0-3.Ⅲ:現・・・初めての学園
楽しい時間。
それはあっと言う間に過ぎていく。
編入した学園での学生生活も2週間が過ぎた。
夏休みと言う長期休暇に入った。
皆嬉しそうな笑顔だった。
僕としては残念だなと言うのが感想だった。
でもまあ、仕方ない。
それが学校のルールなのだから従うのが筋なのだ。
それに悪い事だけではないから。
この黎明学園では基本寮での生活となっている。けど、この長期休暇は実家に戻ることが出来るのだ。
僕と優菜も、この長期休暇は【ふれあいの里】で園長先生や子供達と過ごす事になった。
皆喜んで僕達の帰りを迎えてくれた。
帰ってきたその日は軽いパーティをしてくれた。
無論料理を作ったのは僕と園長先生だ。
優菜も「私もやるわ!」と手伝いの立候補をしたけど、皆から猛反対を受け涙ながらに引き下がった。うん、僕も拒否した。
優菜は、見た目は良いのに変な味の料理を作り出す才能を持っていた。
初めて優菜の料理を見たのは、ここに来て数日経った時だった。
その日は園長先生も子供たちも学校に行っており誰も居ない日だった。
僕は文字や歴史文化について学び得ようとしていた。
勉強をしていて「お腹減ったな~」と空腹を感じた僕は、時計を見て、ちょうど昼の時間だった事もあり、何か作り置きのものでもないかな、と食堂に来た。
その時だった。玄関の扉が開く音が聞こえた。
「誰か帰ってきた?…この声は優菜?」
帰ってきたのは優菜だった。今日は半日授業だったようで早めに帰ってきたようだ。
「ただいまぁ!」と元気な声を出しながら僕のいるリビングルームに入ってきた。
食堂はリビングルームの隣にあるのだ。
「ただいまぁ、アルト?どこにいるのぉ?」
「ここだよぉ、優菜」
「あっ、こっちだったんだ。食堂にいるって事は今からお昼?園長先生はまだ帰られてないの?」
「うん。まだ帰って来られてないよ。ちょうど何かないかなって見に来たところだったんだ」
「そっかぁ……何もないね…そのぉ、良かったら、私が作ろうか?材料はあるみたいだし…」
「いいの?助かるよ」
「うん……よぉし、久々に振るっちゃいましょうか♪」
「ああ…………なんだろ…」
意気込んで料理に挑む優菜に、僕は一抹の不安が沸きあがってきた。
そしての不安は的中した。
出来上がった料理は、見た目は良かった。でも……なんでだろ、身体が震えてくるんだ。笑みを浮かべている優菜を尻目に、僕は震える手を押さえるように箸を持つとゆっくりと手に付けていく。
そして、一口、口に含んだ。
それと同時のタイミングで園長先生が帰ってきたようだった。
そして園長先生は僕たちの様子に気付いた瞬間、というよりテーブルに並んでいる料理を目にした瞬間、大きく「ああああああああぁ!」と叫んだ。
そして僕はその叫びを聞きながら意識を失い倒れるのだった。
「アルトおぉーーー!」
優菜の悲痛そうな叫びが木魂した。
うん。原因は優菜だけど……ぐふっ
その日、僕は悪夢に
申し訳ない涙声で優菜に謝られた。
その日から僕は自分でも作れるようになった方がいいと思うのでした。
+
優菜の毒見事件から二日経った。
その日も僕以外施設にいない日だった。
僕はあの日の誓い通り、御昼前から料理を覚えようと食堂にやって来た。
予め園長先生に伝えていたので食材はそろっている。
前日の夕食の時に園長先生の手伝いを申し出た。
心配そうだったけど、僕の手付きを見て大丈夫と認めてくれた。
そして作り始めた。
作り始めて僕は違和感を感じていた。
まるで、長年料理をしていたという感覚と、園長先生の味付けとなんか違う?と言う感覚だった。
そして楽しいと思いながら作っていた。
今日は皆半日授業で帰ってくる為、13時までに4品作る事が出来た。
そして皆、学校から帰ってきた。
バタバタとした足音が聞こえてくる。
「ただいまぁ~アルト兄ちゃん!…なんかすごく良い匂いがする!」
「ただいまです……本当ですね、これは良いです」
「ふあぁ…うん、良い匂い…お腹が空いてきました…」
「お兄様ですの?これって?」
「……じゅる…///」
「お兄ちゃんただいまぁ、ご飯どう美味しく出来たぁ?」
「…クぅ…はうぅ……」
子供達はリビングルームに入ってくると僕が作った、料理の匂いに目を輝かせていた。
遅れて優菜と園長先生も入ってくる。
「あらまぁ。アルト君の手前は昨日見せて貰ったからある程度は大丈夫と思っていたのだけど、これは予想以上かもしれませんね」
「う、嘘…これを、ア、アルトが…作ったの!?」
僕の料理を見て園長先生は称賛の言葉を、優菜は信じられない!とでも言うような驚愕な表情をしていた。
そして皆で食卓を囲み一緒に食べる。
結果としては皆「凄く美味しい♪」と満足してくれた。
この日から食事は僕と園長先生とで作る事になった。
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