第8話 晴明

「霧砂まだ起きてます?」

返事が無い。

ベッドの端を3回ほど蹴ってみる。

「起きてますね。」

しつこく寝たふりを決め込んでいる。

「天神さんの事だ。」

「ああ、何かあったのか?」

さっき店を出たのだから熟睡していたはずがない。

天神さん絡みなら、聞く気はあるのか。

「で、どうしたんた? 店で話せない事か。」

「さっき天神さんが主神こといの車に乗るのを見たと、華が連絡してくれた。どう思う?」

「葵が連れて行ったならオーナーに相談すべきだろうが、言さんなら私達が首を突っ込む程でもないだろ。お前らしくないな。冷静になれ。」

「あのガキは歳にそぐわず狡猾だ。油断はできない。」

「だったら今から探して追いかけるか? ストーカーだな。」

甘雨からもストーカーと言われているので笑えない。

「あのお人好しな雰囲気、少し危ない気がする。何か吹き込まれないか心配だ。」

「判断するのは后さん自身の問題だ。お前が口を挟む筋合いはないだろ。

少し心配が過ぎるぞ。

実家のは未解決だろ。葵は参考人だったが、放火犯は全く別かもしれない。」

「そうでもない。だから余計に心配なんだ。」

「まさかお前、犯人につながる証拠を隠してたりしないだろうな。

お前の性格だとやりかねん。」

「切り札は取っておくものだ。」

「やはり犯罪者気質だったな。」

素直に更生するような人間ならこんな事はしない。

霧砂は酷く呆れたが、それ以上聞かなかった。

教えるつもりは最初から無いが。

「ともかく、そういう事だ。それとなく天神さんに確認する。

霧砂も今後何かあれば連絡を。」

「また店にもどるのか? 今なら一緒に寝てやるが?」

「園児の頃の話をいつまでもネタにするな。気色悪い。

じゃあ、明日の仕入れも頼みますよ。」

「ああ、じゃあな。」


気心知れた腐れ縁は、心強いが扱いづらい。

幼馴染が同僚というのも良し悪しだ。

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