2月27日 井上真人「危険」
今月は田実君といっしょに停水に回っている。
田実君といっしょだと未確認生物と戦うとことか見なくてすむから嬉しいけれども、その分マルチューや特注を多く任されるので良し悪しかもしれない。
今も特注がついた世帯に行ってきたんだ。
停める前に声かけしたんだけど、家の人、こちらを確認した途端、出てくるなり田実君にすごく親しそうに話しかけていたんだよね。
派手なセーター着たおじさんで、田実君に対して頬ずりとかしそうな勢いで、何か親戚のおじさんとかが子どもを猫可愛がるかのような接し方だったから、年の頃からしてもしかして田実君の親戚のおじさんとかなのかなと思って僕見てたんだ。
今は持ち合わせがないのと言いながらも支払うまでは停めるってことにはすんなり同意してくれて、最後まで田実君に対してべったりだったから僕はいいおじさんだなあと思ってたんだけど、
「井上さん! 何で助けてくれないどころかニコニコしてたんですか!」
車に乗った途端、今にも泣き出しそうな顔をした田実君に怒鳴られた。
「知り合いじゃなかったの?」
「知り合いじゃないですッ」
「でも、頬すりすりされたり頭なでなでされてたりしたじゃない? おじさんか何かなんでしょ?」
「は、はい? あの、ちょっと井上さん、さっきの人、な、何だと思ってたんですか……!」
「だから、田実君の親戚だと」
それから田実君、しばらく助手席で死体のようになっていた。
――どうやらあのおじさん、男の人が好きな人だったらしい。田実君はおじさんの好みのド真ん中だったようだ。
帰ってから報告すると、山木さんがあのにこりともしない顔を引きつらせて田実君に頭下げてた。
そして、僕は係長に注意された。
でも、まぁ怪我するようなことでもないから未確認生物相手にするよりはマシじゃないのかなぁ、と思ったのだけど……どうなんだろ。
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