を向ける。

優菜とは今年は別のクラスになってしまった。最初はにこやかな笑みだった優菜だったけど、僕と別のクラスと知った時の優菜は物凄くがっかりとし、どんよりとした空気を纏っていた。

慰めるのに物凄く時間が必要だった。

優菜も2年で成長し綺麗な女の子になった。


ふと、僕は思うのだった。

どうして優菜は僕と一緒がいいのだろう?と。

毎朝起してくれたりするのもだけど、他の人に比べてスキンシップが激しい気がするのだ。

胸を押し付ける様に腕を組んで来たり、僕の行く所には一緒に付いて来たりと。

何故ここまで僕に親身になって接してくれるのか。


朝の登校も優菜はいつも僕と一緒なのだ。

黎明学園れいめいがくえんと学園寮は敷地内にあるので20分も掛からない。

僕はあまり寝起きが良い方ではない。特にここ最近は変な夢のせいもあり寝不足気味なのだ。

遅刻ギリギリになる時もあった。

けど、優菜は決して僕を置いて先に行かず一緒に行こうとしてくれるのだ。


そんな優菜を見ていたら、ふと違和感を得た。

何処かいつもと違う?、そう感じたのだ。

いつもなら元気よく話しかけたりするのに、今日は妙に静かだった。


「あっ!?…」


優菜は僕と視線が合うと、顔を伏せ逸らす。今日はそんな繰り返しが多かった。

それに若干顔が赤い様な気がしたのだった。

僕は心配になり「顔赤いけど、熱でもあるの、大丈夫?」と訊ねるも、


「えっ!?だ、大丈夫だよ!ほら元気いっぱいだよ、ハハハ…」


と詰まり気味だが元気な声で返してくれた。熱があるわけではないみたいだ。

そんなやり取りが続き、もうすぐ学園に着く頃だった。強めの風が吹き通っていた後だった。


“もうすぐ、逢える”


と、ここ最近夢に出て来る声が聞こえて来たのだ。

(夢でもないの幻聴が聞こえるなんてな。困ったものだな、ホント)と溜め息を付きながら考えている内に無事遅刻せずに学園に到着できた。

学園に到着した瞬間だった。今まで静かだった優菜が「ちょっと待って」と何か、意を決したかのように僕を真剣な眼で話し掛けて来た。


「ねえ、アルト。今日のそのぉ、放課後って、何か予定とか用事ってある?」


真剣さに何処か揺るぎのある不安を抱えた目をして、頬を赤く染めながら僕に放課後の予定を聞いてくる優菜に、僕は「特にないよ」と伝えた。


「そっかぁ…なら、その、放課後に、校舎裏まで来てくれないかな?そのね…私、アルトに伝えたい事があるの」

「僕に伝えたい事?今じゃダメなの…まあ、分かったよ。放課後に校舎裏に行けばいいんだね?」

「うん。絶対伝えたい事なの!だから、私が行くまで待っていて欲しいの!」


僕が「わかった」と返事する前に、優菜は校舎に駆け込んでいった。

嬉しそうに頬を赤くした笑顔。そんな優菜が印象的だった。


何の用だろうなと、鈍感な考えをしながらアルトも校舎に向かう。

まさか、その放課後にあんな事が起きるとは夢にも思わなかった。



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