第6話 いざ!東京都庁試験(雑感)
まずは東京都庁だ。
僕の頃は、まだ石原都政であった。
が、試験ではそんなこと全く関係ない。
試験で問われるのは、点数だけだ。要領よく回答し、マークシートを塗りつぶしていく・・・
そして、論文試験ではありていなことを書き、自分なりのスパイスをトッピングし、うまくまとめる。
終わったころには、やりきった感が全身からあふれ出ていた。
これだから試験はやめられないという大学受験期のモチベーションがよみがえったような気がした。
結果を見る前に、原因を見ると、どうも自分は自分の力を過信していたように思う。
というのも、予備校には通って、勉強はしていたもののはたして身についていたかというとそうでもない。経済学やら財政学やら民法やらもやって、なんやかんやで復習もせず、だらだら受講していた気がする。
ワニ本(畑中敦子先生が書かれている受験対策本)は役にたった。特に、資料読み取り(畑中敦子の資料解釈の最前線。そのおかげで、資料解釈問題は公務員試験すべてを通じて全問正解した)。それぐらいだ。
ちゃんと勉強したのは十何時間くらいだ。
それ以外には全く勉強をしていない。
都庁の論文対策の講座を取った。
試験の二週間前くらいだっただろうか。
「この中に、論文対策をしていない人はいないと思いますが・・・」と講師が前置きして、順番に何個くらい論文を用意しているか挙手させていった(政策論文は、事前に政策ごとにある程度準備しておくことが通常だ。たとえば、「観光」という政策について、その理解と自分なりの考えをまとめておくというような)。
「3個以上論文を準備している人ー」
4、5人が手をあげた。だいたい、みんな1、2個程度用意しているようだった。
「ま・さ・か! ま・さ・かとは思いますが! まったく準備していないという人いますかー?」
僕が手をバッとあげた瞬間、教室にいた40人ほどの受講生が一斉に僕のほうをみた。
一瞬時間がとまり、講師は何も言わずに、論文対策の授業を始めた。
「えー、政策論文というのはー・・・」
その程度、その程度なのだ。
何か月も前からずっと勉強し、寝食も忘れて勉強に没頭している人たちからしたら、「こいつ公務員試験なめてるだろ!」と怒りの鉄槌を食らわせられていただろう。その因縁が、あの冷たい視線だったのは間違いない。
ただ、先に言っておくと、僕は、都庁の筆記試験に合格した。
ただ、おそらく最底辺で受かっていたことには違いないと実感している。
民法の重要論点(2問中1問)をまるまる白紙で出したからだ。それでも、ぎりぎり筆記は通った。
つまり、「公務員試験は筆記は通る」のだ。
問題は、「筆記が上位で通らないと、最終的には受からない」ということ。もし、公務員試験をこれから受けようかと考えている人がいたら、筆記試験上位通過を目指して、きちんと勉強することをお勧めする。特に、法学部だからといって、余裕をぶっこいていると、あの冷たい視線を受けることになるし、どうせ最終的には落ちる。受かったとしても、公務員という仕事にやりがいを見出すことができるかという別次元の問題も待ち構えている。
一難去っても、またすぐに一難が来る。
時間は有限である。ならば、それは勉強に没頭する以外にないのだ。
そこに僕自身の不甲斐ない原因があったと今となっては分析している。
「集中力と頭の回転」
これは、僕がその時分に思っていたことだ。
試験なんてものは、勉強しなくても、その場の集中力と頭の回転でなんとかなる「だろう」という、いまとなっては単なる「だろう」運転に他ならない。
「学問に王道なし」
本来であれば、こうあるべきだ。
そして、僕は、地元県庁を受けるために、鈍行列車に揺られながら、いまだにそんな悟りめいたものすらも考えだにしないまま、高をくくって実家に帰省していた。
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