2月26日 佃 英輔「尊敬」
停水班で一番相方にしたくないのは胃薬だ。今月俺はその嫌な相手と組まされてる。
――胃薬は、知っているのだろうか? 自分が化け物と戦う時、どれだけすさまじい顔してっかってこと。
殺ってる最中に、目の前にデカい鏡立ててやったら、コイツのことだ、余裕で血ィ吐くんじゃないか?
化け物に負けずとも劣らないそのおぞましさに。
どこを見てるのかさっぱりわからない大きく見開いた目、弱々しい青白い顔と真反対に自信たっぷりの笑みの形に歪んだ口許。
嬉しそうに化け物を殺すその顔。
「どうしたの? 佃君」
殺した後はしばらく、その余韻のせいか、目を爛々と光らせて笑っている。
反吐が出るくらい楽しそうだ。
「……何でもありませんよ」
それでも俺は多少コイツを尊敬してる。
こんなに楽しそうに生き物を殺しながら、未だ人に手を掛けていないっていうそのスレスレの狂気に敬意を表して、俺はコイツに敬語を使う。
「イイ手際だと思いましてね」
コイツが万が一狂った時、真っ先に殺られないようにするための自衛かもしれないが。
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